性暴力被害から7年「最近やっと『サバイブ』から『生活する』に」。同じ被害者に「時間はかかるが素直に心と向き合い、自分をかわいがってあげて」~7.20最高裁判決言い渡し後の伊藤詩織氏、弁護団による記者会見 2022.7.20

記事公開日:2022.7.21取材地: テキスト動画
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(取材、文・浜本信貴)

 2022年7月20日午前11時より、東京都港区のNS虎ノ門ビルにて、ジャーナリストの伊藤詩織氏による記者会見が行われた。

 伊藤氏は、元TBS記者の山口敬之氏から2015年に性暴力を受けたとして、山口氏に慰謝料など損害賠償を求める民事訴訟を提訴していた。

 最高裁は、7月7日付けで山口氏の上告を退けたため、伊藤氏の性被害を認め332万円の支払いを命じる東京高裁の判決が確定した。

 一方、伊藤氏が著書や記者会見で「食事中にレイプドラッグを飲まされた」と述べたことに対し、山口氏が名誉毀損を訴えたことについては、「的確な証拠がなく、真実とはいえない」とする東京高裁の判決に対する伊藤氏の上告が退けられた。

 これにより、伊藤氏が55万円の賠償を命じられた高裁判決も確定した。

 20日の記者会見は、この最高裁の言い渡しを受けて行われたもの。記者会見には、伊藤氏の他に、弁護団の3人の弁護士が同席した。

 性暴力の被害者が、実名で被害を公表するということは、性暴力により被った自分自身の傷を社会に向けて公表する、大変に過酷な行為である。さらに、根も葉もないデマやバッシングにも晒されることもある。

 伊藤氏は会見で、「公で自分の性被害について語るということは、家族からも反対されましたし、色々な溝が周囲とできてしまった出来事でもありました」と語った。

 毎日新聞の記者は、次のように質問した。

 「以前インタビューなどで、性暴力被害は『乗り越える』ものではなくて、『それと共に生きていく』ものだ、ということをおっしゃっていました。

 そして、今も、そういうふうにして、性被害とともに生きている方がたくさんいて、詩織さんのこれまでの闘いを、そういう方たちが見てきたと思うのですが、今、そういうふうに生きている人たちに向けて、最後に何か伝えたいことがあれば、聞かせていただけますか?」

 この質問に対して、伊藤氏は次のように答えた。

 「本当に、(性暴力被害と)共に生きていくって、他のことでもそうかもしれないけど、『今日は大丈夫』と思う日もあれば、起き上がれない日もあって、その繰り返しで、いったい自分がどこに向かうのか、わからなくなってしまう日もあると思います。

 私も、今でもあるんですよね。ただそういった中で、それに素直に、抗わずに、心と向き合ってみる、というのがここ数年、少しずつできるようになったかな、と。それが、ひとつ、ある意味での『回復』なのかな、と、私はとらえています。

 やっぱり、以前は、そこに向き合うこともできずに、走りつづけていたのですが、最近は、『サバイブ(生き残る)』から、やっと『生活する』に変わってきた気がして、その中でもいろいろなことがあるけれども、そうやって、私たちは多分『トラウマ』と、いろいろな経験と生きていくのかなと思います。(中略)

 とにかく、自分の心に浮かぶことであったり、その気持ちに素直に向き合うこと。すごく、それは大変なことだし、時間がかかると思うんですけど、(中略)自分にはとにかく正直であってほしいし、そこで口をつぐんでしまうと、どこかでそれが苦しくなってきてしまうと思うので、まわりは必死にそれに耳を傾けることが必要だと思います。

 自分の『真実』を信じて、周りからどんなことを言われても、注意されても、ひたすらに自分に耳を傾けるということ。そして、少しでも余裕があったら、自分をかわいがってあげること。私は、一緒にワインを飲んでくれる人がいたり、癒してくれる猫がいたので、ここまで、毎日起きて、今日もこの会場まで来ることができたのですけど。多分、今日は飲みます」。

 記者会見の詳細については、ぜひ全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画

  • 日時 2022年7月20日(水)11:00~
  • 場所 AP虎ノ門11F Aルーム(日本酒造虎ノ門ビル)(東京都港区)

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