2023年10月3日、日本プロボクシング協会の袴田巌支援委員会が、10月27日からの再審が決定した元プロボクサー、袴田巌さんの無罪早期確定のため、検察に有罪立証方針の取り下げを求めるアピール活動を、東京都千代田区の東京高等検察庁前で行った。
現場では、チャンピオンベルトを持つ多数のボクサーが参加。袴田巌さんの姉の袴田秀子さんと共に、「潔白を示す白いバンデージ」を巻いた拳を上げて訴えた。
アピール後には、東京高検に、有罪立証方針取り下げと証拠開示を求める要請書を提出した。
強盗殺人などの罪で死刑判決を受けた袴田さんは48年間収監されながら無罪を訴え続けた。2023年3月、東京高裁が袴田さん側主張を認め、ついに再審(裁判のやり直し)を決定。裁判で、いよいよ袴田さんに無罪判決が下るかと思われた。
ところが、検察側は再審でも袴田さんの有罪を主張して争うと表明。有罪立証がなければ裁判がすぐに終わるため、「裁判をいたずらに長引かせる」との批判が起こる。ボクシング界も「87歳の袴田さんにこれ以上苦痛を味あわせたくない」と、アピールを行うことになったという。
当日午後1時前に、東京高検向かいの日比谷公園霞門付近に、ボクシング関係者等が続々と集合し、持参の白いバンデージを右拳に巻いた。袴田秀子さんも、生まれて初めて拳にバンデージを巻く姿が見られた。
参加者全員の記念撮影後、東京高検前に移動し、アピールが行われた。
初めに、自らもOPBF東洋太平洋バンタム級王座獲得の経歴を持つ、新田渉世(しょうせい)支援委員会会長が、趣旨を説明。「検察に有罪立証の方針を取り下げる要請を今日したい。もし裁判を争うのであれば、ボクシングと同様、公平なルールで、正々堂々と、証拠をすべて開示してほしい」と訴えた。
袴田秀子さんは、「本当に今日はいい企画だ。私たちの裁判もあと半年で決着がつくと思う。絶対に無罪を勝ち取るため、戦っている。57年戦った。もうこれ以上は戦わないということで、あと半年たてば決着がつく。巌は無罪、無実だ。絶対に無罪を勝ち取っていきたい」と、改めて決意を語った。
続いて、現役や元ボクサー、関係者が次々にマイクを握り、支援の声を上げた。
元WBA世界スーパーフライ級王者の飯田覚士(さとし)氏をはじめ、元日本ライトフライ級王者の本田秀伸氏、元日本スーパーバンタム級王者の真部豊氏、シュウジムの松岡修会長、袴田さんが主人公の漫画(※)を作画した元プロボクサーで漫画家の森重水(もりしげみ)氏等の支援委員会関係者が発言。
(※)袴田さんが主人公の漫画:日本プロボクシング協会制作の「スプリット・デシジョン~袴田巌 無実の元プロボクサー~」。タイトルは、ボクシングで接戦となった際に、3人の審判の判定が2対1に割れた時に使われる用語。同協会ホームページに掲載。
- 袴田事件について(日本プロボクシング協会)
さらに、チャンピオンベルトを抱えた現役のチャンピオンやボクサー、関係者が登場。WBAスーパー・WBC世界ライトフライ級統一王者の寺地拳四朗選手、WBO世界女子スーパーフライ級王者の晝田瑞希(ひるた みずき)選手、日本スーパーウエルター級王者の出田裕一選手、タイ国スーパーフェザー級王者の大場綜(そう)選手、元OPBF東洋太平洋ウエルター級・スーパーライト級・日本スーパーライト級王者の佐々木基樹(もとき)選手、EBISU K’s BOXの山家七恵選手、元日本スーパーバンタム級王者の古橋岳也選手、三迫ジムの加藤健太トレーナー、元WBO女子世界アトム級王者の鈴木菜々江選手、花形ボクシングジムの南健司マネージャーが発言した。
支援団体等からは、袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会の山崎俊樹事務局長、日本国民救援会の瑞慶覧淳(ずけらんんじゅん)事務局長、映画「袴田巖 夢の間の世の中」の金聖雄監督、映画「拳(けん)と祈り」の笠井千晶監督が、それぞれの思いを語った。
その後、ボクサー一同や袴田秀子さんらが白いバンデージを巻いた右拳を東京高検ビルに向けて突き出してシュプレヒコールをあげた。
アピール後には、代表者20名が東京高検に入り、要請書を提出した。
詳しくは全編動画を御覧いただきたい。
IWJは長年に渡り袴田事件について報じてきた。特に直近の2023年の記事については、下記を御覧いただきたい。
その他の袴田事件関連の記事は以下を御覧いただきたい。