日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)は11月2日の定例記者会見で、憲法改正の国民投票を来夏の参院選の投票と同じ日に実施するべきだとの考えを示した。
同通信の記者の「(憲法改正の)スケジュールについて、いつ頃までに、国民投票を実施すべきだとお考えですか」という質問に対して、松井代表は以下のように回答したのである。
松井市長「僕は、来年参議院までに、改正案を固めて、参議院の選挙と同時に国民投票実施すべきだと思います。そうすると、まさに投票率も上がるし、そのことは選挙の大きな一つのテーマにもなる。だからそこへ向けて、やっぱり、各党は憲法改正案をしっかりだすべきだと思います」
同じ日に、吉村大阪府知事(日本維新の会副代表)の記者会見が行われ、フリーランスの横田一氏が、吉村知事に、同じように、憲法改正について、また、緊急事態条項についてどのように考えているのか、質問した。
この質問に対し、吉村知事は「岸田総理は改憲を本気でやる気がないのでは」と、自民党やその支持者らを口しかけるような、ひねりを加えた回答を行った。緊急自体条項については、「どういう条項が出てくるのかは、分からないので、今の段階では評価できないです」と回答し、巧みに明確な答弁を避けた。
しかし、総選挙の投開票日の翌日に、IWJは、維新の本部に詰めていた尾田元府議に取材を行っている。そこで、尾田元府議は、自民党の改憲4項目に「賛成」、そしてその中に含まれている、期限についても、内容についても制約がない緊急事態条項について、明確に「賛成」と述べたのである。
吉村知事の定例会見では、緊急事態条項の導入についてはぐらかしたが、党としては、しっかりと、緊急事態条項を含む自民党改憲4項目に賛成の立場であることは明らかなのである。
詳細は、是非本記事を読んでいただきたい。
そして、吉村知事の回答に現れた維新の改憲意欲は、並々ならぬものがあり、自民党の熱量を上回っているようにもみえる。
共同通信だけでなく、なぜすべての記者クラブメディアは、勢力拡大が予想された維新の松井代表に対し、選挙前にこの質問を投げかけなかったのだろうか?
また、選挙前にも開票速報でも、自公対維新を含む野党という図式でのみカウントして、改憲勢力(自民・公明・維新・国民民主)と、改憲反対勢力という、この選挙の真の争点である「改憲か否か」という対立図式を示さなかったのだろうか?
すべてが終わってから、こんな質問を投げかけているこの白々しさにメディア総ぐるみの茶番めいたものを感じざるをえない。
- 憲法改正の国民投票「来夏の参院選と同日実施を」 維新・松井代表(朝日新聞、2021年11月2日)
日本維新の会は、衆議院での公示前の11議席から、法案提出権を確保できる20議席を2倍以上上回る41議席を確保した。
- 議案の審査(衆議院、2021年11月2日閲覧)