「東電は破綻させ、資源エネルギー庁は解散を」 ~大島堅一氏、上原公子氏、国民の主権意識の覚醒を強調 2014.6.28

記事公開日:2014.6.28取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 2014年6月28日、神戸市中央区のあすてっぷKOBEで開催された「原発ゼロ社会への道 兵庫フォーラム」では、脱原発に向けて「市民の力」を喚起する講演が行われた。

 スピーカーは、立命館大学教授の大島堅一氏と元国立市長で脱原発をめざす首長会議事務局長の上原公子氏の2人。大島氏は、脱原発の方策を探る民間シンクタンク「原子力市民委員会」で部会長を務めており、同委員会が4月に公表した、日本に「原発ゼロ社会」を実現させるための具体的提言集「脱原子力政策大綱」の内容をベースに、福島第一原発事故を巡る東京電力の責任追及を、国民がもっと厳しく行うことが大切、と力説した。

 一方の上原氏は、「国民の多数派が地方自治に無関心だから、中央政府のやりたい放題が実現してしまう」との立場。国民一人ひとりが地元の暮らしに何を求めるかを、もっと真剣に考え、自分らの意思をきちんと表明すれば、日本から原発はなくなると主張した。

■ハイライト

  • 主催あいさつ 中川慶子氏(原発の危険性を考える宝塚の会)
  • 講演 大島堅一氏(立命館大学教授、原子力市民委員会「原発ゼロ行程」部会長)「原発ゼロ社会への行程」
    原子力市民委員会について 水藤周三氏(原子力市民委員会事務局)
    講演 上原公子氏(元東京都国立市長、脱原発をめざす首長会議事務局長)「脱原発に果たす地方自治体の役割」
  • 兵庫県内自治体より 政処剛史氏(宝塚市新エネルギー推進課課長)ほか
  • 主催構成団体よりアピール/原発ゼロ社会を求めるアピール 提案・採択
  • 日時 2014年6月28日(土)13:30~16:40
  • 場所 あすてっぷKOBE(神戸市中央区)
  • 主催 原発ゼロ社会への道―兵庫フォーラム実行委員会(詳細、Facebook)

 大島氏は「東京電力を破綻させろ」と何度も発言した。「東電は『親切親身な賠償』を掲げているが、それは福島原発事故の被害者に、狙い通りの書式を書かせることに親切親身なだけだ」。

 損害賠償を巡る東電の姿勢を、「渋る、値切る、打ち切る」との言葉で揶揄した大島氏は、「彼らは、実際に『あなたの世帯は避難対象区域でなくなった』と被害者に迫り、賠償金支払いの打ち切りへと舵を切っている。帰還する、しないは、本人が決めることなのだ」と怒りをにじませた。

 「福島原発事故の発生責任は、完全に東電にある」と言い切る大島氏は、汚染水処理で東電の必死さが感じられないのも、東電への世間の責任追及が甘いからだ、と指摘する。

 「原子力賠償制度ならではの(過失の証明が軽減される)無過失責任がよくない。東電は、その点に乗じて『当方に過失はなかったけれど、賠償金を払ってやっている』という、不遜な態度に出ているのだろう」。

モラルハザードが蔓延する

 「東電が、自ら持つ資産をすべて売り払うなどして、自力賠償をやれるところまでやり尽くし、そのあとを国がカバーするというのなら理解できるが、実際はそうではない」と続けた大島氏。「原子力損害賠償制度」の再構築が必要との考えから、「原発を動かさなくても、廃炉作業で事故は発生し得るため、この制度は今後も必要」としつつ、次のように語った。

 「現行の制度の念頭にある『原子力の事業の健全な発達』を削除しなければならない。そうでないと、未曾有の事故を発生させた電力会社の経営が、従前よりも安定するという、おかしな事態になりかねない」。

 独自の試算による、11兆円という福島原発事故の損失規模を、集まった市民らに提示した大島氏は、「このままでは、他の電力会社の間に『原発事故を起こしても国が助けてくれる』とのモラルハザードが広がってしまう」と危惧する。

 一方で、「今の日本の行財政は、原発推進の了解の下にあり、資源エネルギー庁に原子力開発の権限を残したままでは『脱原発』には向かわかない」とも話した大島氏は、「資源エネルギー庁の解散が必要」と訴えた。

 さらに、「原発立地自治体への交付金の源でもある、原子力開発促進税を廃止し、代わって『脱原子力エネルギー転換税』を新たに作ることが重要だ」とも主張した。原発で財政を支えている地方自治体が、原発ゼロへ移行する期間、国が一定の支援を行いつつ、その自治体の自立を促すのは理にかなっている、との言い分だ。

安倍政権を強敵と思うな

 日本に原発ゼロ社会を実現させるには、政権が「脱原発」に向けてアクセルを踏み込むのが大前提だが、大島氏は「近いうちに、原発再稼働が現実味を帯びる」との見通しを示した。その上で、「再稼働については、大多数の国民が反対するに決まっている以上、政権がそれを押し切れるかが焦点になる」と指摘した。

 そして、「今は、与党にも野党にも、原発推進派と反対派が混在しているが、行け行けどんどんの原発推進派は少数だろう」と語り、「安倍首相も、安全保障には強いこだわりがあるが、エネルギー政策には、さほど関心がないように映る」と発言した。

 大島氏は、福井地裁が5月21日に、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転差し止めを命じたことについて、「司法の世界にも、大きな変化が見られる」と強調。「すべては、国民がいかに反原発の運動を繰り広げるかにかかっている」とした上で、「具体的には、賠償訴訟で東電と戦っている原発事故被害者を、かつての水俣病裁判の時のように、国民がもっと支援する必要がある」と述べた。

統一地方選で意思表示を

 「フクシマショックで、あれだけ海外に迷惑をかけた日本人が、なぜ(原発推進の)安倍政権を選んだのか」──。ドイツを視察した折に、ドイツ人から、こんな疑問を投げかけられた、と報告したのは、次に登壇した上原公子氏(元東京都国立市長、脱原発をめざす首長会議事務局長)。上原氏は「世界は、日本人の主権意識を問うている」と言葉を重ねた。

 来年、統一地方選挙が控えていることに触れた上原氏は、「地方は、国を変えられる」と力説しつつ、「住民が地方自治に対し、あまりにも発言しないから、中央政府の『大きな声』が首長に通ってしまう」と国民を叱咤した。

 上原氏は、交付金獲得などを通じた原発立地自治体の財政安定は、ある種の「麻薬効果」だと強調する。「原発1基では効き目が薄くなったと実感したら、『もう1基ほしい』という話になる。そして、その陰で、伝統的な地場産業が衰退していくのだ」。【IWJテキストスタッフ・富田/奥松】

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