山田正彦元農水大臣「民間の種子に頼ると言いつつ、民間の種子は代表格の三井化学が撤退を決めたということになれば、種子法廃止の根拠はまったくなくなる。そういう主張を今、控訴審でやっている」~9.25 種子法廃止違憲確認訴訟 高裁結審期日・記者レク ―登壇:山田正彦弁護士、田井勝弁護士 ほか 2024.9.25

記事公開日:2024.10.16取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2024年9月25日午後2時より、東京都千代田区の司法記者クラブにて、「TPP交渉差止・違憲訴訟の会(※)」の主催により、10月1日に予定されている種子法廃止等に関する違憲確認訴訟の控訴審第4回期日(最終弁論・結審)に先立ち、元農林水産大臣で、弁護団共同代表である山田正彦氏と田井勝氏による記者レクが開催された。

 この経緯については、ぜひ以下の記事もご一読ください。

  • 米国政府と多国籍企業の意向・TPP条約で成立した種子法廃止法は、国民の食料への権利の侵害だと訴えた「種子法廃止等に関する違憲確認訴訟」の控訴審が結審し、来年2月の判決へ! 最終弁論で40分の意見陳述を行った山田正彦元農水相は、「米の供給不足が完全に解消されるなど、種子法制定当初における国家的要請への対応が完了した」との国側の主張に反論! 農水省の試算によれば「日本では2040年には359万トンもの米不足に陥る」と指摘!「種子法廃止は、私達を飢えに陥れかねない、天賦の権利を侵害するもので、絶対に認めてはならない」と熱弁!!(前編)(日刊IWJガイド、2024年10月7日)
    会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20241007#idx-6
    非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/53982#idx-6
  • 米国政府と多国籍企業の意向・TPP条約で成立した種子法廃止法は、国民の食料への権利の侵害だと訴えた「種子法廃止等に関する違憲確認訴訟」の控訴審が結審し、来年2月の判決へ! 最終弁論で40分の意見陳述を行った山田正彦元農水相は、「米の供給不足が完全に解消されるなど、種子法制定当初における国家的要請への対応が完了した」との国側の主張に反論! 農水省の試算によれば「日本では2040年には359万トンもの米不足に陥る」と指摘!「種子法廃止は、私達を飢えに陥れかねない、天賦の権利を侵害するもので、絶対に認めてはならない」と熱弁!!(後編)(日刊IWJガイド、2024年10月8日)
    会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20241008#idx-7
    非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/53987#idx-7

 この日の記者レクでは、冒頭、田井弁護士より、当該訴訟の経過・概要についての説明があった。

 第1審(東京地裁)において、原告は次の3つの請求を行った。

1.平成30(2018)年4月1日に施行された「種子法廃止法」が憲法違反であり、違憲無効であることの確認

2.原告の舘野氏(一般農家)、野々山氏(消費者代表)、そして菊地氏(採種農家)の3名がそれぞれ、廃止された種子法にもとづく公法上の地位を有することの確認

3.原告らそれぞれ1名について、国に対し、慰謝料1万円の損害賠償請求

 平成29(2017)年の通常国会において、主要農作物種子法が成立し、平成30(2018)年4月1日に施行され、昭和27(1952)年にできた種子法が廃止された。

 原告側は、この種子法の廃止は、「国民の農作物、食の根源である種(たね)を都道府県の管理のもとでつくられなくさせるため『食料への権利』を侵害するものである」と主張した。

 2023年3月24日の東京地裁判決では、「『食料への権利』は、種子法によって具体化されていないため、権利侵害が存在しない」として、原告側の請求はすべて棄却された。

 しかし、「種子法廃止にもとづいて、一定の被害が認められる」として、採種農家の菊地氏の地位についての「確認の地位(原告の確認の訴えを審議する必要性)」は認められた。

 現在行われている東京高裁での控訴審では、種子法は、平成11(1999)年に制定された「食料・農業・農村基本法」に明記された「国民への食糧安定供給」を具現化するものであり、種子法の廃止は「食料への権利」を侵害するものであること、そして、「みつひかり」の不正問題、および、「コメの供給不足」などの問題について主に主張されている。

 山田正彦氏から、「みつひかり」の不正問題などについて、詳しい説明があった。

山田氏「種子法を廃止して、『民間の種子に頼るんだ』と政府は発表して、農水省の公のお金でチラシを作って、全国にばらまいて、『みつひかり』を推奨して回りました。(中略)

 『これは大量に収量があるんだ。例えば、反(たん)あたり11俵以上獲れる』とか言って回ったんです。

 その後、モンサントの『とねのめぐみ』という品種、これもF1の品種(※F1品種とは、収穫した種子を翌年蒔いても、まともに育たず、前年と同じ品質や収量が得られない雑種第1代のこと)ですが、そういった品種を国は推奨して回ったんです。

 ところが、調べてみると、『みつひかり』の生産農家のところに行っても、そんな収量があるわけはないし、味も、『コシヒカリ以上だ』と政府は宣伝したんですが、まったくそうではなかった。(中略)

 そして、昨年の2月、三井化学は、農家に何の前触れもなく突然、『みつひかり』の供給を停止したんです。農家はそれこそパニックに陥りました。(中略)

 ロットによっては発芽率90%以上と記載しながら、実際には、ロットによってはまったく発芽しなかった。しかも、他品種を混ぜて売った。(中略)

 そして、産地も偽造していた。

 三井化学は、それを報告書では認めています。(中略)

 これは、言ってみれば、種苗法違反です」

 山田氏らは、「みつひかり」の栽培農家の調査を要求したが、農水省側に調査をする意向はまったくなく、三井化学は不処分(厳重注意)となった。東京新聞を除いて、この件については、まったく報道されなかった。

しかも、『東京新聞』を除いて、この件については、日本のメディアはまったく報道していない。

 ウクライナ紛争やワクチン問題だけでなく、外資のからむネタならば、何でも避けて通る「報道する責任」より、どこかの愚か者の記者が言い張った「報道しない自由」を行使しているばかりのマスメディアなど、存在価値があるのだろうか?

 山田氏、および、種子法廃止違憲確認訴訟弁護団のメンバーや国会議員らは、三井化学を「種苗法違反容疑」で警視庁に刑事告発した。

 山田氏は、この件について、次のように述べた。

 山田氏「国に反対して、これまでどおり、県が責任をもって、安く農家に優良な種子を3年かけて作って提供することを定める種子条例(主要農作物種子条例)が、現在、35の道県でできています。種子法が廃止されても、今まで35の道県で米、麦、大豆の種子は条例により守られてきたということなんです。

 一方、『民間の種子に頼るから』と言いながら、民間の種子は、代表格の三井化学が撤退を決めたということになれば、種子法廃止が拠って立つ根拠はまったくなくなるのではないか?そういう主張を今、控訴審でやっているところです」

 質疑応答など、記者レクの詳細については全編動画をご確認ください。

■全編動画

  • 日時 2024年9月25日(水)14:00~
  • 場所 司法記者クラブ(東京都千代田区)
  • 主催 TPP交渉差止・違憲訴訟の会

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