2024年7月19日(金)、20日(土)、2日間の日程で、東京都千代田区の明治大学グローバルフロントにて、一般社団法人・アジア連合大学院(GAIA)機構による国際シンポジウム「ユーラシア協調安全保障体制をどう構築するか」が開催された。
1日目は、2つのセッションと来賓挨拶の3部構成で行われた。
第1部は、「米中対立下でアジア地域協力をどう進めるか:パクス・アメリカーナから一帯一路へ」と題し、世界銀行多数国間投資保証機関(MIGA)元長官の井川紀道氏が司会を務めた。
名古屋外国語大学名誉教授の川村範行氏(日中関係学会副会長兼東海日中関係学会会長)は、「中国の長期戦略と米中対立の行方」について、講演を行なった。
横浜国立大学名誉教授の萩原伸次郎氏は、「バイデンか、トランプか、2024年米大統領選の背景に何があるのか」と題し、衰退する米国における、共に不人気な候補による大統領選について、講演を行なった。
一般社団法人一帯一路日本研究センターのシニアフェロー、福山秀夫氏(元日本郵船北京事務所代表)は、「ユーラシア協調安全保障体制をどう構築するか〜一帯一路からのアプローチ」と題し、講演を行なった。
筑波大学大学院人文社会系教授のティムール・ダダバエフ氏(中央ユーラシア特別プログラム長)は、中央アジア諸国の立場から見て、一帯一路構想が、どのような意味を持つのかについて、「ウズベキスタンと中国の協力の展開を中心に」と題して講演を行なった。
また、4人の講演後には、井川氏の司会により、トークセッションが行われた。
第2部は、「『二つの戦争』をどう超克するのか―ウクライナ戦争とガザ戦争の虚構と現実」と題し、元駐オランダ大使・元外務省条約局長の東郷和彦氏が司会を務めて、ウクライナ戦争とガザ戦争について、議論を行なった。
日露関係に詳しい法政大学名誉教授の下斗米(しもとまい)伸夫氏(神奈川大学教授)は、「トランプ優位で高まるウクライナ停戦論」と題して講演を行なった。
ウクライナ問題の第一人者である、外交評論家で元朝日新聞記者の塩原俊彦氏は、「帝国主義アメリカの外交とウクライナ」と題し、2004年のウクライナのオレンジ革命からウクライナ戦争まで米国がどのようにウクライナに関与してきたかについて講演を行なった。
一橋大学社会学大学院の福富満久教授は「イスラエルとパレスチナの未来 中東はどこに向かうのか」と題し、講演を行なった。
第三部では、特別来賓の財団法人東アジア共同体研究所理事長の鳩山友紀夫元総理、国際機関・日中韓三国協力事務局TCS代表・局長の李煕燮(イ・ヒソプ)氏、元駐日インドネシア大使のイーザ・ユスロン氏(インドネシア防衛産業顧問)が、挨拶を行なった。
鳩山氏は、ウクライナ戦争の構図について、「ロシア、中国、北朝鮮という権威主義体制と、ウクライナを含んだ西側の民主主義国家という、いわゆるステレオタイプで冷戦構造的な二項対立の見方が、日本などで強まっている」と指摘し、「こういう見方を進めていきますと、ユーラシアの西側で起きているようなウクライナ戦争を、ユーラシアの東側に飛び火させかねないという意味で、非常に危険な発想ではないかと、私は思います」と述べた。
また、NATO首脳会議で、中国批判が行われたことについて、「ウクライナの戦況が思わしくない中で、西側に共通して嫌われている中国をスケープゴートにしているという印象を、私は受けた」と述べ、「日・米・欧が、中国を、ロシアと北朝鮮の側に追いやるような言動を続けているが、西側は、ウクライナのNATOへの加盟を煽って、ウクライナ戦争の大きな原因を作った。こういった教訓をまったく学んでいないと言わざるを得ない」と、厳しく批判した。
シンポジウムの詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。