2024年11月21日から、『ロイター』や『テレ朝NEWS』など、多くの西側メディアが一斉に報じたロシアからICBMによる攻撃を受けたというウクライナ軍の発表はディスインフォメーション(国家・企業・組織あるいは人の信用を失墜させるために、マスコミなどを利用して故意に流す虚偽の情報)だった可能性が高くなりました!
- 【速報】ウクライナ軍「ロシアがICBM発射」(テレ朝news、2024年11月21日)
- ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用か(ロイター、2024年11月21日)
ウクライナ軍は、21日、ロシアがICBM「RS-26ルベジ」で、ウクライナ東部の都市、ドニエプルを直接攻撃したと発表しました。
ウクライナ空軍の発表は、次のとおりです。
「2024年11月21日午前5時から7時の間、ロシア軍はドニプロ市(工業施設や重要インフラ)を複数種類のミサイルで攻撃した。
特に、ロシア連邦アストラハン州からは大陸間弾道ミサイル(ICBM)が発射され、タンボフ州からはミグ-31K戦闘機により空中発射弾道ミサイル『キンジャール』(Kh-47M2)が、また戦略爆撃機Tu-95MSからは7発の巡航ミサイル『Kh-101』(発射地点:ヴォルゴグラード州)が発射された。
防空戦闘の結果、空軍の対空ミサイル部隊が『Kh-101』ミサイル6発を撃墜した。
他のミサイルについては、大きな被害はなかった」
21日付『ウクライナ・プラウダ』は、その被害を「ロシア占領軍によるドニプロへの攻撃では、工業施設が損傷し、市内で2件の火災が発生したことが確認されている」と報じています。
- Росiяни вперше вдарили по Украiнi мiжконтитентальною балiстичною ракетою “Рубеж”(ウクライナ・プラウダ、2024年11月21日)
ところが、ロシアのプーチン大統領は、この西側メディアの大騒ぎに対応して、21日、クレムリンからテレビ演説を行い、実は、ドニエプルを報復攻撃したミサイルは、ICBMではなく、欧米のミサイル防衛システムでは迎撃不可能な、マッハ10で飛行する最新型の極超音速中距離ミサイルシステムの一つである「オレシュニク」だったことを明らかにしたのです。
この「オレシュニク」については、性能などの情報が西側では、まだわかっていません。要するに秘密兵器だったのです。
この箇所を、プーチン大統領のテレビ演説から引用します。
「(前略)米国および英国の長距離兵器の使用に対応して、11月21日、ロシア連邦軍はウクライナ防衛産業複合施設に対して複合攻撃を行いました。
また、野戦条件下で、ロシアの最新中距離ミサイルシステムの一つである『オレシュニク』を非核弾頭の極超音速弾道ミサイルとして試験運用しました。
この試験は成功し、予定された目標を達成しました。
ウクライナのドニプロペトロフスク市は、ソ連時代から続く最も有名な工業複合施設の一つですが、現在もミサイルやその他の兵器を製造している施設が攻撃されました。
我々は、米国が中距離および短距離ミサイルをヨーロッパやアジア太平洋地域に配備する計画に応じて、中距離および短距離ミサイルを開発しています。
米国が2019年に根拠のない理由でINF条約を一方的に破棄したことは誤りだったと考えています。
今日、アメリカはこの種の装備を製造しているだけでなく、訓練演習を通じてこれらの先進ミサイルシステムを世界各地、特にヨーロッパに配備する方法を模索しています。
さらに、このような演習の過程で、これらの兵器を使用する訓練が行われています。
改めて言いますが、ロシアは中距離および短距離ミサイルを、自らの意思で、また一方的に、米国製兵器が世界のいかなる地域にも登場するまで配備しないことを約束してきました。
再度強調しますが、NATOの攻撃的な行動に応じて、『オレシュニク』ミサイルシステムの戦闘試験を実施しています。我々の中距離および短距離ミサイルのさらなる配備に関する決定は、アメリカおよびその同盟国の行動次第です。
ロシア連邦の安全保障に対する脅威にもとづき、今後のミサイルシステムの試験で攻撃対象を決定していきます。
我々は、自国の施設に対して、(攻撃してきた当事国だけではなく、その当事国に武器を提供し)、使用することを許可した国々の軍事施設をも、攻撃対象とする権利を有しており、攻撃的行動がエスカレートした場合には、断固として対抗します。
ロシアに対して、軍事的行動を計画している国々の支配層には、これを真剣に考慮するよう強く勧めます。
必要な場合に、報復措置として、ウクライナ領内の中から、『オレシュニク』などで攻撃する標的を選ぶ際に、我々は人道的配慮から、危険区域からの避難を前もって公に提案します。
この情報は、敵にも伝わりますが、それを恐れることなく行います。
なぜ、恐れないのか?
