【東京都知事選】舛添氏の「私も脱原発」は本当か? 政府・自民党の原発政策と類似点、過去にはもんじゅ推進発言も 2014.1.17

記事公開日:2014.1.17取材地: テキスト
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(IWJ・佐々木隼也)

 都知事選への立候補を正式に表明した舛添要一元厚労相は、1月15日の記者会見で、記者から原発政策を争点とすることの是非を問われ、「私も脱原発を言い続けています」と答えた。

 舛添氏は、「原発の代替エネルギーをしっかり考えなくてはいけない。東京が消費地として何ができるか。東京で省エネに取り組んだり、バイオマスなどの再生可能エネルギーの比率を増やす」と述べたうえで、「そうじゃないと、福島や新潟の皆さんに申し訳ない。安倍総理に提言することもやぶさかではありません」と、脱原発依存に積極的な姿勢を見せた。

 しかしその中身について聞いていくと、舛添氏の言う「脱原発」は、同じく都知事選に立候補している細川護熙候補や宇都宮健児候補が掲げる、「原発即時ゼロ」を意味する「脱原発」とは全く別種のもののようだ。

「即原発ゼロは困難」再稼働の可能性を否定せず

 記者から、具体的な原発政策について問われた舛添氏は、「30年、40年という党もありますが、もう少し細かく検討しなければなりません。シェール革命で劇的に解決、というようなこともあります」と、曖昧な回答に終始した。そもそも原発依存度をゼロにするのか、また何年かけてその目標を達成していくのかーー。明確なヴィジョンを描けているのか疑問が浮かぶ。

 さらに再稼働の是非については、「規制委員会のような中立な機関の意見を聞くことが必要。そのうえで最終決定すべきだと思います」と回答し、明言を避けた。さらに「多くの国民は原発に依存しない社会を、と思っています。しかし、即原発ゼロというのは現実的に難しい」と、締めくくった。「即原発ゼロは困難」ということは、再稼働の可能性を否定しない、ということと同義である。

 つまり、「再生可能エネルギーの比率を増やしつつも、即原発ゼロは難しい。再稼働については、規制委員会の判断を重視して最終決定を下すが、再稼働については否定しない」、これが舛添氏の言う「脱原発」ということになる。

 自民党の石破幹事長は1月11日の会見で、「自民党が申し上げているように、これから再生可能エネルギーの比率を上げていく。(規制委員会によって)世界最高水準の安心、安全が確認された原発の再稼働は行う。原発依存度を落としていくというわが党の方針」と語っている。

 舛添氏の方針は、この政府・自民党の方針とほとんど変わらない。「原発依存度を下げるが、再稼働も否定しない」というのが「脱原発」ならば、自民党も「脱原発」という事になる。舛添氏は「私も脱原発」と述べたが、「自民党と同じく」という意味の「私も」だったのだろうか。

 「脱原発」である舛添氏と、政府・自民党の方針の類似点は他にもある。

「もんじゅは続けて欲しい」政府・自民党の政策と合致する舛添氏の発言

 舛添氏は、国の原発推進の要である高速増殖炉もんじゅについて、「続けるべきだ」と発言しているのだ。  政府が都知事選後の閣議決定を目指す、国のエネルギー需給に関する政策を定めた「エネルギー基本計画」の原案には、「核燃料サイクル政策の着実な推進」が盛り込まれており、そこには「もんじゅについては、これまでの取組の反省と教訓の下、実施体制を再整備する。その上で、新規制基準への対応など稼働までに克服しなければならない課題への対応を着実に進める」と書かれている。

 昨年12月11日、ラジオ番組に出演した舛添氏は、そのもんじゅについて「科学技術の観点からみると、私は続けてやってもらいたいと思う。出したゴミのプルトニウムをもう一度燃やしてできるわけだから、ゴミもなくなる」と、その必要性を述べたうえで「どういう技術的困難が本当にあるのか、国民的議論をするべきなんですよ。そして最後は国会でピシっと決めるべき。議論が足りない」と語っている。

 政府・自民党が推進する「核燃サイクル」の必要性を説く舛添氏。都知事選において自民党の支援を受けるほどなのだから、その方針が似通っていても、何ら不思議ではない。

技術的に「破綻」した核燃料サイクル

 福井県敦賀市にある日本原子力研究開発機構の高速増殖炉もんじゅは、1995年の試運転開始段階で、発電開始からわずか4カ月後にナトリウム漏洩事故を起こし、運転(試運転)再開にこぎつけた2010年にもわずか3カ月で炉内中継装置落下事故を起こしている。

 さらに2012年11月、機構が「安全管理を見直した」と報告していながら、それ以降、重要機器を含めた1万4千点以上の機器で点検漏れが見つかったことから、規制委員会は昨年5月、もんじゅの使用停止を機構に命じ、運転再開に必要な作業を禁止した。

 使用済み核燃料を再処理し、再び燃料として利用する「核燃料サイクル政策」の目玉として期待されたもんじゅは、トラブルや隠蔽などでほとんど運転していないにも関わらず、約1兆円の国費を浪費する金食い虫となっている。核燃料サイクル自体も、再処理における高レベル放射性廃棄物の処分に、まったくめどが立たないなど、数多くの難題が残っている。つまり、技術的にも「破綻」している。

 原発の依存度を下げ、いずれゼロにするということは、必然的に核燃料サイクルも必要なくなる。本来「脱原発」と「核燃サイクル推進」は矛盾する。

 それでも舛添氏が、これを「脱原発」と主張するのであれば、「自民党的脱原発」や「脱原発的原発維持」などと言い換えないと、実際は中身の全く違う「脱原発」が乱立することになり、都民は混乱してしまうのではなだろうか。

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