「シリアへの軍事介入は、そもそも国際法違反だ」。ニューヨーク在住の映画監督、想田和弘氏はこのように語った──。
2013年9月7日(土)現地時間13時(日本時間8日2時)より、ニューヨーク市内で「シリア軍事介入反対デモ」が行われた。3つの市民団体の呼びかけで300人以上が参加し、「Hands Off Syria! (シリアを放っておけ)」などとシュプレヒコールをしながら、タイムズスクエアからブロードウェイを通り、ユニオンスクエアまでのコースを行進。現在の状況を、2003年のイラク戦争と結びつけて反対する人々の姿が多く見られた。
■デモコース タイムズスクエア → ブロードウェイ → ユニオンスクエア
■詳細
https://www.facebook.com/events/357407417726630/
アメリカの上院外交委員会は現地時間の3日、シリアへの限定的な軍事行動を認める決議案を10対7で可決した。この決定を受けて、シリアへの軍事介入に反対する人々がデモ・イベントを行い、参加者は最終的には300人を超えた。
開始後の約1時間半はスピーチが行われ、開催場所のタイムズスクエア前は、各団体の参加者らによる、叫ぶようなコールが鳴り響いた。ブッシュ前大統領とオバマ大統領の写真を並べ、「War Crimes Must Be Stopped (戦争犯罪は止められなければならない)と書かれたプラカードを掲げる人もいた。
現地でレポーターを務めた前田真理氏は、「2003年のイラク戦争と、今年のシリアを組み合わせたプラカードをよく見かける。『イラクの時と同じ過ちを犯すのか?』というメッセージが強く感じられた」と伝えた。また、世界各国のメディアや市民メディアも取材に訪れており、「あちこちで記事や動画をアップロードしている姿が印象的だ」と前田氏は話した。
「シリアを放っておけ」
14時半にデモは出発し、ニューヨーク市立図書館、コリアンタウンなどを通りながら、ユニオンスクエアを目指した。9月に入り、涼しくなってきたものの、当日は最高気温25度まで上がり、前田氏は「蒸し暑さを感じるほどだ」と言う。参加者たちは「USA! CIA! Hands off Syria!(シリアを放っておけ)」などと激しいシュプレヒコールを上げて、コースを練り歩いた。
「Hands Off Syria!Money for Human Needs, Not a New War」と書かれたチラシを手にする人たちも多く、土曜の昼間のブロードウェイということで、観光客へ向けてのアピールも意識したようだ。太鼓やタンバリンでコールをさらに盛り上げる、というスタイルは、日本国内のデモとも類似している。
デモの中には、日本人やシリア人もいる。多数を占めるのは年配者だが、若者の姿も見られた。年配層の中には、ベトナム戦争の頃から反戦運動をしていた人もおり、若年層では、2011年に発生した経済格差への抗議運動「オキュパイ・ウォールストリート」の参加者もいるという。警察による規制は、ほとんどなかったと報告されている。沿道では、スマートフォンで撮影しながら、「Hands off Syria!」というコールに参加する店員などもいた。エンパイアステートビルの辺りでは、より掛け声が大きくなり、「No War Syria!」というコールも加えられた。
「アメリカが『世界の警察』ではない」
シリアからの移民の親子(母親と2人の娘)がインタビューに応え、「自分は、シリアの政府、アメリカの政府、どちらを支持するわけでもない。ただ、これ以上、民間の犠牲者を出さないでほしい」と語った。
別の88歳の女性は「イラク戦争の時から、いつも反戦デモに参加してきた。今では杖を使って参加している」と述べ、「この問題は、国連がもう少し介入すべきだと思う。アメリカが『世界の警察』というわけではない。皆で話し合って解決しなくては。政府は、国民の声を聞くべきだ」と訴えた。「日本の対応について、どう思うか」との質問には、「日本が介入しようが、しまいが、私はすべてのこと(戦争)に反対」と答えた。
ニューヨーク在住のドキュメンタリー映画監督、想田和弘氏は、「なぜ、アメリカは、そんなに戦争をしたいのか。オバマ大統領は、イラク戦争に反対して大統領になったはずなのに」と率直な疑問を述べ、「自衛でもないのに攻撃をするのは、そもそも国際法違反」と断じた。
その上で、想田氏は「日本政府は、集団的自衛権を容認しようとしている。そうなれば、おそらく日本も攻撃に参加することになる。日本は、アメリカの機嫌を取ることばかりしているが、自衛隊員が他国の人々を殺すことになってもいいのか」と、日本政府の対応も批判した。