2024年5月14日、衆議院で審議入りした地方自治法「改正案」は、国から自治体への「指示権」拡大等を中心に強い批判が集まっている。
同法案に反対する集会が、5月23日、東京都千代田区の参議院議員会館で開催され、多数の国会議員や自治体首長らが廃案を訴えた。
主催(呼びかけ団体)は、平和・立憲・人権をつなぐ全国自治体議員会議、自治体議員政策情報センター 虹とみどり、ローカルイニシアティブネットワーク(LIN‐Net)、NPO官製ワーキングプア研究会。
同法案では、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態」には、各大臣(国)が、都道府県や市町村に「指示」を出せるとする。
この「指示」とは、「助言・勧告」等と異なり、法的拘束力があり、自治体が従わなければ「違法行為」となる可能性もあるという強い措置だ。
国は、改正案は大災害や感染症などの「想定外」の事態に対応するためとしながら、「想定外」の内容は答えられないという。しかし、指示権を行使する「事態」を想定しないのでは、「立法事実(法律の根拠)がない」との批判がある。
おそらく、この「答えられない」事態の中には、「想定外」なのではなく、「想定内」の戦争への対応、という要素が含まれているものと思われる。
国の判断が恣意的に行われる危険性も指摘される。
実は、東日本大震災やコロナ禍を経て、災害対策基本法や新型インフル特措法が改正され、そうした分野では、国の「指示権」発動の条件は、既に拡充されている。
- 地方自治法の一部を改正する法律案(衆議院)
- 災害対策基本法(法令検索)
- 新型インフル特措法(法令検索)
- 【資料4】補足説明資料(非平時に着目した地方制度のあり方関係)(総務省、第33次地方制度調査会第18回専門小委員会、2023年9月11日)
- 【そもそも解説】「指示権」って何?なぜ「地方分権への逆行」?(朝日新聞、2024年5月14日)
また、2000年施行の「地方分権一括法」は、「主従」関係だった国と自治体を「対等」の関係に改めたと高く評価されているが、本改正案は、この流れに逆行する意味でも、強い批判を浴びている。
- 累次にわたる地方分権一括法(総務省)
今回の集会で、保坂展人世田谷区長は、コロナ禍での国の方針・主張だった「(受診条件は)37.5度以上の熱が4日以上」や「PCR検査を拡大すると医療が崩壊する」「無症状の人を検査してはいけない」等の例をあげ、「明らかな間違い」等と指摘し、「国がいつも正しいわけではない」と批判した。
その上で、「災害対策基本法や新型インフル特措法以外の、国の関与が書かれてない分野で、(国の関与を)すべて大風呂敷で受け止める、とんでもない法制」「(有事法制の)事態対処法に書かれていない、自治体の義務や国の関与が、(今回の改正案の対象に)入るのかさえ、国会で答弁がない状態で、成立させるわけにはいかない」と訴えた。
詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。