【特別寄稿】「飛ぶ鳥跡を濁した」立憲民主・枝野幸男前代表! 緊急事態条項の危険性認識を問うIWJ記者の質問に「排除予告発言」!! 野党第一党党首に求められるのは改憲勢力への対決姿勢の発信力と戦闘力ではないのか!? 2021.12.3

記事公開日:2021.12.3 テキスト
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(取材、文・フリージャーナリスト横田一)

 「これが、野党第一党の代表が新代表への引継ぎ事項として言うことなのか。あまりに器が小さすぎるのではないか」

 こんな疑問が湧いてきたのは、11月12日。枝野幸男代表が総選挙敗北の責任を取って退任会見に臨んだ時のことだ。「記者排除予告発言」のように聞こえる発言があったため、私は思わず「排除発言から生まれた立憲民主党の代表とは思えない暴言だ」と指摘したが、枝野代表は撤回を拒んだ。「飛ぶ鳥跡を濁した」と思うと同時に、「党首としての枝野代表の器の小ささが立憲敗北の主要因」と確信もした。

▲立憲民主党・枝野幸男前代表(横田一氏提供)

 枝野代表の問題発言が飛び出したのは、IWJの憲法改正(特に緊急事態条項)に関する質問への回答。3分を超える質問に対して、枝野代表がクレームとつけるという質疑応答が交わされたのだ。

緊急事態条項の危険性の認識を問うIWJ記者の質問に枝野氏「記者会見というのはあなたさまのご意見を聞かせていただいて、お答えをする場ではない」などと回答拒否!「本質的な問題として、次の執行部に見直しを引き継ぐ」と表明!

 まず、IWJ記者の質問を全文引用する。

IWJ記者「今回の衆議院選挙の結果の責任を取る形で代表辞任とのことでありますけれども、立憲民主の得票数を見ますと2017年選挙では1108万4890票から、今回の2021年選挙では1149万1997票と、40万票増えております。また2014年、民主党時代は得票で977万票でしたから、200万票近く得票を伸ばしたことになります。得票率でも2014年は18.33%、2017年と比較しますと若干ではありますが19.88%から20.00%と増えております。

 減らした議席も14で、15議席の自民党より少ない。なのに、岸田総理は国民から信任を得たと胸を張っているのに、立憲の枝野さんはマスメディアから総攻撃されて責任を過剰に痛感している気がします。

 事前の予想で立憲議席増を勝手に予想しておいて、それが外れたからとバッシングするマスコミの身勝手さに過剰にお付き合いして辞任する必要があるのでしょうか。

 また、今回の選挙では意図的に隠されていましたが、本質的な争点は緊急事態条項を核とする自民党4項目の改憲か、その改憲案に反対かであったことは明らかです。そこから考えますと、来夏の参議院選挙はこの国の命運を懸けた政治の一大決戦となることは明らかです。

 立憲民主党は野党第1党として、そして緊急事態条項を核とする自民党改憲案4項目に反対する改憲反対派として、この国の市民、国民に対して重大な責任を負っているのではないでしょうか。改憲が行われ、自民党案の制限も解除規定もない、内閣の独裁を半永久化する緊急事態条項により、民主制自体が否定されることは明白です。

 このような状況下では、野党第一党の代表に誰が就くかは一党内の人事の問題では済まない、国民的な重大事なのではないでしょうか。

 すでに後継の代表選に名乗りを上げた人物の中には、自民党よりも改憲に貪欲な姿勢を見せる、維新と寄り添うような発言をしている小川淳也議員のような方もいらっしゃいます。この代表人事を誤ればこの国の未来を危うくする、そのような視点で考えなければ立憲民主党は分裂しかねず、結果として改憲派を利することになりかねないと思います。

 代表選にご自身も出馬されるか、自民党総裁選で安倍元総理が高市早苗氏を支持したように、ご自身が後継の候補としてふさわしいと思う人物を指名・支持するか、またそうした際に緊急事態条項は絶対に許さないと、今度こそこの問題を焦点に据えて野党共闘で戦うことを後継者の条件として提示するとか、枝野さんのお考えをおうかがいしたいと思います」

