2014年7月2日14時30分より、東京・六本木の原子力規制庁で田中俊一・原子力規制委員会委員長による定例会見が行われた。新規制基準が施行から1年が経過したが、当初半年での終了を見込んでいた適合性審査は、いまだ1件も完了していない。これに関し田中委員長は、「いまだ完了しないのは、福島の事故が起こったという事実を、もっと厳しく受け止める姿勢に欠けているからだ」と事業者側を批判した。
2014年7月2日14時30分より、東京・六本木の原子力規制庁で田中俊一・原子力規制委員会委員長による定例会見が行われた。新規制基準が施行から1年が経過したが、当初半年での終了を見込んでいた適合性審査は、いまだ1件も完了していない。これに関し田中委員長は、「いまだ完了しないのは、福島の事故が起こったという事実を、もっと厳しく受け止める姿勢に欠けているからだ」と事業者側を批判した。
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新規制基準が施行されて1年になる。新規制基準は「世界最高水準だ」という声も聞くが、委員長はどう認識しているのか、記者が質問した。
日本の場合は自然条件が厳しく、その対応で相当厳しいものを求めており、全体として原子力発電所のセーフティを守るという意味で、高いレベルにあるという。田中委員長は、「そういったことから最高のレベルにある」と答えた。
一方で、世の中に絶対に安全だなどというものは存在しない、それゆえに新規制基準は「安全を担保するものではない」という。
新規制基準をめぐっては、これまでの会見で何度も質疑があり、その度に規制委は「新規制基準適合性審査の合格が、再稼働認可ではない」と回答している。
新規制基準の適合性審査は、当初は半年程度での終了を予想していたが、いまだに1件も終了したものはない。この進捗について、「どのように感じているのか」記者が質問した。
「結果的に1年以上かかっているのはしょうがない」と田中委員長は話し、「もともと福島の事故が起こったという事実を、もっと厳しく受け止める姿勢に欠けているからだ」、と事業者に苦言を呈した。
「規制委員会や規制庁がいたずらに審査会合を引き延ばしている」という声に対しては、「できるだけ速やかにという努力もしたが、結果的に長時間の議論になったということ。そこは正確に見ていただきたい」、と反論。「十分な議論をして新しい基準を作ったわけだから、今はそれに適合するように努力することでしか対応がない」と考えを述べた。
「自分の意見だけを主張するのなら、そこに時間の浪費、時間だけが過ぎ去っていくところがあった」と振り返りつつも、「事業者と規制当局とはお互いに合意、納得し、両者間の温度差は埋まってきていると思っている」と感想を述べた。
規制委・規制庁は、川内原発の審査書案ができた後、技術的意見募集や公聴会、住民説明会などを行うことを考えていた。公聴会、住民説明会についてはまだ具体的な話はでていない。
片山啓審議官は、「技術的意見募集と同時期に行うと言っていた公聴会は、今のところ開催する予定はない」と言う。一方、審査書案がまとまった後の住民説明会については、今後地元とも調整しながら決めていくが、まだ具体的に決まっていないということだ。
防災避難計画は新規制基準の中には位置づけられていない。その訳について田中委員長は、「助言はできると思うが、防災計画は地方自治体の任務としてあるわけで、その良し悪しの確認を国はしない」と答えた。
加えて片山啓審議官は、適合性審査の申請は事業者、防災計画の作成が自治体で、申請者ではないため、今の法体系の中ではできないと説明した。
川内原発の審査書案作成が進んでいることから、実際に再稼働させる際の責任主体について、記者から質問が出た。
田中委員長は、「稼働させるのは事業者だから事業者に責任がある」とし、それを受け入れるかどうかは最大のステークホルダーである「住民が判断するのだと思う」と述べた。
これも、過去の会見で何度か回答があったが「規制委員会の立場として、再稼働するか否かについては何らコミットしないのが基本的な原則」だと答えた。