性被害・伊藤詩織氏の誹謗イラストをツイートした漫画家はすみ氏に88万円判決「どんな金額でも大きな一歩」と伊藤氏~11.30 伊藤詩織氏によるはすみとしこ氏他2名に対する訴訟提起、判決言い渡し後記者会見 2021.11.30

記事公開日:2021.12.1取材地: テキスト動画
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(取材・文、IWJ編集部)

 2021年11月30日、東京・霞が関の司法記者クラブで、伊藤詩織氏による、はすみとしこ氏他2名に対する訴訟提起、判決言い渡し後記者会見が行われ、伊藤氏と代理人の山口元一弁護士、西廣洋子弁護士が出席した。

 ジャーナリストの伊藤詩織氏が元TBS記者の山口敬之氏による性被害を訴えた件に関して、漫画家のはすみとしこ氏が性被害は虚偽だとするイラストをツイッターに投稿。伊藤氏は、事実と異なり、名誉を傷つけられたとして、はすみ氏に550万円の損害賠償などを、投稿をリツイート(転載)した男性2人にも各110万円の損害賠償などを求めていた。

 同日出された東京地裁の判決は、はすみ氏に88万円、男性2人にも各11万円の損害賠償を命じた。

 はすみ氏のツイートの削除も請求していたが、はすみ氏のツイッターアカウントが停止されたことで請求は取り下げられた。謝罪広告は認められなかった。

 会見で山口弁護士は以下のように述べた。「はすみ氏のツイートに書かれた『枕営業』云々は、山口氏も主張しておらず、端的にデマをイラストにし、伊藤氏の名誉と名誉感情を傷つけたという判決で、評価してよい」「賠償額は、我々は各ツイートに関していくらと請求したが、裁判所は事実上1つのテーマと考えるとして、88万円の認定をした。金額が相当か否かは、日本の名誉棄損全般にかかわる問題なので、この件だけではなかなか(話が)始まらないところがあるが、もう少し多くてもいいのではないか」「謝罪広告が認められなかった点は、はすみ氏のアカウントが停止になり、事実上、問題のイラストが見られなくなったことが、必要ないという判決の基礎になった」。

 伊藤氏は以下のように語った。「判決は直前に受け取ったばかりで、まだしっかり読み込めていないが、主張してきたことのかなり細部まで議論されてきたことは、判決文の量(67ページ)を見ても感じる」「この裁判はイラストを使った私に対する誹謗中傷だった。リツイートについても、きちんと判断が下されたことは、ほかの人の表現でもリツイートは自分自身の表現行為だと認められたのは、今のSNSを使う環境下で大切な判決だ」

 また、伊藤氏が、東大大学院元特任准教授の大沢昇平氏にツイッターで名誉毀損され、110万円の損害賠償を求めた訴訟で、今年7月6日、東京地裁が33万円の支払いと投稿の削除を命じた件で、大沢氏からの支払いの有無を記者が質問した。山口弁護士は「まだない」と回答。伊藤氏は「私は無知だったので、判決が出て裁判所の命令があれば、それが行われるものだと思い込んでいたが、そうでなかった。日本の民事の執行制度の欠陥と考えている」と語った。

 また西廣弁護士は、国会議員の杉田水脈氏が、伊藤氏を誹謗中傷する複数の投稿に「いいね」を押したとして、伊藤氏が220万円の損害賠償を求めている裁判は、すでに結審し、判決言い渡しが来年3月25日に指定されていると明らかにした。

 最後に伊藤氏は「はすみ氏のイラストは今再読してもまだ苦しい」として、「女性が姿、名前を出して、涙の訴えをすれば、周囲はいともたやすく女性を信じてしまう(後略)」というme too運動の「風刺」と称する例をあげた。そのうえで「私個人の話ではすまされない」「日本の法律の中で、救われることの少ない性犯罪被害者が声を上げづらい状況を、『こんな話をしたらこんな目にあう』という、悪い例にはなりたくない。なので、この判決は、どんな金額でも、一つの大きな一歩だ」と判決を評価した。

 詳しくは、全編動画を御覧いただきたい。

■全編動画

  • 日時 2021年11月30日(火)14:00~
  • 場所 司法記者クラブ(東京都千代田区)

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