 IWJ記者の質問は、危機感と熱のこもったものだった。枝野代表に対して、この選挙戦では得票数を増やしているのだから、やめる必要はないのではないか! という「エール」も口にしている。

 何よりも緊急事態条項が改憲で導入されることへの真剣な懸念が伝わる質問だった。

 たしかに、ストップウォッチを手にはかれば、時間はやや長かったかもしれないが、問題は長さなのではなくて、内容である。質問のよし悪しは、中身で決まる。以下、その熱のこもった質問に対する枝野代表の回答を全文掲げる。立憲や枝野代表に対する「エール」をこめた「熱」がいっぺんに冷めてしまい、凍りつくような冷淡な回答である。

枝野代表「申し訳ありませんが、後段はあなたさまのご意見だと思います。記者会見というのはあなたさまのご意見を聞かせていただいて、それに対して、むしろそれを、そうすべきだということに対してお答えをする場では私はない。

 ここの記者会見の在り方は4年やらせていただいて、ちょっと次の執行部には引き継ぎたいと思います。少し考え直さないといけないと。あくまでも中立的立場の報道機関の皆さんに対して説明をする場だと私は思っております。

 それを通じた、あなたさまも含めて、国民、有権者の皆さんがいろんなことを判断されるとか、そういったことはあってもいいと思いますが、中立、すいません、実態としては中立でないだろうとかっていろんな話はこちらの思いもありますが、一応、中立的な立場を前提にしている報道機関の皆さんに対する会見と、それでないご意見に対してコメントをしろという話とを一緒にするのはちょっと避けなきゃいけないなと思っておりますので、申し訳ありませんがちょっと本質的な問題として、次の執行部にそこの見直しを引き継ぎたいと思っておりますので、お答え申し上げません」

横田氏の再質問には司会者が介入! IWJ記者の質問に問題があるなら、その場で注意すれば済むことでは!?

 3分間を超える質問は長く感じたが、それでも新代表に引継ぐべき見直し事項があるとは思えなかった。司会者がその場で「もう少し短く」と注意すれば済む話であるからだ。実際、この日の会見でも直前に、私の再質問に司会者が手短にまとめるように求める場面があった。総選挙敗北における枝野代表の責任を問い質した時のことだ。

 そのときの質問内容を、ここで再現する

横田一「野党を含む野党連携がちょっと不十分ではなかったという思いはないのでしょうか。

 例えば、山本太郎代表が東京8区から出馬表明して撤回したことについて、かなり冷たい、突き放すような発言をされたこととか、志位委員長と2ショット写真を撮るのを避けたとか、(共通政策にもとづく)野党連携をやるのだったらもっと本気を前面に出して、反共攻撃に対してもどんどん(共通政策で合意した野党党首)4人並んで街宣をするとか、反論の発信が不十分、やる気がちょっと不十分と見られたという思いはないのでしょうか?」

枝野代表「いろんな見方、いろんな評価あるんだろうと思っていますが、私が一番強く感じているのは、決して閣外協力だなんてやってないし、(共産党と)1つの政権をつくるわけではない。あくまでも限定的に閣外から協力をいただくということにすぎないのに、それ以上に強く、強い近い関係だという印象を与えてしまった力不足、これが最大の反省点です」

横田「その発信が不足していたという思いはあるのでしょうか?」

枝野代表「いや、私は逆、今申し上げたこと。決して(共産党と)1つの政権をつくるわけでもないし、もちろん閣内でもないし、政権そのものに直接コミットするわけでもないにもかかわらず、あたかもそれらが前提であるかのように受け止められてしまった力不足、これが最大の反省点です」

横田「山本太郎代表との…」

司会者「まとめてください。質問ですから」

横田「山本太郎代表の出馬表明と撤回に関する、に対する」

枝野代表「他党との関係の細かいことについて、いろんな経緯の中で出てきていることでありますので、コメントするべきことではないと思っています」

横田「立民の評判を落としたという反省はないのですか?」

枝野代表「個別のいろんな経緯については、それぞれの党にそれぞれの事情がある中でベストを尽くしてまいりました」

司会者「横田さん、そこまででお願いします。じゃあIWJさんお願いします」(前出の質疑応答に続く)

次の記者会見への参加を表明したIWJ記者に枝野氏「それは次の執行部が考えると思います」!!

