「当時、女性議員の先生方が毎日のように大臣室に陳情に来られ『早く進めてくれ』と。グラクソ・スミスクライン社を含め製薬会社の臨床データを見て、単純にデータでいうと打った方がはるかに良いと・・・。それで承認した」
舛添要一新東京都知事は、2月12日の就任会見でIWJの質問に対し、厚労相時代に子宮頸がんワクチンを承認するに至った経緯について、そう説明した。子宮頸がんワクチンの導入の主体は、当時、厚生行政のトップにあった自分ではなく、製薬会社の意をうけた「女性議員」だったと、責任転嫁をはかるような弁明である。
舛添知事は、さらにこう続けた。
「当時、打たないで子宮頸がんにかかる方々がたくさんいる、それは、こういう席では申し上げにくいのですけれども、未成年で、ある段階で、いろんな経験をなさる。その前にやっておかないとというご意見が、女性議員からあった。
今、特にそういう年齢の方々に、非常に副反応被害が出てますので、東京都としても実態を把握して、何らかの救済手段ができるか。厚労大臣時代に私も関わっておりますので、厚労省とも協議しながら、一番良い方法を考えていきたい」
「女性議員が毎日陳情に来ていた」、「製薬会社の臨床データでは、打った方がはるかに良かった」。こうした言い分が仮に事実であったとしても、最終的に承認に踏み切った責任は、当時の厚労相だった舛添氏にある。責任回避はいただけない。
そもそも舛添氏が言うように、製薬会社が提供するデータを批判的検討もなく、うのみにしていいのかどうか、まずこの点から考え直す必要がある。
副反応の原因は「心因性」?
IWJは、子宮頸がんワクチンの副反応被害の問題を継続して取材してきた。
私たちは、ワクチン推進派・反対派の双方から、これまで取材を行ってきたが、反対派が根拠としているデータについて、ワクチンの接種事業の是非を決める厚労省の会議である副反応検討部会では、真剣な検討がなされているとは到底言い難い。
厚労省は、子宮頸がんワクチンの副反応被害が相次いで報告されたことを受けて、2013年6月から同ワクチンの積極的な勧奨を一時中止にしている。今後、再度ワクチンのお勧めを再開するか否かは、同省のワクチン副反応検討部会の判断にかかっていると言っていい。原発の再稼働の判断が、原子力規制委員会の判断にかかっているのと似たような構図である。
今年1月20日に行なわれた前回の検討部会では、勧奨再開の判断は見送られたが、副反応として報告されている広範な疼痛(とうつう=痛みのこと)や運動障害は、「心因性」が原因である、すなわち「心のもちようの問題」などとされ、ワクチン接種との因果関係は乏しいという結論に至った。
この点も、原発事故後の健康被害の原因を「ストレス」のせいにして、事故由来の放射性物質の影響がないように論じる原発推進派の姿勢とよく似通っている。
反対派が緊急抗議声明
これに対し、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会は、翌日の1月21日、検討部会が出した結論に抗議する緊急声明を発表した。検討部会が出した結論に対して、「『集学的診療体制の整備によって64パーセントが改善された』とする研究報告を根拠にしているが、これは被害者の実態と大きくかけ離れている」と厳しく批判した。
翌1月22日には、日本消費者連盟、ワクチントーク全国、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会が連名で、田村憲久厚労大臣と検討部会の桃井眞理子委員長宛に緊急抗議声明と公開質問状を送付した。検討部会での議論が「ことさらに因果関係を否定することに執心している」とし、このような検討のあり方は、「そもそもワクチンの副作用ではないかとの疑念を意図的に排除し、副作用かどうか真摯に検討しようとする姿勢が全く感じられないものだ」と主張した。
