「こんなことは、独裁国家でしか考えられない」――高市早苗総務相の「停波発言」に抗議し、鳥越俊太郎氏らジャーナリスト5人が外国特派員協会で会見~唯一NHKだけが姿を見せず 2016.3.24

記事公開日:2016.4.8取材地: テキスト動画
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(城石 裕幸、記事構成:平山 茂樹、山本 愛穂)

※4月8日テキストを追加しました!

 「政権が考える『公益及び公の秩序』に反する言論・表現の自由は、制限をかけても当然だという発想が、すべての発言・振る舞いの背後に貫かれている。現安倍政権とその周辺にいる人たちによる、メディアをめぐる様々な言動とつじつまが合う」――。

 ジャーナリストの青木理氏は、会見のなかで自民会見草案の第21条2項「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」という条文について、こう述べ、危機感を露わにした。

 この第21条2項については、4月3日放送のNHK「日曜討論」において、高村正彦・自民党副総裁が、「『公共の福祉』を、言い換えただけ」との「持論」を述べたばかりだ。しかし、人権と人権の緩衝材として機能する『公共の福祉』と、公権力が定める『公の秩序』とは、全く異なるものである。にもかかわず、こうした高村副総裁の確信犯的な暴論は、大手メディアでは一切報じられることがなかった。日本のメディアは、なぜこれほどまでに萎縮してしまったのだろうか――。

 2月8日の衆議院予算委員会における高市早苗総務相の「電波停止発言」に抗議するため、3月24日、日本外国特派員協会で、ジャーナリスト5人が記者会見を開いた。会見を行ったのは、岸井成格氏、田原総一朗氏、鳥越俊太郎氏、大谷昭宏氏、青木理氏。いずれも、日本を代表するジャーナリストだ(※TBSの金平茂紀氏は、3月22日に発生したベルギー、ブリュッセルでのテロ事件取材のため、欠席)。

 「なぜ、あんな、ただ大臣がどこかで言った程度、あるいは幹事長代理から手紙が一枚来た程度で日本のメディアは萎縮するのか」――。

 現在の日本における言論環境について、前ニューヨーク・タイムズ東京支局長のマーティン・ファクラー氏らから厳しい質問が出されるなかで、安倍政権下によるメディアへの恫喝と報道現場の萎縮、さらに日本の政治とメディアにおける構造的な問題が、5人の口から語られた。

※IWJでは、2016年3月22日に、岩上安身による鳥越俊太郎氏へのインタビューを行った。電波停止発言から、ベルギーブリュッセル同時多発テロまで、あますところなくおうかがいした充実のインタビューを、ぜひご視聴ください。

※2016年2月29日、東京都千代田区の日本記者クラブで、青木理氏、大谷昭宏氏、金平茂紀氏、岸井成格氏、田原総一朗氏、鳥越俊太郎氏らテレビ放送関係者が、高市大臣の「電波停止」発言に抗議する記者会見を開いた。

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記事目次

■ハイライト動画

高市総務大臣のいわゆる電波停止発言は、黙って聞き逃すことのできない暴言~岸井成格氏 「ジャーナリズムの使命を果たしたことが偏向報道だというなら、真っ向から対決せざるをえない」

▲記者会見の様子(左から、大谷昭宏氏、青木理、岸井成格氏、田原総一朗氏、鳥越俊太郎氏)

 記者会見では、まず冒頭で、岸井成格氏(毎日新聞特別編集委員・TBSスペシャルコメンテーター)が、高市大臣の発言に対する抗議文を読み上げた。抗議文は、以下の通りである。

 「高市総務大臣のいわゆる電波停止発言は、黙って聞き逃すことのできない暴言だ。謝罪して撤回するか、このまま開き直るのか。非常に重要な局面だ。

 発言が憲法と放送法の精神および目的に真っ向から反することは明らかであり、そのことを知らなかったとすれば、担当大臣としては全く失格。知っていて故意に曲解したのであれば、言論統制への布石であり、安倍晋三内閣全体の責任は免れない。どこまでも、この責任を追及していくつもりだ」――。

▲岸井成格氏

 岸井氏は、アンカーを務めた「News23」で、40回にわたって特集を組み、安保法制への批判的な放送を行ったため、政権から「偏向」とのレッテル貼りのターゲットにされたという。実際に、今年3月をもって、岸井氏は「News23」を降板した。これについて、岸井氏は政権からの直接的な政治圧力の存在を否定しているが、その真相は十分に明らかされていない。

 岸井氏は、「政権がおかしな方向に行った時はそれをチェックし、ブレーキをかけるのが、ジャーナリズムの最終的な使命。その使命を果たさなければジャーナリズムは死んだと同じことだ」と、萎縮する昨今の報道に警鐘を鳴らしながら、「その役割を果たしたことが偏向報道だというなら、真っ向から対決せざるをえない」との決意を述べた。