 私の質問に対しては、司会者がその場で注意をして事なきを得たが、その直後のIWJの質問には司会者がまったく注意をせず、いきなり枝野代表が会見見直しを言い始めたのだ。当然、IWJの記者はこう反論した。

IWJ記者「誤解があるようなのですけれども、私は私の意見を申し上げているわけではありません。

 私どものメディアは、常に市民からいろいろな要請やご意見を頂戴しています。その事実にもとづいて私どもは総合的に、私どもの中で判断しまして、これはやはり野党第1党の方におうかがいするのが筋ではないかというふうに考えた上でこのようにしているわけです」

枝野代表「そういう意見の方がいらっしゃるのは分かるし、あなたさまの報道機関としての社論として、それは例えば新聞社の社説では私たちの考え方と180度違う社説を載せていらっしゃる方もいらっしゃいますが、そういう社の方もこういった場では中立性という立場に立った前提での質問を皆さんしていただいています。

 記者会見というのは、私はそういう場だと思っておりますので、そこを整理しないと記者会見が混乱をすると思っておりますので、そういったことの本質は次の執行部で検討してもらいたいと思っておりますし、私は今の前提そのものが、そもそも選挙の争点はあなたさまが決めることでもなく、トータルとしての総有権者が決めることであって、今回の争点ではなかったというのは間違いありません。

 次の選挙の争点が改憲になるかも、その時点での総有権者が判断することだと思っています」

 先に「質問の後段について、回答しません」と言った枝野氏は、ここで、(危険な緊急事態条項が含まれている自民党改憲4項目が争点だったというIWJの見解に対して)「今回の争点でなかったというのは間違いありません」と回答。改憲勢力が3分の2を実際に超えてしまった以上、改憲発議が現実的な政治日程に上ってしまうのは当然である。それを「今回の(選挙の)争点ではなかったというのは間違いありません」とまで言いきる枝野氏の、政治家としての認識を疑う。本気で言っているのだとしたら、政治家として「失格」だし、それとも、見たくないものは見ないでおく、という現実逃避的な心境なのなら、それはまた問題がある。考えたくないが、大衆のまなざしが改憲に向かうことは、自民党に不利になることであり、それはしたくないし、するわけにはいかないと考えていたのであれば、これは有権者に対する「背徳」ではないだろうか。

IWJ記者「承知しました。中立ということについては、あらためてご見解をお伺いしたいと思います。次の機会に」

枝野代表「次の機会、私ありませんので、すいません」

IWJ記者「(新代表での会見に)参加させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします」

枝野代表「それは次の執行部が考えると思います」

司会者「報道担当として今の議論を受止めて考えたいと思います」

 枝野氏はこれで、表舞台から一応、去ることになるが、次の後継者に申し送りをする、という内容が内容だっただけに、釈然とないものが残る。

 本当に、枝野氏は、「記者の質問が長い」とか「質問に自身の見解や意見が混じっている」などということに目くじらを立てたのか。そこまで器の小さい人物だったのだろうか。

 それとも緊急事態条項の是非という思い政治課題をIWJの記者に突きつけられて、正面から答えるのが「不快」だったのか、どうかなのであろうか。

 もしも後者であった場合、そうしたスタンスまで後継者が引き継がれたならば、立憲民主党に未来はないと思われる。

「中立性」という言葉に鋭く反応した朝日新聞・南彰記者がネットメディアやフリーランス記者の排除の危険性を指摘! 枝野氏は「他の記者さんが迷惑していると聞いている」と発言! 横田氏「排除発言から生まれた立憲民主党の代表とは思えない暴言だ」!!