抗議声明では、検討部会の出席委員14名のうち、9名の委員が製薬会社から寄付金を受領していたことも指摘された。癒着が疑われても仕方がない状況だ。「審議する資格の疑われる利益相反の委員より構成された審議会であると言わざるを得ない」と抗議声明には記されている。ワクチンの反対派らは、「この論点整理をもって接種(勧奨を)再開をすることは国民を愚ろうするものだ」として、副作用報告者全員の詳細な調査と情報公開を要求している。
当事者が語る被害の実態
2月6日に行われた反対派らの緊急集会では、現在もワクチン副反応被害に苦しんでいる被害者本人も参加し、自身の体験を踏まえた副反応被害の実情を訴えた。
茨城県の菅原ミマさん(中学生)は、自身が今まで経験した悲痛な思いを次のように語っている。
「接種してから、すべて生活が変わりました。もし、元気だったらできたことが、できなくなりました。学校に行けない、友達とも会えない。このワクチンを打ってから、自分の身体は言うことを聞かなくなってしまって、自分一人じゃ何もできなくなってしまった。
勉強しようと思っても、頭痛がひどかったり、不随意運動とか、けいれんが起きて、勉強することもできないし、このままでは高校に行けるかどうかも不安な状態です。医者になる夢があったのですが、こんな身体じゃ、なれないだろうな、という諦めがあったりします。それでも、こんな身体に負けていられないと思って、一生懸命やっているのですが、やっぱり身体が言うことを聞いてくれません。
いろんな病院にもかかったのですが、『精神的だろう』とか、『気のせいだろう』とか、『そんな訳はない』と、接種したからなった訳ではなく、『精神的だからそんなことは忘れなさい』と、心のないことを言われています。学校でも、けいれんが起きた時には、みんなが『なんでそういう風になってるの』という目で見てきて、学校にも行けない、というか、辛い、というか、理解してもらえなくて。
2014年1月20日の(厚労省の検討)部会の時にも、(副反応症状は)『心因的』だということに決まったと聞いて、なんで、一生懸命こんな身体でもがんばっている子たちがいるのに、そういう子たちに向かって『心因的』だとか、責任逃れをするような言い方をするのか、すごく悔しい気持ち、怒りを感じました」
医師らも疑問視するワクチンの必要性
集会の後に行われた学習会では、子宮頸がんワクチンの副反応の問題に取り組む医師が、同ワクチンをめぐる問題点を明らかにした。
金沢大学附属病院産婦人科の打出喜義医師は、厚労省ワクチン副反応検討部会の資料などをもとに、審議内容に関する数々の疑問点を指摘。検討部会は子宮頸がんワクチンの予防効果について、いまだに「実証されていない」ことを自ら認めているにも関わらず、「それでもワクチンを打つというのは、どういうことなのか」と疑問視した。
宮城県大崎市のさとう内科循環器科医院の佐藤荘太郎医院長も、子宮頸がんワクチンの必要性を強く否定するとともに、「製薬メーカーは、自分たちが作った薬をなんとしてでも売りたい。嘘八百を並べて売る。医師もそれに抵抗しない」と厳しく批判。子宮頸がんワクチンで「ガンを減らしたという事実は1つもない。それを誰も言わない」と、製薬メーカーと医師の姿勢を非難した。
次回の厚労省の検討部会の開催日は未定だが、今月にもワクチン接種勧奨が再開されるのではないかという見方が強まっている。予防効果が未知数で、かつ副反応被害が相次ぐこの子宮頸がんワクチンを、厚労省はじめ検討部会の委員らは再度、「お勧めします」と言えるのか、彼らの倫理観が問われている。
IWJは今後も、子宮頸がんワクチンの動向に注視し、舛添新都知事にも、同ワクチンをめぐって、どのような対応を講じていくのか追及していく。
IWJの報道で子宮頸がんワクチンのことを知った後、今年の1月に区の健康講座で「子宮がん」をテーマにした話をすると知り、どんな話をするのか気になったので、参加した人に聞いてみました。ワクチンを勧めていたということでした。講師は女性の医師です。普通の人は医者の言うことを信用しているだろうな、少なくとも素人の私が言うことよりもと思って、あまり自分の考えを言うことはできなかった。
インターネットで情報を得る人と、マスコミを通して情報を得る人では、全然違う世界に住んでいるみたいだという感じがどんどん強くなっていくみたいです。