安倍内閣は『平和国家』という看板を外しにかかっている~田原総一朗氏 「政権をウォッチし、間違いを厳しく追及するのがマスコミの役割。偏向や公平という言葉は馴染まない」

▲田原総一朗氏

 次に、田原総一朗氏がマイクを取った。田原氏は「電波停止発言」について、「高市総務大臣がなぜこんな発言をするのか。安倍さんが高市さん以外の女性を相当信頼しているので、『私だってこんなにやっている』という、安倍さんへのゴマすりなのではないか。それ以外に、理由らしいものはほとんどない」と、皮肉を交えながら痛烈に批判した。

 「時の権力・政権に対してそれをウォッチし、どこが間違いか厳しく追及するのがマスコミの役割だ。そこに偏向とか公平とかそういう言葉は、馴染まない」――。

 そう述べた田原氏は、「安倍内閣は『平和国家』という看板を外しにかかっている。これは日本の大きな変化で、ここでマスメディアが厳しく追及するのは当然だと思う」と主張した。

 また、3月いっぱいで、先述の岸井成格氏の他、テレビ朝日「報道ステーション」の古舘伊知郎氏、NHK「クローズアップ現代」の国谷裕子氏が相次いで降板することに触れ、「一種のマスコミの萎縮現象ではないか」と指摘した。

メディアによる権力の批判と、放送法4条に明記された「政治的公平性」とは別次元~鳥越俊太郎氏 「この発言を認めてしまうと将来にわたって禍根を残す。今回この時点できっぱりとケリをつけるべきだ」

▲鳥越俊太郎氏

 続いて発言した鳥越俊太郎氏は、「少し違った角度から問題を考えてみたい」と述べ、次のように話した。

 「近代民主国家では、国家の運営はこの国民から寄せられた公租公課(税金)によって、なされている。この税金の使い道を決めているのは、政権与党と官僚からなる政府だ。国民としては納めた税金が正しく使われているか、当然知りたい。ジャーナリズムが歴史的にそうしたチェック機能を義務づけられ、権利として持たされた。ジャーナリズムによる権力の監視は、いわば、ミッションだ」。

 重ねて鳥越氏は、「ある事象について左右の意見を公平に取り上げる必要があるのは当然だが」と前置きしたうえで、メディアによる権力の批判と、高市大臣が主張する放送法4条に明記された「政治的公平性」とは、全く別次元であると指摘し、「(この二つを)高市大臣は混同している」と指摘した。

 「故意に、あるいは無知によるものか。高市氏は、電波停止に言及したが、この発言を認めれば、将来にわたって禍根を残してしまう。だから、今回この時点で、きっぱりとケリをつけておかなければならないと思う」――。

 そう述べた鳥越氏は、「私の立場としては、この発言は絶対に容認することができない。ジャーナリズム、メディアの歴史からしても、こういうことはありえない」と、高市氏の発言を強く批判した。

こんなことは、独裁国家でしか考えられない~大谷昭宏氏 「国が一つの番組に関して、キャスターが気に入らないから局全体の電波を止めるというのは、近代国家としてありえない話」

▲大谷昭宏氏

 次に、大谷昭宏氏は、「残念ながら、先ほど最終的にメディアの出欠確認をしたところ、これだけテレビカメラが並んでいながら、NHKは来ていない。前回(注1)もNHKは放送しなかった」と指摘した。

 大谷氏は、「NHKは、国民一人一人からの受信料で成り立っている公共放送だ。にもかかわらず、海外のメディアでさえ高い関心を持っていることに、何ら見向きもしない――。この状況を見ていただくだけでも、日本のメディアの現状をわかっていただけるのではないか」と、報道陣に問いかけた。

 また大谷氏は、「世界広しといえども、国が一つの番組に関して、キャスターが気に入らないから『局全体の電波を止める』というような発言をすることは、近代国家としてありえない話だ。それを堂々と国会の中で口にするというのは、極端なことを言えば独裁国家でしか考えられない」と糾弾した。

 そのうえで、大谷氏は、自民党と極右団体「日本会議」との関係についても、危機感を募らせる。

 「不偏不党を求めながら、高市大臣自身は、憲法改正を党是とする自民党員だ。夫婦別姓反対、憲法改正を掲げる日本会議には、二百数十人の自民党員が入っていて、高市大臣はその議員懇談会の副会長でもある。

 そんな人が、大臣の意に沿わないのであれば電波を止めると発言する――。これが日本の言論なんだということを、世界に発信していただきたい」と、外国特派員に向けて訴えた。

