「世界各国のメディアのみなさん、沖縄の実情をそれぞれの国に届けてください」――。
沖縄県の稲嶺進名護市長は2月13日、外国特派員協会で記者会見を開き、基地問題を取り巻く沖縄の実情を訴えた。
(IWJ・ぎぎまき)
「世界各国のメディアのみなさん、沖縄の実情をそれぞれの国に届けてください」――。
沖縄県の稲嶺進名護市長は2月13日、外国特派員協会で記者会見を開き、基地問題を取り巻く沖縄の実情を訴えた。
■ハイライト
先の市長選で名護市民らは、普天間基地の辺野古移設反対を掲げた稲嶺氏を再選した。
辺野古移設を推進する政府は、沖縄選出の自民党国会議員、自民党沖縄県連、沖縄県知事を次々と「埋め立て承認」へと寝返らせるなど、あからさまな選挙介入を行った。挙句の果てには、「沖縄振興策」までちらつかせたが、名護市民は一時的な「アメ」による地域発展に頼らず、稲嶺氏を再選させることで、辺野古移設反対の民意を国に叩きつけたのである。
しかしなおも政府は、選挙結果を無視し、普天間基地の移設の手を緩めようとしない。これについて稲嶺氏は、「選挙結果を否定するのは、民主主義国家にとってあってはならないことだ」と批判。沖縄の実情を海外に伝えて欲しいと記者らに呼びかけた。
「日本の国土0.6%しかない沖縄に、米軍専用施設の約74%が、戦後68年間ずっと沖縄に居座り続けている。政府は沖縄の負担軽減ということで、辺野古移設を主張しているが、普天間飛行場が辺野古に移設されても、現在の73.8%が73.1%に減るだけで、負担軽減にはならない」
稲嶺市長は政府による「沖縄の負担軽減」のカラクリを解き、さらに辺野古移設は、単に普天間飛行場の移設ではなく、弾薬搭載のエリアや係船機能付きの護岸など、普天間飛行場にはない新しい機能がついてくると説明。「政府は否定しているが、軍港機能を持つ施設がここにくる」と政府の嘘を訴えた。辺野古の大浦湾はAクラスに指定されるほどの生物多様性に恵まれている。
その豊かな自然を守るべきだと主張した稲嶺氏は、会見の前日に面会したケネディ米駐在大使も、辺野古の自然環境について特段興味を示したことを明らかにした。
会見の後に行なわれた質疑応答では、フリーランスや外国人記者による質問が相次いだ。 フリーランス・田中氏「辺野古に海上基地を作りたいのは米軍ではなく日本の国内政治関係者であるという指摘についてどう思われるか」
稲嶺市長「明快な答えだと思う。『日米地位協定』では、日本に基地を置くことについては約束しているが、どこにも沖縄でなければいけないとは書いていない。『他に受けるところがないから』という鳩山元首相の時もあった」
アメリカ人記者「今後、米国側の高官と対話する可能性は」
稲嶺市長「昨年もワシントンDCを訪れて、上院、下院議員や専門家と話をする機会があった。政府高官に会ったとき、『これは日本の問題だ。日本政府と相談した方がいい』と言われたこともある。 今年も4月以降に訪米する計画があるので、訴えていきたい」
ドイツ人記者「安倍政権は名護市の民意は尊重しない。日本国民も沖縄市民と連帯していない。今後、何か戦略はあるのか」
稲嶺市長「日本国民全体に訴える必要がある。『日米安保条約』の恩恵と負担、の二つがある。恩恵の部分では、日本は世界にも例がないくらいの経済発展を遂げてきた。それは大きな恩恵。負担については74%が沖縄に閉じ込められている。この不条理さを、国民のみなさんにも理解してもらう必要がある。
他人事ではないということを共通の認識として持ってもらうことによって政府のやり方、考え方も変わってくるのではないか。 その為にも、国内主要新聞が沖縄を地方のことに押し込めるのではなく、取り上げることで国民に対し情報を正確に届ける。そのことで国民の理解も深まるのではないか」
ビデオニュース・神保氏「辺野古移設について、政府をここまで突き動かすもの、背後にあるものは何だと感じているか」
稲嶺市長「政府は日米同盟と日米安保の重要性を盾にして、沖縄に基地が必要だと説明してきた。しかし、基地の抑止力、沖縄の地理的優位性について、根拠は破綻している。森本前大臣も『政治的に沖縄が最適だ』とマスコミに対し発言している。
日本国内で、どこも受け取るところがないというのが1つ。もう1つは、日本全国に(沖縄のような抵抗が)広がることを一番恐れているのではないか」
WBCTV.COM記者「米国のこれまでの沖縄、日本に対する強行策について」
稲嶺市長「サンフランシスコ条約、日米安保条約、日米地位協定が締結されたことによって、奄美大島以南の島々は、米国軍の占領下に、以後27年間置かれることになった。米国が欲するだけの軍隊を、欲する場所に、欲する期間、約束したことによって沖縄の苦しみが始まった。
高等弁務官の中には、沖縄の自治は神話だと言った人もいた。27年間、(沖縄県民は)米軍基地の中で暮らしてきたといってもいい。市民にとっての生活の場が奪われ、そこに基地が作られてきた。
これが68年間、そして今もなお続いている。 日本政府はそれを許してきたという経緯がある。最近の話で特に酷いと思われたのは、沖縄にオスプレイが配備される時に、当時の野田首相は『米軍基地の運用は米軍が取り仕切っている。我々がどう言えることでもない』と言った。 沖縄差別がはっきりと出た発言だった。米国も日本も自らの国益のために進めてきたことが、沖縄だけに負担を強いてきた」
安倍政権の強行姿勢を赤裸々に批判する質問が続いた質疑応答だったが、司会を務めたマイケル・ペン氏は最後に、「この後、稲嶺氏は日本記者クラブで会見を開くが、ここで出たような質の高い質問はおそらく出ないだろう」と、大手マスコミに対し、皮肉を込めたコメントを述べて、会見を締めくくった。