前中国大使の丹羽宇一郎氏が「新外交イニシアティブシンポジウム」で講演し、尖閣諸島の領有権をめぐる日中間の対立について、「『棚上げ』という言葉はすでに薄汚れている。話し合いを中断すべきだ」と述べた。
(IWJ・須原拓磨)
前中国大使の丹羽宇一郎氏が「新外交イニシアティブシンポジウム」で講演し、尖閣諸島の領有権をめぐる日中間の対立について、「『棚上げ』という言葉はすでに薄汚れている。話し合いを中断すべきだ」と述べた。
■ハイライト
中国側は尖閣諸島の領有権問題を後世に託す「棚上げ」を日中首脳会談に応じる条件としているが、日本政府は「棚上げ」を認めない立場を取っている。丹羽氏は、日中双方が「棚上げ」にこだわらず尖閣問題の議論を中断し、関係改善を急ぐべきだとの考えを示した。
丹羽氏は、尖閣諸島の「棚上げ」が公式な議事録に残っていないと指摘。「発言があったかどうかは、わからない。しかし、公式な議事録に存在していないのは確か。公式な記録にないものを、あるとは言えないだろう」と語り、「領土・主権の問題を話し合いで解決しようとするのは、もう遅い。話し合いは無駄であり、『中断』すべき」と日中関係改善への道を説いた。
丹羽氏は2012年、東京都の石原慎太郎前都知事が尖閣諸島の購入計画を発表した際、「実行されれば日中関係に重大な危機をもたらすことになる」と反対を表明。当時の野田政権は、尖閣諸島に領土問題は存在しないとする日本政府の立場と矛盾するという理由で、丹羽氏の事実上の更迭を決めた。