中村竜太郎氏「ジャニーズ事務所がもつ『メディアを沈黙させる力』の背景を明らかにしてほしい」〜5.22 「故ジャニー喜多川氏による性虐待問題等についてのPT」第1回会合 ―登壇:中村竜太郎氏(ジャーナリスト、元「週刊文春」記者) 2023.5.22

記事公開日:2023.5.26取材地: テキスト動画
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(取材、文・六反田千恵)

 故ジャニー喜多川氏による性加害問題が、元ジャニーズ・ジュニアのカウアン・オカモト氏による告発と、英『BBC』による報道をきっかけとして拡大している。

 立憲民主党は5月16日、この問題で、関係者の声を聞く「性被害・児童虐待ヒアリング」を国会内で開催している。カウアン・オカモト氏とともに、やはり元ジャニーズ・ジュニアの橋田康氏が出席し、法務省やこども家庭庁の担当者の前で、性被害の実態を語り、児童虐待防止法の改正を訴えた。

 立憲民主党に続き、日本共産党も5月22日PT(プロジェクトチーム)を開催し、故ジャニー喜多川氏による性加害問題に取り組んでいく意向を表明した。

▲左から小池晃・日本共産党書記局長、元『週刊文春』記者・中村竜太郎氏、吉良よし子参議院議員(PT責任者)

■ピックアップ動画

■全編動画 ※撮影許可は冒頭・質疑応答のみ

  • 日時 2023年5月22日(月)16:30~
  • 場所 衆議院第1議員会館 第5会議室(東京都千代田区)

日本共産党が「故ジャニー喜多川氏による性虐待問題等についてのPT」第1回会合を開催、だがPTの内容は「非公開」

 日本共産党は、2023年5月22日月曜日、午後4時半ごろから、衆議院第1議員会館 第5会議室にて、『週刊文春』の元記者でジャーナリストの中村竜太郎氏を迎えて、「故ジャニー喜多川氏による性虐待問題等についてのPT(プロジェクト・チーム)」第1回会合を開催した。

▲共産党第1回PT。吉良よし子議員が挨拶、主旨説明を行なった。

 小池晃参議院議員・日本共産党書記局長、穀田恵二衆議院議員・国会対策委員長、吉良よし子参議院議員・文教科学委員(PT責任者)、井上哲士参議院議員、山添拓参議院議員・予算委員会、宮本徹衆議院議員・厚生東堂部会長、倉林明子参議院議員らが出席した。PTの座長である宮本岳志衆議院議員は欠席であった。

 PT会合は非公開で行われ、取材は冒頭の挨拶とPT会合終了後の質疑だけに限定された。PT会合の間、取材陣は廊下で待機することになった。PT会合を非公開にすることは事前に通知されていたが、意図は説明がなかった。

 本来は、ジャニー喜多川氏による性加害問題(以下、ジャニーズ問題)の告発者の草分けの1人である中村氏の生の解説こそ、メディアが伝えるべき絶好の機会であり、主催者である共産党側が会合の中身を非公開とするのは、社会的には機会の喪失に他ならない。

吉良よし子議員(PT責任者)「故ジャニー喜多川氏の問題だけにとどまるのか」と問題提起

▲吉良よし子議員「故ジャニー喜多川氏の問題だけにとどまるのか、どういう解決、救済をしていくべきか」

 冒頭、PTの責任者である吉良議員が挨拶をし、『BBC』が報じるまで声を上げなかった日本社会の問題を指摘し、故ジャニー喜多川氏個人の問題だけにとどまるのか、と問題提起した。

 「日本共産党議員団『故ジャニー喜多川氏による性虐待問題等についてのPT』第1回会合をはじめたいと思います。私はこのPTの責任者を務めます、参議院議員の吉良よし子です。どうぞよろしくお願いいたします。

 日本共産党はこの間、性暴力をなくす取り組みとして、痴漢ゼロを求めて政策提言をしたり、国会論戦など、実態調査などをしてきましたが、今回の故ジャニー氏による性虐待というのは、既に十数年前から問題・訴えがあったにもかかわらず、この3月に『BBC』がドキュメンタリー番組を放映するまで、日本社会の中で重大問題とは認識されてこなかった、と。

 ただ、問題の中身としては、子どもたちが被害者になっている問題でもありますし、こうした問題が故ジャニー喜多川氏の問題だけにとどまるのか、どういう解決、救済をしていくべきかというところで、ぜひ、このPTでよく議論していきたいと思います」

元『週刊文春』記者、中村竜太郎氏「1999年当時、性加害の問題を14回に渡ってキャンペーン」

 吉良議員は、元『週刊文春』記者である中村竜太郎氏を紹介した。中村氏は、以下のように自己紹介をした。

▲ジャーナリスト・中村竜太郎氏「(1999年当時)性加害の問題を14回に渡ってキャンペーンを『週刊文春』が行っていた」

中村氏「私、ジャーナリストの中村竜太郎と申します。元『週刊文春』の記者で、約十年ぐらい前に独立したんですけれども、それまでずっと二十年間『週刊文春』で記者をしておりました。

 1999年当時、ジャニーズ、その当時は『ホモセクハラ』っていう言葉で、見出しが付いてましたけど。要は、ゲイのセクハラですね。

 性加害の問題を14回に渡ってキャンペーンを『週刊文春』が行っていたわけなんですけれども。その当時の取材チームの一人であります。同時に、その当時性加害(の被害)を受けた人たちのインタビューをした当事者でもあります。以上です、よろしくお願いします」

