2024年5月14日、午後18時30分より、東京都千代田区の参議院議員会館にて、「改憲問題対策法律家6団体連絡会(以降、『連絡会』)」、および、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の主催により、院内集会「地方自治法改正案に異議あり!―自治体首長・職員から寄せられる現場からの懸念の声―」が開催された。
この日、国会では、衆議院総務委員会にて、「地方自治法の改正案(※)」についての実質的な審議が始まった。
- 地方自治法の一部を改正する法律案の概要(総務省)
この地方自治法改正案は、第33次地方制度調査会「ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申」(令和5年12月21日)を踏まえたもので、大きく3つの改正が行われる。
1つ目は、「DX(デジタルトランスフォーメイション)進展を踏まえた対応」。つまり、情報システムの適正な利用等、そして、公金の収納事務のデジタル化である。
2つ目は、「地域の多様な主体の連携及び協働の推進」。地域住民の生活サービスの提供に資する活動を行う団体を市町村長が指定でき、指定を受けた団体への支援、関連する活動との調整等に係る規定を整備する。
3つ目は、「大規模な災害、感染症のまん延その他その及ぼす被害の程度において、これらに類する国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における特例」。ここでは、現行の国と地方公共団体との関係等の章とは別に新たな章を設け、特例を規定する。
この3つの改正により、国は以下の4つの行為を行うことが可能となる。
・事態対処の基本方針の検討等のため、地方公共団体に対し、資料又は意見の提出を求めること
・適切な要件・手続のもと、地方公共団体に対し、その事務処理について、国民の生命等の保護を的確かつ迅速に実施するため講ずべき措置に関する必要な指示
・国民の生命等の保護のため、都道府県が保健所設置市区等と行う事務処理の調整のための指示
・地方公共団体相互間の応援の要求・指示、職員派遣のあっせん等
集会では、自由法曹団(※)の田中隆弁護士により、「地方自治法改正案の問題点」と題した講演が行われ、この改正案の問題点について、端的な解説が行われた。
田中弁護士は「安全を理由に、政府に自治体に対する包括的な指示権を与えるというのが改正法案の中心である」とした上で、この改正法案は、(1)地方自治の本旨に反し、団体自治を破壊するものであり、(2)立法事実なき指示権拡大により災害対策を捻じ曲げ、(3)その指示権にまったく限定がなく、(4)自治体を丸ごと戦争態勢に組み込み、(5)明文改憲による緊急事態条項を先取りするものである、と厳しく解説・批判した。
そして、自然災害や感染症、万が一の有事であれ、それは永田町の会議室で起こっているのではなく、事態は現場で起こっているのであり、事態に対処する自治体や職員の声を国会へ届けなければならないと訴えた。(※1)
(※1)「事態は現場で起こっている」という部分は、田中弁護士が、5月7日の衆院本会議での立憲民主党・おおつき紅葉 衆議院議員の「地方自治法の一部を改正する法律案」趣旨説明質疑から引用したもの。
- 【衆院本会議】地方自治法改正法案「国と自治体間の関係を『上下・主従』に戻すことにつながると危惧」おおつき紅葉議員(立憲民主党ニュース 2024.5.7)
田中弁護士による解説の詳細については、全編動画、または会場で配布された以下の資料を参照頂きたい。
集会では、田中弁護士による解説の他に、世田谷区長の保坂展人氏のビデオメッセージの上映、自治体首長・自治体職員からの報告・メッセージ、そして、国会議員からの連帯の挨拶などが行われた。
集会の詳細については、全編動画でご確認頂きたい。