「自民党は、改憲で個人の自由を制限する」 〜元国立市長の上原公子氏、自民党改憲草案の怖さを語る 2014.6.14

記事公開日:2014.6.14取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)

 「自民党の改憲草案では国防軍が創設され、個人の自由が奪われ、内閣が絶大な力を持つことになる。この状況に対抗するには、現行憲法を守るのではなく、使いこなさなければならない」。上原公子氏は、国民の権利の行使が鍵を握る、とした。

 2014年6月14日、大阪市の協同会館アソシエで「辺野古に基地はいらない!軍事力に頼らない平和を!6.14沖縄意見広告運動報告集会」が行われた。元国立市長の上原公子氏が講演を行い、現行憲法と比較しながら自民党憲法草案の問題点を指摘した。また、韓国「反戦平和連帯(準)」幹事のキム・ウォジン氏の連帯のあいさつ、NO! オスプレイ西日本キャラバン活動報告などが行われた。

 市長として憲法を使う立場にいた上原氏は、「憲法は前文で『政府は間違ったことをする』と言っている。それを監視し、コントロールするのが主権者国民である。今、安倍政権が悪いと言っても、安倍政権を支えているのは、主権者である国民。そこをどうするかが、今問われている。主権者の問題である」と訴えた。

■全編動画 1/2

2分~ 開会/5分~ 武氏あいさつ/18分~ 上原氏講演/1時間26分~ キム氏あいさつ/1時間58分~ 活動報告など

■全編動画 2/2

  • 主催者あいさつ 武建一氏(沖縄意見広告運動代表世話人)
  • 講演 上原公子氏(元東京都国立市長、脱原発をめざす首長会議事務局長)「日本国憲法改悪について(自民党憲法草案批判)」
  • 連帯アピール キム・ウォジン氏(韓国「反戦平和連帯(準)」幹事)
  • NO! オスプレイ西日本キャラバン活動報告ほか
  • 日時 2014年6月14日(土)17:30~19:30
  • 場所 協同会館アソシエ(大阪府東淀川区)
  • 主催 第五期沖縄意見広告運動告知

自民党が尊重するのは「個人」ではなく「国家」

 上原氏は現行憲法と自民党案を比較して、「自民党案を見た時、あまりにもひどいので、今の憲法がすごくわかりやすくなったと思った。憲法の形を見ることで、自民党が日本をどのように戦争ができる国にしようとしているのか、わかる」と話した。

 自民党が描く社会が、改憲草案にどのように反映されているのか、前文を比較した。「現行憲法は『日本国民は』で始まる。一方、自民党案は『日本国は』から始まる。ここがまったく違う。一人ひとりのことが書いてあるのは、現行憲法。自民党案は、日本国をどう作るかを基本に書いてある。そして、『日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り』と言っているから、国防軍という発想が出てくる。徴兵制があっても逆らってはいけないということ。『国を守るために、自ら志願兵となりなさい』ということが隠れている」と指摘した。

 また、「基本的人権は『尊重する』とは書いてあるが、『和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する』とあり、ここには個人がなくなっている。要するに、自己主張してはいけない。そして、個人ではなく、家族という単位があって、その上に社会全体があって、昔の秩序ある社会を作って国家を助けよう、ということがでてくる。今後、自民党が憲法を改正したら、『家族を持たない人は非国民だ』『子どもを産まないのは人間として認められない』ということに戻っていく。それが、彼らが描く国のかたちである。そのためには、経済的に発展しなければならない。そうなると、富国強兵である。明らかに、それを意識して書いている」と述べた。

「公益及び公の秩序」が曲者

 個人の自由が制限されると危惧する上原氏は、続いて、憲法第12条を例に挙げた。「自民党案は『自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない』となり、現行憲法の『公共の福祉』から『公益及び公の秩序』と変わる。では、誰が公なのか。実は、公が権力者に変わっていく。公というのは、とっても怪しげなもの。誰が判断するかによって、解釈が変わっていくことを念頭に置くべきだ。すべてを『公益及び公の秩序』と変えながら、基本的人権に保障されたものが制約される内容になっている」。