 また、NHKに関して大谷氏は、「NHK内部の人に聞くと、国会答弁を必ず政府側答弁で終わらなければいけないと。全部そういう終わり方をしている」と明かし、「それに対して一般市民は、おかしいじゃないかと、お前のところの番組はなんでいつもこういう終わり方をするんだという声を視聴者側から上げていかなければいけない。そういう声を広げていくことが、大きな力になる」と述べた。

(注1)
冒頭で紹介した、2016年2月29日、東京都千代田区の日本記者クラブで、青木理氏、大谷昭宏氏、金平茂紀氏、岸井成格氏、田原総一朗氏、鳥越俊太郎氏により開かれた高市大臣の「電波停止」発言に抗議する記者会見のこと。

『公益及び公の秩序』に反する言論・表現の自由は制限をかけても当然?!自民改憲草案、電波停止発言…政権の意図は一貫している~青木理 「本当に危機的な状況」

▲青木理氏

 続いて、青木理氏が2012年に発表された憲法の自民改正草案に言及した。この改憲草案では、言論・表現の自由を第21条で保障しながら、2項で『公益及び公の秩序を害することを目的とした』場合は認めないとすることで、条件がつけられたものとなっている。

 これについて青木氏は、「(昨今の)現政権とその周辺にいる人たちによる、メディアをめぐる様々な言動とつじつまが合う」と述べながら、「政権が考える『公益及び公の秩序』に反する言論・表現の自由は制限をかけても当然だという発想が、すべての発言・振る舞いの背後に貫かれている」と指摘した。

 「現政権の政策に激しく抵抗する沖縄の新聞は許しがたいから、なかば本気で潰したいと思っているのだろう。同じような理屈で、政策に批判的なTV局の報道に対しても、局の幹部を呼びつけたり、文書を発して脅したり、理屈をつけて放送法を持ち出し、電波停止にまで言及した。これは、一種の恫喝だ」――。

 青木氏はそう述べながら、「特定秘密保護法や高市大臣の発言など、一つ一つのイシューに向き合うよりも、もはや日本における言論・表現の自由の存否をかけた、ある種、正面からの戦いと対峙しなければならない位相に入っていると思っている。これは本当に、非常に危機的な事態だ」と述べ、現状への危機感を露わにした。

安倍首相の声明には、後藤健二さんへのジャーナリズム活動に敬意を示す言葉もなかった~青木理 「他国と比較して、日本ではごく当たり前のジャーナリズムの原則が共有されていない」

 さらに青木氏は、昨年2015年1月30日に、ジャーナリストの後藤健二氏が殺害予告の末、ISに殺害された人質事件に触れた。青木氏は、ISに殺された後藤健二氏のビデオがアップロードされた時の、オバマ大統領と安倍総理の緊急声明を比較しながら、こう語った。

 「安倍総理の声明は『テロは絶対許さない』という勇ましいものだった。一方、オバマ大統領の声明には、『後藤氏は報道を通じて勇気を持ってシリアの人々の窮状を外部の世界に伝えようとした』との一文があった。

 つまり、オバマ氏の声明には後藤さんのジャーナリストとしての活動への敬意の言葉が入っているが、安倍総理の声明にはない。それどころか、シリアへ渡航しようとするジャーナリストのパスポートを取り上げるようなことをしている。にもかかわらず、市民からもメディアからもたいして抗議の声が上がらない」――。

 青木氏は、こうした現状について、「日本では、他国と比較して、ごく当たり前のジャーナリズムの原則が共有されていない」と嘆く。

 青木氏は、「なんでも米国がいいとは思わないが…」と前置きをしたうえで、同時期のケリー米国務長官による「紛争地でのジャーナリストの危険性をゼロにすることはできない。唯一方法があれば、それは沈黙することだ。しかし沈黙してはならない」との発言を引用しながら、「(米国では)政府当局者でも、そんなことを言う」と日米を比較し、「日本における放送法の問題などを、様々なかたちで問いかけていかなければいけない。この会見がその一歩・一助になれば」と会見へ期待を込めた。

日本のメディアは、なぜこれほど萎縮するのか~株価と政権支持率が命綱である安倍政権は、TVによる批判を封じるも…田原総一朗氏 「安倍内閣がどうこうというより、堕落しているのはマスコミ」

 続いて行われた質疑応答では、前ニューヨーク・タイムズ東京支局長のマーティン・ファクラー氏らが質問を行った。

 ファクラー氏は、「中国ではジャーナリストが逮捕されたり、米国でも国家が監視するなど、ある意味日本よりひどい状況だ。にもかかわらず、日本のメディアがなぜこれほど萎縮するのか、そのメカニズムは何か」と問いかけた。

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