2014年7月9日14時30分より、東京・六本木の原子力規制庁で田中俊一・原子力規制委員会委員長による定例会見が行われた。特定原子力施設監視・評価検討会の中で福島第一原発のリスクを改めて整理し、優先度、対策等を議論する考えを示した。
2014年7月9日14時30分より、東京・六本木の原子力規制庁で田中俊一・原子力規制委員会委員長による定例会見が行われた。特定原子力施設監視・評価検討会の中で福島第一原発のリスクを改めて整理し、優先度、対策等を議論する考えを示した。
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田中俊一・原子力規制委員長は、東電福島第一原発のリスクに関して、改めて整理、議論する考えを示した。記者からの質問に対し、午前中の定例の規制委員会の発言の意図を回答として説明したもの。
これは、福島第一の廃炉措置に対する基本的な考え方として、大きなリスクから優先的に考え、リスクを少なくしていくというもの。しかし、「このところ違う方向に努力が向いている気がしている」と田中委員長は述べ、もう一度、考えられるリスクを整理し、「何をどういう順序でどういう対策をするか、きちんと議論し、整理しておく」との見解を示した。
なお、その検討については、特定原子力施設監視・評価検討会の中で行う考えを示している。
福島第一原発では、2、3号機海側海水配管トレンチの凍結止水を試みているが、2ヶ月が経過しても凍っていない。そのため、凍土式遮水壁も凍らない可能性がある。これについて田中委員長は、「だからといって、規制当局の立場から事業者にそれを止めろとは言いにくい」と弁明した。
委員会では、凍土壁が凍らなくても逆にリスクが大きくならないようにすることを議論してきたが、「そういう受け身だけでいいのかということもある」という。そのため、改めてリスクを整理しようということだ。
福島第一原発では、昨年の夏から秋にかけて、台風などの大雨でタンク漏洩などのリスクが生じた。今年の台風のリスクはどう考えているのかについて、記者が質問した。
田中委員長は、「昨年の大雨はしょうがないと判断したが、今年もそうならざるをえないだろう」と答えたが、「できるだけ汚染水が出ていかないだけの配慮、努力はすべきだ」と事業者に求めているという。
「どんな組織も最高責任者の能力、判断力が大事なのは間違いないと思う」
福島第一原発の事故を振り返り、緊急時の所長の対応力、判断力について記者から質問を受けた田中委員長は、こう答えた。その上で、各電力事業者の適合審査や、安全性向上のための努力について、「個人の能力よりも、アクシデント対応能力、有効性、陣容などを審査で評価しているところだ」とした。
これは、発電所の施設全てを一人で把握するのは困難であるため、部下の能力を掌握するのが重要だということだ。こうしたソフト面の安全性への努力は、「規制だけでカバーできることでもなく、規制当局があれこれ要求することではない」という。つまり、「安全を守る第一義的責任は事業者にある」ということだ。
審査では、ハード面の安全性の努力を見ていくが、同時に審査とは別に、「トップマネジメントが非常に重要であることをトップに求めていく」との考えを田中委員長は表明している。ただ、具体的でないところもまだあり、「これからですね」との認識を示した。
立地指針にあった敷地境界を、新規制基準では求めなくなった問題について田中委員長は、記者からの質問に対し、「新しい規制基準では、昔の立地指針のような仮想事故を想定しなくなった。だから昔の立地指針のような敷地境界何mSv以下という要求はしていない」と説明。
環境中に放射性物質が漏洩する場合は、放出量セシウム100テラBqで百万年に一回という安全目標を定め、最悪でもそれを守ることを事業者に求めている。人に対する影響は防災指針ので決まっており、一週間で100mSv以下、透過線量甲状腺で50mSv以下など、一つの目標、基準を決めてあり、それに基づいて対策しているため、規制委が規制するわけではないという。
つまり、どういう事故を想定するかによって違ってくるため、新基準では敷地境界で何mSvになるかという基準は「現実的でない」という。ただし、環境に放射性物質が出る時は、”防災指針”で1週間に100mSv以下、透過線量甲状腺被曝で50mSv以下等の目標を決めており、それに沿うように対策とってもらっているということだ。
九州電力・川内原発は優先審査対象として、審査合格を表す審査書案の作成が進められている。進捗状況はある程度ドラフトができた段階で、委員らができたものを読みこんでいるところだという。いつ公表できるかは、田中委員長だけの判断で言えるものではないと、まだ明らかになっていない。