 続けて第13条に触れ、「個人の尊厳ということ、一人ひとりが大事であることは永久不可侵である、と現行憲法には書いてある。公共の福祉に反してはいけないが、個人の尊厳は最大限に尊重すると書いてある。それが自民党案では、『すべて国民は、人として尊重される』となる。『個人』が『人』になっている。個人と人では、意味合いがまったく違う。ひとくくりの『人』という言い方をしているので、どういうものを『人』として見るかで変わってくる」と改悪のポイントを説明した。

 「第21条では『公益及び公の秩序に反しない限り』が最大限発揮される。自由、権利を語る場合、ここがもっとも大事。自民党案では、表現の自由を認めると言いながら、新設した2項で『前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とする活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない』とある。ちょっとでも怪しげな連中は認めない。政府が『あいつらはテロだ』と言った瞬間、公の秩序に反して許されなくなる」。

 このように語る上原氏は、「国家を守ることを国の最大の目的とするためには、『公共の福祉』とは言えないから、『公益及び公の秩序』と変えることで、国民の自由を許さないという全体的な構造ができていく」と、自由の制限に対する懸念を表明した。

新設「緊急事態」の章で独裁体制が作れる!

 上原氏は、自民党の改憲の目的は、国防軍を作ることにとどまらないと指摘する。「『第9章 緊急事態』という新章が入った。緊急事態の宣言が、第98条。自然災害は当然だが、戦争、内乱、社会的秩序の混乱、それらをどこまで、時の内閣総理大臣が判断するのか。しかも、怖いことに、緊急事態宣言の国会承認は『事後』でもいいのである。総理大臣は絶大な権限を持つことになる」。

 「第99条では『緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる』とある。総理大臣が、立法権も持つことになる。しかも、処分もやるし、地方自治体の長に指示もできる。これは、緊急事態と称して、絶大な権力を内閣総理大臣が持ち、すべての国民を掌握して動かすことができる、ということ。そこに国防軍が動いてくる。軍が動くというのは、日本国内で初めて、日本の軍隊が日本国民に銃を向ける可能性が出てきたということだ。これは本当に恐ろしい」と述べて、自民党案が持つ真の危険性を指摘した。

 こうした状況に、国民が対抗していくことについて、上原氏は「私たちそれぞれが、自分らしく生きて、幸せになると決意して、状況に立ち向かっていく力を持たなければ、今、憲法で保証されているものは失われていく。私たちが『私たちの権利は何だったのか』と憲法を読み取って、単にそれを守るのではなく、いかに使いこなすかにかかっている。私たちは、憲法を使いこなして、自分たちの権利を主張しなければならない。私たちの生活のあらゆることの基礎は、憲法の中に書いてある『自由と権利』である。憲法は、私たち自身が幸せになるための大事な鍵。憲法を読んで、自民党案はめちゃくちゃだと知ってほしい」と訴えた。

日米韓同盟の強化は、東アジアに新たな緊張を作り出す

 次に登壇したキム・ウォジン氏は、韓国の現状について、「朴槿恵政権のもと、日米韓の危険な軍事同盟が進められている。朴槿恵政権は、歴史認識問題で日本と外交的にうまくいっていないように見られてきたが、行動においては、日米韓の海上訓練に連続して積極的に参加し、アメリカと日本に完全に追従している」と述べた。

 さらに、朴槿恵政権に関して、「アメリカの中国牽制に対する協力要請に正確に呼応し、役割を果たしていくだろう。(フェリーが転覆、沈没した)セウォル号事件で明らかになったように、韓国政府は人命や安全を守るための規制を緩和し、予算を削減した。一方で、アメリカの最先端兵器の購入は続けている。先日の米韓首脳会談で、オバマ大統領はセウォル号惨事に関する継続的支援について言及したが、日米韓同盟を構築するための口実に(事故が)利用されたにすぎない。日米韓同盟の構築と強化は、中国や北朝鮮の反発を招き、ミサイルや核実験を誘発することも考えられる。新たな緊張状態に発展する可能性がある」と述べて、その危険性を指摘した。

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