イスラエル政府とパレスチナのガザ地区を実効支配するハマスの間に、エジプトの仲介で、21日午前8時から停戦が成立した。
今回のイスラエルとハマスの戦闘は、5月10日から始まり、双方の死者は、パレスチナ側で子ども65人を含む232人、イスラエル側で12人となっている。
犠牲者の数に、大きな非対称がある。パレスチナでは65人もの子どもたちがイスラエル軍の爆撃で亡くなったことも痛ましい。
市民エンジニアのモハンマド・マンスールさんは、5月14日に、イスラエル軍の爆撃で殺された子どもたちの衝撃的な画像をツイッターで発信している。
また、レバノンの独立地政学コメンテーターのサラ・アブダラーさんは、パレスチナ側の犠牲の詳細をツイートした。
死者 子ども65人女性39人を含む232人
負傷者 1900人
住居を追われた人 12万人
家屋の破壊 1800棟
学校の破壊 66校
メディアオフィスの破壊 20以上
イスラエル軍による無差別殺戮に世界中から非難の声! 世界各地で抗議デモが開催!
子ども相手でも容赦ない無差別殺戮を行うだけでなくメディアオフィスへの攻撃が20回に及んでいることが際立つ。
日刊IWJガイド5月17日号において、イスラエル軍がAP通信社の報道機関の支局が入っているビルが爆撃された際、「ハマスの関係者がいた」等の理由は嘘で、本当の狙いはメディアを威嚇することにあったのではないか、と記した。その推察は間違っていなかったことを裏づける。
今回のイスラエルのガザ地区への爆撃に対しては、世界中から非難が起こり、パレスチナに連帯するデモや署名運動が展開された。
英国では、英国政府・国会の公式ウェブサイトで、イスラエルに対して全貿易の停止、とくに武器の貿易停止を含む制裁を呼びかけるオンライン署名が、1日で10万筆以上を獲得。5月21日現在、署名は37万筆を越えている。
英国では、市民及び在住者は誰でもこの公式ウェブサイトで署名を募ることができ、1万筆の署名が集まれば政府はそれに返事をする義務が生じる。そして10万筆集まればそのトピックについて国会で話し合うことを検討しなければならない。
英国国会は、6月14日に、この署名について議論することになっている。
アルジェリアでは、5月20日、パレスチナ国旗を掲げて連帯を表明する群衆が街の大道を埋め尽くした。
米国のデトロイトでは、5月20日、25万人以上の人々が、ハイウェイ横の道をパレスチナ国旗を振りながら連帯と抗議のデモ行進を行った。
5月19日には、レバノンのベイルートでも大規模なデモが行われた。
5月18日には、イエメンのサナアでも巨大なパレスチナ国旗を大群衆が運びながら連帯を表明する大規模なデモが行われた。
イタリア・トスカーナ州の都市リヴォルノの港湾労働者連合は、14日、武器や爆発物の出荷がイスラエルのアシュドッド港に向けられていることを知り、「リヴォルノ港はパレスチナ人虐殺の共犯者にはならない」と述べて、積み込みを拒否した。
5月17日には、シカゴで、またグラスゴーで、パレスチナ支持を表明する大規模なデモが行われました。
停戦合意に非常に消極的で「ただ電話をしただけ」の米国バイデン大統領、その「親イスラエルぶり」を『ジューイッシュ・カレンツ』誌が暴露!
