2023年3月15日、衆議院経済産業委員会で「GX推進法案」の審議が開始された。同法案は、原発の再稼働や運転期間延長、新増設や建て替えを含む「GX推進戦略」実現のため、「GX経済移行債」発行(20兆円規模)や「GX推進機構」設立を謳う。同法案は、早ければ24日にも衆議院で採決される可能性があるとされ、切迫した状況にある。
さらに3月末には、「GX脱炭素電源法案」(原子力基本法など5つの法律の改正案を束ねた「束ね法案」)の衆議院での審議入りが予想されている。この法案では、原発の運転期間延長の方法や、その決定権を原発推進側である経産省に移すことを規定する。
原発回帰が猛然と進む、緊迫した状況を前に、国際環境NGO FoE Japanが、これら法案を市民の力で廃案にするためにオンラインセミナーを開催した。当日使用資料は、下記で閲覧できる。
- 【オンラインセミナー】原発GX関連法案、国会へ! 私たちにできることは?(第3回)(FoE Japan、2023年3月22日)
セミナーでは、初めにFoE Japanの満田夏花(かんな)氏が、採決が迫る「GX推進法案」を取り上げ、「GX推進法案を通してはいけない5つの理由」として、以下をあげた。
1. 原子力産業を長期にわたり官民資金で支援
2. 経済産業省への白紙委任
3. 脱炭素基準、環境・人権配慮基準の不在
4. 将来世代を含めた国民が負担し、排出者を利する
5. 資金の流れが不透明、監視、検証ができない
- GX推進法案を通してはならない5つの理由(FoE Japan、2023年3月22日)
続いて、原子力資料情報室の松久保肇氏が、まず日本の原発の現状を説明した。
原発が日本の発電量に占める割合は再エネより圧倒的に低いことや、稼働期間を延長しても、放射性廃棄物の保存容量が数年で一杯になり停止せざるを得ないこと。原発で電気代が安くなるという主張の欺瞞。原発推進に費やされる膨大な税金。稼働がままならない原発は電力需給逼迫の解決策にならないこと。さらに、発電コストが再エネと原発で逆転し、CO2削減コストも跳ね上がっていることなどである。
その上で松久保氏は、政府のGX推進方針の問題点を、逐一指摘していった。
その後、FoE Japanが市民から国会議員への働きかけを訴え、質疑応答を経て、参加者間のグループディスカッションが行なわれた。
満田氏と松久保氏の説明部分は、追ってYoutubeチャンネルにアップされる予定とのことである。
なお、IWJは、「GX脱炭素電源法案」(束ね法案)をはじめとする原発の問題を、シリーズで取り上げている。
- はじめに~<特集! 福島第一原発事故から12年、進む事故への危機感と恐怖の記憶の風化! 他方、急激に高まる原発×戦争リスク!>原発の60年超の運転延長を含む法改正案を閣議決定! この法改正で最悪の部分は経産省が安全規制権限を強奪したところ! IWJは河合弘之弁護士と原子力規制庁に直接取材!(日刊IWJガイド、2023年3月5日)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51961#idx-1
https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230305#idx-1
下記記事では、運転期間延長に関する国会での論戦を、詳細に分析している。ぜひ御覧いただきたい!
- <シリーズ特集! 福島第一原発事故から12年、進む事故への危機感と恐怖の記憶の風化! 他方、急激に高まる原発への武力攻撃リスク!>GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案は、「第2の安全神話」の始まり! 立憲民主党の辻元清美参議院議員と岸田総理が参議院予算委員会で対決! IWJは、両者の議論のすれ違いを読み解き、政権側の「世界的なエネルギー危機」という原発運転期間延長の根拠が福島原発事故には及ばないことを分析!(日刊IWJガイド、2023.3.7号)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51973#idx-6
https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230307#idx-6