川内原発の安全性「ほぼ最高レベルに近いと思っています」~田中俊一原子力規制委員長定例会見 2014.7.16

記事公開日:2014.7.17取材地: テキスト動画
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 2014年7月16日14時30分より、東京・六本木の原子力規制庁で田中俊一・原子力規制委員会委員長による定例会見が行われた。川内原発1、2号炉の設置変更許可申請に対する審査書案がまとまり、承認したことを報告した。

■全編動画



審査書案がまとまったことについて委員長発言

 午前中の規制委員会で審査書案を承認したことについて、田中俊一委員長は冒頭、次のように発言した。

 「本日皆様も見ておられたと思いますけれども、本日午前中、原子力規制委員会として九州電力川内原子力発電所の審査書案を了承いたしました。明日から30日間、この審査書案に対する技術的意見募集、パブリックコメントを行うことになります。

 昨年の7月に申請があってから、ちょうど1年経つわけですけども、審査チームを中心に審査に取り組んできまして、これまで、出された審査書類は約3万6千頁です。公開での審査会合の延べ時間がだいたい110時間、ということであります。それを今日ご提示しました四百数十頁にまとめたというのが今回の審査書案であります。

 そういうことですので、みなさま報道関係者においても、全てを踏まえて是非、正確にご報道いただければありがたいと思います」

避難計画は万全でないが合格にするのか

 「避難計画はまだ万全ではないが、審査書案を承認するのか」と記者が質問したところ、委員長は「規制の範囲外で審査の中では評価はしない」と言う。

 しかし、「環境への放出量など試算データを公表している。いろいろな科学技術的な面でお手伝いはするが、防災避難計画を作ること自身は規制委員会、規制庁の仕事ではない。実際に計画を作るのは自治体であり、内閣防災が担当している」と答えた。

 業務ではないが、「放射能に関することなので規制委員会が全く無関与ではないはずだ」と記者が食い下がるも、片山啓・長官官房審議官は「内閣府の原子力防災担当から、今の点について技術的なアドバイスを原子力規制庁に求められているということはない」と答えた。

 記者はさらに「避難計画ができるまで、自治体は再稼働を承認しないほうがいいのか」と質問。「再稼働の判断を規制委はしない」と答えた委員長は、「再稼働は規制委の審査をベースに、住民や政府等の関係者の合意で行われる」と述べた。

「もう少し早くまとめられると思っていた」

 審査書案がまとまったことについて、田中委員長は「もう少し早くまとめられるのかなと思っていたが、こんな時期になってしまった」と感想を述べた。

 新規制基準適合性審査では、「シビアアクシデント対策、自然災害も十分に検討してきた。考えられることについては相当慎重にきちっと評価した。しかしながら、今後とも改善を図っていきたい」との考えを示した。

 ただし、「一つ山は越えたが、これからパブコメ、正式版等々、次々に山はある」という。

新しい規制基準「相当厳しい」

 川内原発の安全性について田中委員長は、「新規制基準は相当厳しい基準だから、一定程度安全性は高まっていると評価している。しかし決してゴールではなく、ますます努力していく必要がある」。また、あくまでも新規制基準適合審査は、安全審査ではなくて、基準の適合性を審査したということで、「安全だということは私は申し上げません」というこれまでの発言を繰り返した。

 一方、川内原発の安全性の度合いについて、田中委員長は「ほぼ最高レベルに近いと思っています」と答えている。

火山噴火について

 多くの火山学者は、噴火の予知自体がそもそも難しく、前兆をとらえても噴火するまでの期間が分からないと発言していることを記者が紹介した。川内原発審査書案の承認について、こうした火山学者の声を無視するのか、という記者からの質問に対し田中委員長は、「何人かの先生の意見も踏まえて、いろいろな文献も調べて、島﨑委員が中心になっていろいろ調べた結果として、問題ないという判断をしました」と答えた。

他のサイトの審査状況

 優先審査の対象となっていた川内原発が「ひと段落ついた」として、他のサイトの審査状況について、記者が質問した。

 東電・柏崎刈羽原発は、審査会合がない中で非公開のヒアリングのやりとりが盛んに交わされている。こうした状況について、記者が「詳細が分からない中で審査だけが進んでいるように見える」と質問。

 小林管理官は、「まだまだ審査会合でやるような資料になっていない」と答え、さらに追加調査を進めているという。「本当に審査の根幹に関わるところなので、慎重に審査を進めている」と説明した。

 田中委員長からは、「事務局打ち合せは論点整理等で、判断はしないということになっている」とし、ヒアリングが非公開でも心配しなくてよいという主旨の回答だ。

 四国電力・伊方原発について、小林管理官は「中央構造線の地震動の評価について、まだ事業者の方から再検討結果が出てきていない」と述べ、これが出次第、審査会合の方にかけると答えた。

 その他のサイトは高浜、玄海原発が先行しており、「あとは事業者の考え方が非常に大きいと思います」と田中委員長は所見を述べた。

地元説明会「要請がない」

 審査の結果、審査書案を今の段階で立地地域に説明することについて、記者から質問が出た。

 地元や立地地域から審査に関する説明の要請があれば、規制委の判断については説明すると、田中委員長はこれまでに何度も発言しているが、現時点で立地地域からの説明の要望はないという。

 田中委員長は「何せ要請がない。正式な要請はやはり首長さんから来るものだと私は思いますので、そういうところを踏まえて対応していきたいと思います」と答えた。

※ 新規制基準施行後、初の審査書案承認ということから、いつになく多くの報道各社が会見に出席して、報道番組キャスターが詰めかけた。いつもと違う騒然とした会場の様子もうかがわれた。

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