米国のジョー・バイデン大統領は、停戦合意に非常に消極的だった。そもそも、オバマ政権時代の副大統領だったときから、一貫してバイデン大統領は、イスラエル寄りの姿勢を見せていた。
2020年1月27日付のジューイッシュ・カレンツ(1946年創刊のユダヤ左翼を代表する雑誌)は、15人のオバマ政権の元閣僚にインタビューを行い、次のようにバイデン大統領の親イスラエルぶりを暴露している。
▲『ジューイッシュ・カレンツ』の当該記事
「(このインタビューからわかったのは)オバマ政権初期の重要な時期に、ホワイトハウスがベンジャミン・ネタニヤフにパレスチナ国家建設の可能性を維持するよう圧力をかけようと考えていたとき、バイデンは他のどの閣僚よりもネタニヤフをその圧力から守ることに尽力したということである」
さらに、ジューイッシュ・カレンツは、2020年12月初旬、民主党の大統領選挙のときに、イスラエルへの軍事援助に条件を課そうするバーニー・サンダース候補の呼びかけを「奇妙だ」と嘲笑って次のようなたとえ話をしたと伝えている。
「これはちょうど、フランスに向かって『我々に賛同しないからNATOから追い出すよ』と言っているようなものです」
バイデン氏は米国にとってイスラエルはNATOと同等か、それ以上の同盟国と認識していることを示した発言だ。
そして、今回のイスラエルとハマスの紛争で、バイデン大統領が行動したのはただベンジャミン・ネタニヤフ首相に電話をかけただけだった。
パレスチナの人々は、地上最大の監獄に生きる! 紛争は、欧米による代理植民地主義の持続の現れであり、イスラエル建国時の「ナクバ(大災厄)」と呼ばれるパレスチナ大虐殺に端を発する!
パレスチナとイスラエルの紛争は、イスラエル建国時に、英米の支持の下に、パレスチナ人に「ナクバ(大災厄)」と呼ばれるパレスチナ大虐殺を行い、暴力的に国家建設を行ったことに端を発しており、この意味では、欧米による代理植民地主義が持続していると見ることができる。
▲1948年パレスチナ-シリア、ダマスカスのジャラマナ難民キャンプ(Wikipedia、Nakba項より)
イスラエル建国時に存在したパレスチナ人への民族浄化を始めて研究したイスラエルの歴史家、イラン・パペ氏は、2017年に出版された『地上最大の監獄(The Biggest Prison On Earth』の冒頭に置かれたエピグラフで、次のように述べている。
「パレスチナの子どもたちにとって殺害や負傷やトラウマは地上最大の監獄の中に生きることでもたらされる」
▲イラン・パペ エクセター大学教授(Wikipediaより)
このイラン・パぺ氏の「ナクバ」の問題について、岩上安身は早尾貴紀准教授に断続的にインタビューし、「ナクバ」の紹介を続けてしている。インタビューシリーズはまだ継続しており、未完となっており、今後も継続していく予定だが、「なぜ、このような暴虐がまかり通るのか!?」と根本的な疑問を抱える人は、ぜひこのシリーズを通して御覧いただきたい。イスラエル建国の始原にある暴力「ナクバ」について、ぜひ、ご理解をいただきたい。
さらに今回、IWJでは、岩上安身のインタビューでもお馴染みの高橋和夫・放送大学名誉教授に直接取材し、今回の戦闘と停戦をどのように見るか、見解をうかがったので次項に掲載する。
なお、岩上安身による高橋和夫名誉教授インタビューのうち関連性が高いものを以下に紹介する。
IWJは高橋和夫・放送大学名誉教授に取材! 高橋名誉教授「バイデンはパレスチナ問題から逃げ回りたいが、パレスチナ問題が追いかけてきたというのが現実」
▲高橋和夫放送大学名誉教授(2020年1月11日、IWJ撮影)
IWJ「今朝8時に停戦が発効されましたが、今回のパレスチアとイスラエルの停戦について、どのように御覧になっているでしょうか。世界的に民衆の反対運動も起き、被害の非対称性も著しく、米国のバイデン大統領はオバマ政権の時代からネタニヤフ寄りだったという報道もあります」
高橋和夫氏「一番強く感じたのはアメリカ民主党の進歩主義的な人たちが強く停戦を求めて、バイデンがその圧力を受けてネタニヤフを説得したということです。アメリカの民主党の中でのイスラエルに対する批判の声の強さが一番大きな印象ですね」
IWJ「バイデン自身は、積極的ではなかったと見ていいのでしょうか」
高橋氏「雰囲気としてはそうですね。電話をしただけですからね。そもそも、バイデンは中東和平はやる気がなくて、駐イスラエル大使もまだ任命していないし、パレスチナ問題の特使も任命していません。
できれば、これは避けて、国内問題に力を注ぎたい。外交においては、中国との対決そしてイラン核合意への復帰ということがバイデンにとっての主要な目標で、パレスチナ問題からは逃げ回りたいと思っていたが、パレスチナ問題が追いかけてきたというのが現実というところです」
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https://note.com/iwjnote/n/nd00420d06ece