「会見は、あなたに答える場ではない」
これが安倍政権の顔として、国民への説明を尽くす立場にある菅義偉官房長官が、質問をする記者に向けた言葉である。そこには権力者のおごりが透けて見える。
官房長官記者会見で、鋭い質問を投げかける東京新聞社会部の望月衣塑子記者に対して、菅官房長官がまともに応じようとせず、司会役が質問を遮るような事態が続いている。
2018年12月には、沖縄の米軍基地移設工事での辺野古の海への赤土投入について尋ねた望月記者の質問を「事実誤認」だとして、官邸が記者クラブの内閣記者会に「問題意識の共有」を申し入れる異例の文書まで出している。
これに対し、日本新聞労働組合連合(新聞労連)は、官邸の意に沿わない記者の選別や排除につながるとして、2019年2月5日に「首相官邸の質問制限に抗議する」という声明を発表した。
- 東京新聞・望月衣塑子記者への官邸からの質問制限!圧力に迎合する一部記者!記者クラブメディア現役記者が官邸権力と内閣記者会の内情を明らかにする!〜岩上安身によるインタビュー 第924回 ゲスト 神奈川新聞・田崎基 記者、新聞労連・南彰氏 2019.2.26
- 菅官房長官会見で「東京新聞の特定の記者」による質問を官邸が「制限」!? 官邸報道室長・上村秀紀氏は「特定の記者」が望月衣塑子記者であることを認め、「排除する意図はない」と口を濁す!IWJが上村氏に直撃取材! 2019.2.6
東京新聞報道局は2019年2月20日、新聞1ページを使って「検証と見解/官邸側の本誌記者質問制限と申し入れ」と題した見解を掲載。その中で、辺野古の埋め立て海域が茶色く濁り、県職員らが赤土を確認していることを挙げて、「官邸側の事実誤認の指摘は当たらない」と反論している。
さらに、安倍首相の「辺野古のサンゴは移植済み」との発言を巡って、望月記者が1分半の間に7回も質問を遮られたことに触れ、「本紙記者に質問妨害や制限を行っているのは明らかだ」と抗議している。
- 検証と見解/官邸側の本紙記者質問制限と申し入れ(2019年2月20日、東京新聞)
また、官邸の対応に疑問を持った女子中学生が、「望月記者への質問制限をやめるように求める署名活動」をインターネット上で始めると、約1ヵ月で賛同者は1万7000人を超えた。
- 東京望月衣塑子記者など特定の記者の質問を制限する言論統制をしないで下さい。(change.org)
2019年3月14日。日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)の主催により、東京都千代田区の首相官邸前にて、「FIGHT FOR TRUTH 私たちの知る権利を守る3.14首相官邸前行動」が行われ、望月記者本人をはじめ多くの報道関係者、国会議員らが抗議のアピールを行った。
MIC議長の南彰氏は、「菅官房長官は、望月記者に対して質問の妨害行為を続け、挙げ句の果てに『この記者の質問内容は事実誤認』とレッテルを貼り、排除しようとしている。官房長官会見は誰のためのものか、どうあるべきか、国民の知る権利はどういう形で守られるべきか、一緒に考える場にしていく」と挨拶した。
望月記者もマイクを握り、「官邸は私の質問を度重なる問題行為とし、問題意識の共有を記者クラブに要請した。これは、私や社への精神的圧力にとどまらず、質問する他の記者の萎縮を招き、報道の自由、国民の知る権利を踏みにじる暴挙である。菅官房長官には文書の撤回を強く求めたい」と話した。