【IWJ号外】「米国は世界の平和のための力となるべきだ」とする「アイゼンハワー・メディア・ネットワーク(EMN)」に掲載された公開書簡をIWJが全文仮訳! 米国の「良心」が立ち上がった! 2023.5.22

記事公開日:2023.5.24 テキスト
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(文・IWJ編集部)

 IWJ代表の岩上安身です。

 「米国は世界の平和のための力となるべきだ」とする「アイゼンハワー・メディア・ネットワーク(EMN)」に掲載された公開書簡をIWJが全文仮訳しました。

 この公開書簡は「NATOをロシア国境まで拡大する計画と行動は、ロシアの恐怖を引き起こす結果となった」と明確に指摘、「いかなる失格条件や法外な前提条件も設けない即時停戦と交渉を提唱」しています。

 ウクライナへの最大の支援国である米国で、サミット直前の5月16日付け『ニューヨーク・タイムズ』の紙面の5ページ目に、米国の軍事安全保障の専門家14人により「ロシア・ウクライナ戦争による暴力の解決策は、兵器の増強ではなく外交努力だ」とする公開書簡(意見広告)が、全面広告で掲載されました。

 2024年の米大統領選挙に出馬を表明しているロバート・F・ケネディ・ジュニア氏は、18日、この公開書簡が掲載されたことを報じたシンクタンク、クインシー研究所の『レスポンシブル・ステイトクラフト(責任ある国家戦略)』の17日付け記事を引用し、次のようにツイートしています。

 「これら14人の軍事安全保障専門家が、私が何ヶ月も言い続けてきたこと、つまり『米国は世界の平和のための力となるべきである』を肯定しているのを読んで、とてもうれしく思う。米国の悲惨な対ウクライナ政策に対する彼らの批判は、注目に値する」

 『ニューヨーク・タイムズ』に掲載されたのは、「米国は世界の平和のための力となるべきだ(The U.S. Should Be a Force for Peace in the World)」という公開書簡で、「アイゼンハワー・メディア・ネットワーク(EMN)」という軍事安全保障のシンクタンクのサイトに、全文が掲載されています。

 アイゼンハワー・メディア・ネットワーク(EMN)とは、彼らのサイトの公式説明によると、「元軍人、情報機関、民間人の国家安全保障関係者の専門家で構成される組織」であり、このネットワークに参加する専門家らは、「実際の実務経験と長年の持続的な研究・学問にもとづいた、信頼性の高い独立した批判的な分析を提供」するとしています。

 また、「EMNは、今日の米国の外交政策が自分たちや世界をより安全なものにしていないことをますます感じているアメリカ国民の間で、多様なメディアや党派を超えた幅広い聴衆にリーチすること」を目指していると説明しています。

 この書簡に署名した14名の肩書は、退役空軍曹長、元海兵隊士官、退役空軍中佐(2名)、退役陸軍少将、元駐ソ連米国大使、退役陸軍少佐、退役FBI特別捜査官、コロンビア大学教授、元空軍のアラビア語学者、退役国防省分析官、共和党と民主党の4人の大統領の安全保障顧問、退役陸軍大佐(2名)と、錚々たる顔ぶれです。

 前述の『レスポンシブル・ステイトクラフト』の記事は、これら14人のうちの数名について、次のように解説しています。

 「その中にはワシントンの元駐ソ大使ジャック・マトロックも含まれる。アン・ライト氏は退役米陸軍大佐で元外交官。元海兵隊士官で国務省職員のマシュー・ホー氏。そしてレット。コリン・パウエル国務長官の首席補佐官を務めたローレンス・ウィルカーソン大佐。

 その多くは、米国の外交政策や9/11戦争後の政策を長年批判してきた」

 この非常に重要な公開書簡を、IWJは全文仮訳しました。以下、全文をぜひお読みください。米国が主導したG7のコミュニケとはまったく違う、米国の「良心」の存在を実感することができます。

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 「米国は世界の平和のための力となるべきだ

 ロシア・ウクライナ戦争は、紛れもない大惨事となった。数十万人が死亡、または負傷した。何百万人もの人々が避難生活を余儀なくされている。環境と経済の破壊は計り知れない。核保有国どうしの開戦がますます近づき、将来の惨状は指数関数的に大きくなる可能性がある。

 私たちは、この戦争に伴う暴力、戦争犯罪、無差別ミサイル攻撃、テロリズム、その他の残虐行為を遺憾に思う。この衝撃的な暴力に対する解決策は、さらなる死と破壊を保証する兵器の増強や戦争ではない。

 米国人および国家安全保障の専門家として、私たちはバイデン大統領と議会に対し、特に制御不能になる可能性のある軍事エスカレーションの重大な危険を考慮して、外交を通じてロシア・ウクライナ戦争を迅速に終わらせるために全力を尽くすよう強く求める。

 60年前、ジョン・F・ケネディ大統領は、今日の私たちの生存にとって極めて重要な見解を示した。『核保有国は何よりも、自国の重大な利益を守りながら、敵対国に屈辱的な撤退か核戦争かの選択を迫るような対立を避けなければならない。核時代にそのような道を選ぶことは、私たちの政策が破綻している証拠であり、世界に対する集団的な死の願望でしかない』

 ウクライナでのこの悲惨な戦争の直接の原因は、ロシアの侵略だ。しかし、NATOをロシア国境まで拡大する計画と行動は、ロシアの恐怖を引き起こす結果となった。そしてロシアの指導者たちは、30年間、この点を主張してきた。外交の失敗が戦争につながった。今、ウクライナを破壊し人類を危険にさらす前に、ロシア・ウクライナ戦争を終わらせるための外交が、緊急に必要とされている。

・平和への可能性

 ロシアの現在の地政学的不安は、カール12世(IWJ注・スウェーデン王)、ナポレオン、カイザー(IWJ注・ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世)、ヒトラーによる侵略の記憶によってもたらされている。

 第一次世界大戦後のロシアの内戦では、勝利した側に介入して失敗した連合軍の侵攻部隊の中に米軍がいた。ロシアはNATOの拡大と国境での存在を、直接の脅威とみている。米国とNATOは慎重な備えしか考えていない。外交においては、戦略的共感を持って物事を見ようとし、敵を理解しようと努めなければならない。これは弱さではなく、知恵である。

 平和を求める外交官はどちら側につくか、この場合はロシアかウクライナのどちらかを選択しなければならない、という考えを、私たちは拒否する。外交を支持する私たちは、正気の側を選択する。人間性の。平和の」

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