 ここで、取材は「頭撮りのみ」ということで、メディアを会議室から退出した後、約1時間にわたってPTが行われた。

▲1995年から『週刊文春』記者として活躍し、2014年に独立した中村竜太郎氏

 中村氏は、1995年から『週刊文春』記者として活躍し、2014年に独立。著作に『スクープ! 週刊文春エース記者の取材メモ』(2016)がある。中村氏の自己紹介にあるように、『週刊文春』がジャニー喜多川氏による性加害問題を告発し、東京高等裁判所(最高裁はジャニーズ側の上告を棄却)で性加害を認定させた時の記者の一人であり、この問題の草分けの一人である。

 中村氏は『BBC』の取材にも応じ、性加害問題は認定されているのに『週刊文春』による告発から23年間も日本の社会が沈黙してきたことについて「日本の中では男性と男性が恋愛するとか、性交渉を結ぶことについては、はなから信じていないというか、そういう見方、偏見があったと思います」と語っている。

PT会合終了後の質疑:吉良議員「23年間放置されてきた中村氏と被害者らの絶望」が最も印象的だったと述べる

 PT終了後、議論された内容の概要について、ぶら下がりで吉良議員が各メディアの質問に応えた。

 代表カメラのフジテレビは、「PTの感想と、新たに理解が深まった点」について質問をした。吉良議員は「23年間放置されてきた中村氏と被害者らの絶望」が最も印象的だった、ジャニーズ事務所が持っていた「メディアを支配する力」の実態の検証の必要性もご示唆いただいた、と答えた。

吉良議員「今日は中村竜太郎記者から、お話をうかがいましたけれども、やはり印象的だったのは、『BBC』の取材のときにも話されていたことだということですけれども、99年に14回取材をした時から23年間ですね。この問題が放置されて、23年間、(中村氏は)絶望したままにされているんだと、被害者を含め。というところが、放置されてきたことへの絶望が語られた、ということが一番印象的でした。

 例えば、2003年に名誉毀損の裁判で、名誉毀損を認められたものの、その一方で、ジャニー喜多川氏の性加害の事実も、最高裁の中で認定されたにもかかわらず、その際にも大きな報道は一切なく、新聞でもベタ記事しか出ない。

 そういう中で握りつぶされてきたことへの理不尽というのが語られたと同時に、改めて、この次の世代に同じことを繰り返さないために、政治で超党派で力を尽くしてほしいなということを言われたことも印象的ですし、やっぱりその立場で頑張らなければならない。

 もう一点は、やはり性加害の問題だけではなく、先ほどのメディアが沈黙をしてきてしまった問題についても、メディアをも支配する力を持っていたのではないかと、ジャニーズ事務所が。その実態についても検証する必要がありますね、という示唆をいただきました。

 やはりこうした問題を2度と起こさないためには、芸能界全体の問題であったり、そしてジャニーズ事務所の問題であったり。
そして、同時に、性暴力、性加害の問題にどう取り組むかという、多面的に検討して、追及していかなければならないなっていうことを今回、感じました」

PT会合終了後の質疑:吉良議員「(児童への性加害、グルーミングなど)多角的な措置が必要」

 続いて、フジテレビ記者から次の共産党PTの動き、立憲民主党との連携などについて問われ、吉良議員は、明確な日程などはまだ決まっていないこと、立憲民主党が進める児童虐待防止法の改正案等の動きなどと、国会等で取り組みを求めていきたいと回答した。吉良議員は「けれども、それだけでいいのかどうかということも含めて、多方面で検討していきたい」と付け加えた。

 日本テレビ記者は、超党派で法整備をする具体的な内容について話があったかどうか、質問した。

 吉良議員は、中村氏から具体的な法的提案があったわけではないが「子供が被害にあっている問題」であるので、「被害者がこれ以上出さない立場で、超党派で取り組んでいただきたい」というお話があった、と回答した。

 また、吉良議員は、具体的な動きはまだないが、児童虐待防止法の改正案を進める立憲民主党などと「同じ問題意識持っていると思っております」と述べる一方、「本当に児童虐待防止法だけで済む話かというと、決してそうではないと思ってます」と述べた。

 吉良議員は、「グルーミング(※IWJ注)」などについては刑法改正にも関わってくる問題であり、芸能界でのフリーランスの立場や契約関係も問題だと指摘した。

 「多角的にどういう措置が必要で、どういう措置が効果的なのか、何よりも被害者救済に必要な手立てをということで、超党派で取り組んでいきたいな、と思っております」

(※IWJ注)グルーミング:一般には動物の毛繕いを指す言葉だが、ここでは「チャイルド・グルーミング」、性加害の意図を持った大人が、児童や若年者の親近感・信頼を得る行動をした上で、性加害に同意するように誘導・強要することを指す。被害者の信頼感や羞恥心を巧みに利用して性加害が行われるため、発覚しにくくなる。

PT会合終了後、IWJ記者は「メディアを沈黙させる力」の背景について議論があったかどうか質問

 IWJ記者はジャニーズ事務所が持っていた「メディアを沈黙させる力」の背景について、中村氏が言及したかどうかを質問した。吉良議員は中村氏から言及はあったが、むしろこれから国会で追及すべき問題だという意見であったと回答した。

▲第1回PT会合終了後、質疑に応じる吉良よし子議員

IWJ記者「『故ジャニー喜多川氏の性加害問題』なんですけれども、『メディアを沈黙させる力』を一介の芸能事務所が持っていた、ということになるわけですけど。その背景にある『力』について、今日はお話しに出たでしょうか?」

(…会員ページにつづく)

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