 ここで枝野代表が口にした「中立性」が曲者だ。この基準(物差し)を使って特定の記者を差別的に排除をすることが可能になるからだ。

 この危険性を私よりも早く指摘したのが、朝日新聞の南彰記者だ。なお南記者は2017年の総選挙も取材、希望の党代表だった小池百合子知事の「排除」発言(リベラル派公認拒否)に関する記事を出していた。

朝日新聞南記者「先ほどの記者会見の在り方の点で1個だけ確認をしたいが、『中立性』という言葉はやはりかなり恣意的な、解釈の幅がありうるものだと思うのですよね。

 もちろん記者会見の在り方自体は、メディアも含めたいろいろな、常にこっちも努力しなくてはいけないところはあるのが、先ほどの引き継ぎという中に、何かネットメディアであったり、フリーランスの人を含めて、排除するということがないのだろうか。そこをちょっと明確にしていただけますか」

枝野代表「別に排除するとかということではなくて、記者会見というのはどういう場なのかと。もちろんいろんな意見の方、こういう意見の人もあるけどどうですか、みたいな話は当然ありうるとは思うのですが、それを延々とお話をいただく場ではまったくないのは間違いないと思っていますので、それは『他の記者さんが迷惑している』という声をたくさん聞いてもおりますし、私もそれは、何と言うのでしょう、ミニ集会か何かで意見お聞きするのは当然聞いてかなければならないのですが、『記者会見の場ではないな』と思うので、そういう整理はきちっとしないと、現場の記者さんがみんな困っているのをこの4年間聞いてきましたので、そこは何とか整理できればなということを引き継ぎたいと思います」

 正直言って唖然とした。4年間も現場記者の文句を聞いていたのなら枝野代表はなぜ、もっと早く注意して改善を求めなかったのか。また多くの記者を困らせた長時間質問が、そんなに何回もあったという記憶もなかった。

 そこで、記者排除予告をしたように見えた枝野代表に対して「今の南さんと同じ質問ですが」と切り出し、次のような質問をした。

横田「これ、はっきり言って記者差別、排除につながる問題発言だと思うのですが、時間が長ければ何分以内にするとか、注意すればいい程度の話を、代表を辞めるときの引き継ぎ事項として投げ掛けるのはいかがなものかと。

 排除発言から生まれた立憲民主党の代表とは思えない暴言だと思うのですが、撤回する考えはないのでしょうか?」

枝野代表「ですから引き継ぎ事項なのです。決定権を持ってない私が問題意識を次の執行部にお伝えするので、どういう判断されるかは次の執行部だと思っていますが」

横田「文書で示していただけますか。具体的に『どういう問題があって、(長時間質問に現場の記者が困るといった)どういう弊害があったから、そういう申し伝えをするのだ』と。

 具体的に根拠のないままに、今のIWJの質問だけで」

枝野代表「実際、先ほどのご発言は完全にご自身やご自身に託されたご意見の開陳の部分が圧倒的長くて、同じことをお聞きになって、私の見解を聞きたいのであれば、まったく1分で済む話だったと私は思っています」

横田「だったら事前に注意して、『今後は控えるように』で済む話で」

枝野代表「毎回、それに対するいらだちはお示しをしてきましたが、代表を離れるのでちょっとはっきりと申し上げただけです」

 毎回いらだちを示してきたというのも、引っかかりを覚えた。「いらだち」はコミュニケーションの手段として正当化されうるのだろうか?記者は、政治家の「いらだち」や「不機嫌」から様々な無言のメッセージを汲みとらなければいけないのか。

 そうすることが当たり前だと枝野代表は考え、そうした「いらだち」から忖度しなかったIWJの渡会記者に対して、あのような剣幕で質問に「回答しない」などと、子どもじみた態度をとるのか。

司会者「報道担当として重く受け止めたいと思います。私の仕切りも含めて総括をしていきたいと思います」

 退任会見後、質問をしたIWJの渡会記者に「これまで、立憲側から『質問を手短にして欲しい』とか要請されたことはあるか」と聞くと、「まったくない」と回答した。

 本当に枝野代表が新執行部に引継ぎ事項として伝えるのなら、現場の記者からクレーム回数や内容や弊害など記した文書を作成、公開するべきだ。

野党第1党党首失格だった枝野幸男代表――憲法改正への危機感欠如と野党共闘の本気度不足

 退任会見に臨んだ枝野代表に対して「野党第一党党首失格だった」と確信した理由は他にもある。総選挙後、加速する兆しが見せ始めた憲法改正に対する危機感が著しく欠如していることだ。IWJの質問の主旨をまるで理解しようとしなかったともいえる。

