規制委、新規制基準正式決定 原子力市民委員会が緊急提言 ~緊急提言「原発再稼働を3年間凍結し、原子力災害を 二度と起こさない体系的政策を構築せよ」に関する記者会見 2013.6.19

記事公開日:2013.6.19取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 2013年6月19日(水)11時より、東京都千代田区にある衆議院議員会館にて、原子力市民委員会による「緊急提言『原発再稼働を3年間凍結し、原子力災害を二度と起こさない体系的政策を構築せよ』に関する記者会見」が行われた。原子力規制委員会が、原発の新規制基準を正式に決定したことに対し、座長の舩橋晴俊法氏は「安倍政権の下で『原子力への回帰』の動きが強まっている」と危惧し、座長代理である吉岡斉氏は、安倍総理や規制委の田中委員長などに提出した「3つの緊急提言」を解説し、「先に再稼働ありき」の新規制基準の問題点を説明した。

■ハイライト

  • <発表者>
  • 原子力市民委員会座長 舩橋晴俊氏(法政大学教授)
  • 原子力市民委員会座長代理 吉岡斉氏(九州大学副学長、元政府事故調委員)
  • 原子力市民委員会規制部会長 井野博満氏(東京大学名誉教授、元ストレステスト意見聴取会委員)

 冒頭、舩橋氏から本委員会の設立経緯と、本提言の趣旨の説明があった。「政府は昨年、2030年代に原発稼働ゼロを方針とした。パブリックコメントや世論調査で、その方針は裏付けられる結果も得た。しかし、自民党政権になり、原発の再稼働と輸出に向けて動き始めてしまった。今回、原子力規制委員会から、原発新規制基準が発表された。私たちは、その手続きと内容に危惧を抱いている」。

 続けて、舩橋氏は「有識者、市民との対話がとても不足し、安全性も疑わざるを得ない。われわれは、民間の有識者、専門家によって、それらを分析して緊急提言を作成。安倍首相、文部科学大臣、原子力規制委員会、規制庁などに提出した」と話し、次に、提言の概略や、新規制についての分析結果と、疑問点を、吉岡斉座長代理から説明した。

 吉岡氏は、「今回、提言に『構築せよ』という言葉を、前向きに取り組むという意味で、あえて使った」と前置きをし、3つの提言の概略を説明した。「第1提言。原発ゼロ社会へ向けての政策転換を軌道に乗せる。前政権の原発問題への取り組みを評価し、原発ゼロ社会を目指すためへの法令整備、被災地域の復興と補償問題の解決、過酷事故への対応など見直すためにも、原発を3年間停止するべきだ」。

 次に、第2提言「原子力災害防止システムを建て直す」について、吉岡氏は「原子力規制委員会は、2013年7月18日までに新規制基準を策定し、それにもとづいて既設原子炉の安全審査を行う。おそらく、次々に再稼働認可が下されるだろう。しかし、過酷事故が起こらない、住民被害を招かない、という十分な条件が整ったことにはならない」などと要旨を説明した。

 第3提言「原子炉システムの新規制基準を作り直す」については、井野博満氏が引き継いで解説した。井野氏は、「原発の安全」という言葉に対する検証の必要性を主張。「安全性の内容だけではなく、それを確認する責任者は誰なのか、ということを議論する必要がある。新規制基準は、福島原発事故のような重大事故を、確実に再発させない対応が、なされているかどうか、という視点で行うべき」と見解を述べた。

 次に、新規制基準の策定状況について話した。「活断層の評価方法、津波の審査ガイド、バックフィット、シビア・アクシデントにも法的規制をかけるというので、従来より格段に是正された点はあった」と話し、次の論点「新規制基準案の問題点とその解消の方策」について説明した。

 井野氏は「福島原発事故の実態把握と原因分析が、まだしっかりなされていない。安全規制体系の未完部分,立地審査指針、安全設計審査指針などを見直さず、採用しないという」と新規制基準の課題点を挙げ、さらに、「立地評価を採用しない理由として、『現状の立地条件では(新規制基準に)合わない』という旨の田中委員長の発言があった。これは『ルール違反になりそうだから、先にルールをなくそう』ということに等しい」と指摘した。

 そして、「設計基準事故という項目があるが、この事故の定義に、地震や飛行機の激突などの外部事象を考慮していない、原発の設計基準は、きわめて不十分。また、共通原因故障を仮定した設計基準事故も想定していない」と述べ、「福島原発では、鉄塔崩壊、配電盤損傷による電源喪失が認められたにもかかわらず、外部電源の安全性項目を、耐震Cクラス(低重要度)に分類している。フィルターベントの設置では、放射性希ガスへの考慮がされていない」などと指摘した。最後に、「原子力災害対策指針も、とてもずさんな内容だ」と断じた。

 質疑応答では、日米原子力協定、核廃棄物の問題、参議院選挙の争点から原発問題が外れていることなどについて、質問があった。舩橋氏は「世界で脱原発を目指し、それを実現するために、国際協定も見直していく。日米原子力協定を破棄するとは思わない。現在、脱原発大綱を策定中だ」と答えた。また「参議院の争点に、原子力政策を組み込まないことはおかしい。メディアがこれを軽んずるならば、由々しき事態だと思う」とも答えた。

 さらに、舩橋氏は「原子力規制委員会の独立性が疑わしい。公開討論なども行わず(新基準を決定するなど)、拙速な印象だ」と述べた。吉岡氏は「福島原発事故の教訓を、まったく生かしていない。付属部品を加えればいい、と、旧保安院の路線を踏襲し、再稼働審査をしようとしている」とした。

 井野氏は、それに補足して、「現在の設計基準を見直さず、そこにシビア・アクシデント対策を付け加えた規制基準である。福島原発事故を考慮するなら、根本的な部分から検討しなければ、本当の安全性は確保できない」と明言、具体的な検査内容の欠点を説明した。さらに、原発労働者の問題やメディア報道のあり方、提言の難解さなどについても意見が交わされた。

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