今日、このような兵器に対抗する手段が存在しないからです。
ミサイルはマッハ10、つまり毎秒2.5~3キロメートルの速度で標的に到達します。
現在利用可能な防空システムや、米国が欧州で開発中のミサイル防衛システムでは、このような(超高速の)ミサイルを迎撃することは不可能です。
再度強調しますが、国際安全保障体制を破壊したのは、ロシアではなく、米国です。覇権に固執し続け、戦いを続けることで、米国は世界全体をグローバルな紛争に追い込んでいます。
我々は常に、そして現在も、すべての争いを平和的手段で解決することを望み、またその準備ができています。
しかし、いかなる状況にも対応する準備ができています。
これに疑問を抱く者がまだいるなら、勘違いしないでください。我々の対応は常にあるのです」。
22日付『TASS』によると、ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、「ロシアの極超音速ミサイル『オレシュニク』は大陸間弾道ミサイルではないため、発射のたびにワシントンに通知する義務はない」と記者団に述べました。
しかし、実際には、米国の同様のセンターと常時連絡を取りあっている、ロシアの核脅威削減国立センターの自動警報システムを通じて、「オレシュニク」の発射の30分前に、米国に警告が通知されたことをペスコフ報道官は明かしました。
ペスコフ報道官「自動的に作動し、米国の同様のシステムと常時連絡を取っている核脅威削減国立センターがある。このシステムを通じて、発射の30分前に自動警告が送信された」
米国に通知された警告の内容は明らかにされていませんので、米国側が事前に、ロシアがICBMを撃つのか、新型の極超音速ミサイルを撃つのか、そのミサイルの種類まで知っていたかどうかは不明です。
- Kremlin clarifies notification process for Oreshnik missile launch(TASS、2024年11月22日)
ロシアの元大統領であり、ロシア安全保障会議の副議長であるドミトリー・メドベージェフ氏は、22日午前3時6分(日本時間)に『X』で、「極超音速弾道ミサイル攻撃」の動画を、コメント付きで公開しました。
メドベージェフ氏「そう、これがあなたが望んでいたことでしょうか? そうですね、あなたは見事に手に入れましたね!
極超音速弾道ミサイル攻撃」
- Dmitry Medvedev@MedvedevRussiaE(X、午前3:06・2024年11月22日)
『RT』も22日付で、このメドベージェフ氏の動画を公開しました。
- Medvedev reacts to VIDEO of hypersonic missile strike(RT、2024年11月22日)
モノクロの12秒ほどの動画には、夜の市街地に非常に早いスピードで落下してくる「光の玉」が少なくとも7つ確認できます。街の明かりが明滅している様子から、この画像は早回しになっているのかもしれません。それらの「光の玉」は、5~6個の光が並行して落ちてきています。まったく迎撃されている様子はありません。
ウクライナ空軍は「空軍の対空ミサイル部隊が『Kh-101』ミサイル6発を撃墜した」と述べていますが、Kh-101は音速0.76で、極超音速弾道ミサイルではありません。
動画では、ミサイルの着弾後、大きな火の手が上がるといった様子はみられず、ウクライナ空軍がいうように「大きな被害はなかった」のは、事実かもしれません。
ロシア側は、意図的に破壊力を抑えた弾頭を用いるなどして、実際に破壊するのではなく、「警告」として、なんらかのミサイルを撃ち込んだのでしょうか?
先述した通り、プーチン大統領が言及した新型の超音速ミサイル「オレシュニク」は、実体がわかっていません。
うがった物の見方をすれば、実際に、秘密裏に開発した実在するミサイル・システムかもしれませんが、実は、実在しないミサイル・システムかもしれません。
つまり、ウクライナと西側の、ロシアによるICBM攻撃というディスインフォメーションに対して、ロシアも情報戦で応じた可能性もなくはない、そうした疑心暗鬼が、西側の一部には広がっています。
ウクライナの軍事専門サイト『ディフェンス・エクスプレス』は、22日付で、次のように、この「オレシュニク」を解説しています。
「特筆すべきは、『オレシュニク』と名付けられたロシアのミサイルに関する公に入手可能な情報が一切存在しないことである」。
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