 むしろ、その改憲阻止についての姿勢を解われたくなかったために、「質問時間が長い」という点に言いがかりをつけて、真正面から回答するのをさけた様に思う。どう考えても、野党第1党の代表として、あるまじき姿勢である。

 改憲による緊急事態条項の危険性について問われて答えることと、質問が長くて、意見混じりだから回答しない、今後の会見のやり方も改める必要がある、などと言い出すことの事の軽重ははっきりしているだろう。もちろん、野党第一党の政治家として枝野氏が答えるべきだったのは、前者であり、改憲への危機感や認識である。

 総選挙で約4倍に議席を増やした「日本維新の会」の松井一郎代表(大阪市長)が来夏の参院選と改憲の国民投票を同日に実施すべきだと提案。大阪府知事の吉村洋文・維新副代表も、岸田政権の本気度が足りないと指摘した上で「自民党は改憲が党是というが、やらない。産経新聞さんは是非そこをよく注目して見て置いて下さい」とうながし、「本気で自民党を憲法改正をするなら付き合います」(11月2日の会見)と述べたのだ。「第二自民党安倍派」と呼ぶのがぴったりと思うほど、維新は自民党以上に改憲に前のめりの姿勢を露わにし始めていたのだ。

▲日本維新の会・松井一郎代表(横田一氏提供)

▲日本維新の会・吉村洋文副代表(横田一氏提供)

 こうした維新トップの発言を受けて、総選挙では改憲にほとんど触れなかった自民党もギアを入れ始めた。甘利明幹事長の後任の茂木敏充幹事長が11月12日、読売新聞のインタビューで改憲論議加速の方針を示し、「『緊急事態条項』創設を優先的に、自民・茂木氏が方針–改憲論議を加速」と銘打って報じられたのだ。

 そこにはIWJが質問した「緊急事態条項」について、茂木氏の考えがこう記されていたのだ。

 「衆院選で憲法改正に前向きな日本維新の会や国民民主党が議席を伸ばしたことを踏まえ、改憲論議を加速し、緊急時に政府の権限を強化する『緊急事態条項』の創設を優先的に目指す方針を示した」(11月13日の読売新聞)。

 この改憲加速の動きに枝野代表はあまりに鈍感だった。しかも「緊急事態条項」というキーワードにも敏感に反応することもなかった。「野党第一党党首として失格だった」と、私が確信したのはこのためだ。

 と同時に、総選挙中から感じていた「れいわ新選組の山本太郎代表の方がよっぽど野党第一党党首らしい」との思いがさらに強まった。

れいわ・山本太郎代表は改憲推進の維新を「火事場泥棒」と一刀両断! 横田氏の質問に緊急事態条項の危険性をわかりやすく19分にわたり解説! 枝野氏との戦闘力の差が歴然!!

 枝野代表退任会見の2日前の11月10日、新宿駅前で街宣をした山本太郎代表は記者との質疑応答で、私の同主旨の質問に対して改憲加速派の維新などを「火事場泥棒」と一刀両断。緊急事態条項の危険性も強調しながら、改憲しなくても必要なコロナ対策はすぐにできると提示した。そして、自民党以上に改憲に前のめりな維新と全面対決する姿勢を、比例復活した大石晃子衆院議員と共に示したのだ。

▲れいわ新選組・山本太郎代表(右)と大石晃子衆議院議員(左)(横田一氏提供)

 私の質問は「維新についてうかがいたいが、選挙が終わった途端、自民党以上に改憲に前のめりで第二自民党安倍派のようになっているが、維新とこれからどう戦うのか、実態を明らかにするのか、大石さんと山本代表の考えを伺いしたい」で、これに対して山本代表と大石氏の回答は、何と19分間にも及んだのだ。

