「今、ジャニーズ事務所に、僕からこれ以上何かを言うことは、もうないと思います」。
2023年9月8日、元ジャニーズJr.のカウアン・オカモト氏は、前日行われたジャニーズ事務所による記者会見を受け、このように表明した。
オカモト氏は2023年4月12日、この日と同じ日本外国特派員協会(FCCJ)で記者会見を行い、ジャニーズJr.時代に故ジャニー喜多川氏から受けた性被害を告発した。
- はじめに~日本の新聞・テレビが今も取り上げないタブー! ジャニー喜多川氏による性的虐待を元ジャニーズJr.の岡本カウアン氏がFCCJ会見で告発!『NHK』ディレクターの「もし大手メディアが報じていれば、ジャニーズ事務所に入らなかったか?」との質問に「大問題になっていれば、親も行かせなかったし、なかった」と回答!(日刊IWJガイド、2023年4月14日)
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- Alleged Victim of Johnny Kitagawa Speaks Out(FCCJ、2023年4月12日)
それまで英国『BBC』や『週刊文春』がジャニー氏の性加害問題を報じても、日本国内ではほとんどの大手メディアが沈黙を貫いていたが、この4月のオカモト氏の告発がきっかけとなり、この問題がテレビや新聞でも徐々に報じられ、一般に広がっていった。
前日の会見で、ジャニーズ事務所がジャニー喜多川氏による性加害の事実を認め、謝罪と被害者への賠償を表明したことについて、オカモト氏は「心が少し楽になった」と述べた。
その上で、オカモト氏は「しかし、僕を含めた被害者の方々の心の傷は、そう簡単に癒えることはないと、心に刻んでいただきたい」と、ジャニーズ事務所が今後、被害者に向き合っていく覚悟を改めて強く求めた。
その一方、オカモト氏はこの日の会見で、加害者であるジャニー喜多川氏に対して「エンターテインメントの夢を見させてくれたジャニー氏を恨みきれない思いは、世間に『グルーミング』と言われても、今でもある」と述べ、ジャニー氏を強く非難する他の被害者たちとの距離をうかがわせた。
そう語ってジャニー氏やジャニーズ事務所への愛着を示したオカモト氏でさえ、前日のジャニーズ事務所による会見で、「ジャニーズ事務所」という名前を使い続けると明らかにしたことについては「100%変えると思っていたので、びっくりした」と、非常識さに驚きを隠さなかった。
会見の中でオカモト氏は、ジャニー氏から受けた性被害を告発したことの影響について記者に問われ、「一番辛いのは、僕のお母さん」と述べ、涙に言葉を詰まらせながら、次のように語った。
「お母さんがどんな思いで、僕の出来事を聞いて、日々生きているかとか、そういう気持ちも、思うことだっていっぱいある。僕はまだいいんだけど、やっぱりお母さんにはなかなか言えなかった。そういう思いは、2度とさせたくないなと思う。
お母さんも、いろいろと誹謗中傷を浴びた。『おまえの息子は嘘つきだ』とか、『金が欲しいだけだろう』とか、『売名だろう』とか、今でも言われ続けています」。
さらにオカモト氏は、「(ファンに)夢を与えてきたジャニーズ事務所が、裏ではそういうことをしていたというのは、みんなが衝撃だったと思うし、15歳の僕も、やられた瞬間、信じられなかった。何を信じて夢を追いかけていけばいいか、本当に悩んだ」と打ち明けた。
前日のジャニーズ事務所の記者会見で、東山紀之新社長はジャニー氏が犯した罪に対し「鬼畜の所業」と表明し、ジャニーズJr.のプロデュースを行う子会社ジャニーズアイランドの井ノ原快彦社長は、「何てことをしてくれたんだ」と強い怒りをにじませた。こうした東山氏や井ノ原氏の発言と、この日の会見でのオカモト氏のジャニー氏への発言には、明らかな温度差が感じられた。
これについて、記者から質問を受けたオカモト氏は、「彼が作り上げたものの中で、僕の人生の中で大事なものをたくさん得られた。それは大きなことで、消えない」と述べ、「憎しみや恨みをもって、ジャニー氏に何か復讐するというのは、僕の人生にとって無意味なこと。それよりも真実を明らかにし、こうしたことが繰り返されないようにしてほしい」と語った。