2024年5月29日午後6時30分より、東京都練馬区のココネリ(練馬区立区民・産業プラザ)にて、「袴田事件」の袴田巌氏の姉・袴田ひで子さんが、講演を行った。
「袴田事件再審!再審請求人として結審に思うこと」と題されたこの講演は、NPO法人練馬人権センターの2024年度第19回総会の記念講演として行われた。
袴田巌さんの裁判は、5月22日に行われた再審第15回公判をもって結審した。検察側は死刑を求刑し、弁護側は改めて無罪を主張した。判決は9月26日の予定である。
講演でひで子さんは、巌氏が逮捕された1966年から、58年にも及ぶ、検察との闘いについて、次のように語った。
「58年闘って、やっと再審開始になりまして、裁判も15回やりましたが、5月22日に最終の裁判の意見陳述をさせていただきまして、やっと裁判終わったところなんです。
まだ、決着はしておりませんが、9月26日に判決が下されます。
だけど、巌は無実ですから、私は絶対無罪になると思っております。
これは最初からですが、58年前からそう思って闘ってまいりました。長かったですね。
やっぱり58年と言うと、考えてみれば、生まれた子が58歳になって、今に60にならんとしていますよ。私、そんなことを全然考えないで、58年とか(第2次再審請求審で、静岡地裁が拘置の執行停止を決定した、2014年までの)48年間は、ずっと目に見えない権力と闘っておりました。
この1年は、裁判が始まったものですから、やっと『目標』ができたというか、そういう感じでございました。
巌はさぞかしつらかったろうなと思うのは、私たちが知らないこと、知らなかったこと、ただ、警察でひどい目にあったということだけはわかっておりましたが、どんなふうにひどい目にあったか、ということは、わからなかったんです。
それを、書類がいろいろ出てきまして、弁護士さんが読み上げたりして、証拠も出たりしたんです。
それで、『何だ、こんなひどい目にあっているのか』と思ってね。(後略)」
また、ひで子さんは、裁判中の検察側の対応について、次のように厳しく批判した。
「検事さんは3人いたんです。女の検事さんと、男の検事さん2人。お若い方です。皆さん、30代から40代の検事さん。
その検事さんと闘ってるつもりはないと、思っておりました。
私は、もっとその上の、『指令を出す方』と闘っているつもりです。検察庁と闘っている。だから、その検事さん達に文句は一つもない。検事さんなんか恨んだって始まらん。
あの人たち、私は『ロボット』だと思ってます。まあ、東大出の秀才をロボットなんて言っては申し訳ないが、ロボットとしか見えませんでした」。
また、ひで子さんは、最終意見陳述時の検察の態度についても、次のように、自身の感想を述べた。
「最終意見陳述の時にも、『ああだこうだ。ああだこうだ』言うんですね、検察庁は。
あれ、仕事だから言うのか、何だかちょっとわからないけど、ともかく、よくそんなこと言えるなと思うようなことを平気で言うんですよ。
で、こっちも腹を決めましてね。度胸を決めましてね。しっかり聞いておりました。だけど、最後に、『死刑に』というのをね、あれが聞こえなかったんです。
私、ちょっと耳が遠いものですから。たまたま聞こえなかったのか。検事さんが素早く言っちゃったんです。
で、弁護士さんに『死刑って言葉が出なんだね(出なかったね)?』って言ったら、『言ったよ』っていうの。
『ああ、そうですか。じゃあ私、聞きもらしたね』っていうぐらいで、そのぐらい素早く、もぞもぞって言っちゃったんだ。
そういう裁判で、だから、裁判っていうものは、こうして裁判をするものだ、ということは、よくわかりましたの。(中略)
言わにゃいかんで(言わないといけないので)言ったっていう感じで。
『死刑に処す!』って、大きな声で、自信があったら言えばいいのよ。そう思ってるなら。
そう思ってないから、言えなかったと思う。私はそう思っております」。
詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。