 まず憲法に関する基礎知識の解説をしたのに続いて、憲法が守られていない状況であることを強調。維新などの改憲加速派を山本代表はこう批判したのだ。

 「憲法が守られていない現実を作りだしてきたこの政治の中で、『憲法を変えたい』って、これは盗人が窃盗罪を緩めろと言っているのと一緒なのです。『都合のいいことを言っているな』『まずやるべきことをやるべきだ』という話です」。

 山本代表は、「憲法に関して一言一句、いじるべきではない」という立場ではないが、違憲状態を解消した上で、国民の間で十分な憲法談義が行われる状況を作ることが先決とも強調。そして、「火事場泥棒的に変えるのは図々しいにも程があるだろうなということなのですよ」と改憲加速派に釘を刺したのだ。

 と同時に、先の茂木幹事長や維新ら改憲加速派の目論見も解説をした。IWJが枝野代表会見で取り上げた「緊急事態条項」を旗印に火事場泥棒的に改憲をしようとしているとズバリ指摘したのだ。

 「火事場泥棒的に憲法を変えようとしている奴ら、一体どういうことなのかというと、緊急事態条項です。

 自民党の憲法改正草案、2012年に提出されたもの。つまりは、『自民党は憲法をこう変えますよ』という内容です。その中に今の憲法の中にはないけれども、新しく加えたがっているものがあるのだ。それは何かと言ったら、緊急事態条項と言われているもの、つまりは何かと言うと、総理大臣自身が『今から緊急事態ですよ』と声を上げたら、緊急事態になります。そういう代物なのです。例えば、総理が必要と思えば閣僚と相談をして『今から緊急事態』ということが決められるのだという内容です。

 一番やばいのが、緊急事態の宣言が発せられた時には、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定できる。つまりは国会がいらなくなるということです。国会は何をやるところですか。立法府、ルールを作る場所です。内閣は行政府。行政と立法とは分かれているわけです。

 これが実際に形になってしまって、総理大臣が『緊急事態だよ』という話になったら、立法府の存在を無視して、自分たちでルールを作れてしまうのですよ。これは非常に危険と私は思っています」(山本代表)。

 続いてマイクを握った「維新キラー」の大石氏は、こう補足した。

 「大阪では、維新の本拠地なのですが、医療崩壊がワーストなのですね。コロナによって亡くなった人は全国一位なのですが、どういうわけか関西のメデイアが維新のコロナ対策が上手く行っていると報道するものですから、大阪府知事が吉村さんが非常に人気が高くて、吉村さんの人気で維新が大躍進をしているという状況なのですが、そういったところで本来なら『コロナ対策をまともにやれよ。お金を配れ。給付金配布を早くやれよ。飲食店だけ苛めるな。他の産業の人もダメージを受けているでしょう。だから全産業にお金の補償をしろよ』という話なのですが、そこを(吉村知事は)ケチったまま人気を保っている。

 それで火事場泥棒的に調子をこいて、『自分達がもっと人流を抑えたいから憲法を変えて、みなさんの自由を制限するのだ。これがコロナ対策だ』という訳のわからないことを言っている。まさに火事場泥棒ということですよね」。

 退任会見でのIWJの質問に対して枝野代表が答えるべき内容は、山本代表と大石氏が訴えた「緊急事態条項を旗印にした改憲の危険性」ではなかったのか。新代表への引継ぎ事項は、代表会見の見直しではなく、維新ら改憲加速派への対決姿勢の強化ではなかったのか。

 改憲関連の質問に対する回答を比べても、山本代表と枝野代表の発信力や戦闘力の違いは歴然としている。この差が総選挙でのれいわと立憲の明暗も分けた形にもなった。

 ただしピンチをチャンスに変えることは可能だ。明らかに野党第一党党首失格の枝野代表が退任することで新執行部がスタート。

 その新代表が山本代表と同程度に、緊急事態条項を旗印にした改憲への危機感を抱き、維新や自民の改憲加速派と対決姿勢を打ち出せば、参院選に向けた反転攻勢に転ずることは十分に可能であるからだ。立憲の新代表の対応が注目される。

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