安倍晋三元総理が旧統一教会信者の息子・山上徹也容疑者に銃撃されて死亡した事件から、ちょうど2ヶ月が過ぎた2022年9月8日。自民党は、旧統一教会と党の国会議員との関係についての内部調査結果(自民党は「点検」と称し、議員からの自己申告制とした)を、議員の実名入りで発表した。
自民党国会議員379人のうち、旧統一教会と何らかの接点があったのは179人、選挙に関する支援を受けた議員は19人だという。この数字は果たして正確なのか、あるいは氷山の一角なのか――。
2022年9月9日、岩上安身は、全国霊感商法対策弁護士連絡会代表世話人の山口広弁護士への2回目となるインタビューを、東京共同法律事務所で行なった。
この自民党の内部調査について、山口弁護士は、「信用性がどこまであるか不明だが」と前置きをした上で、岸田文雄総理が全国の自民党の議員たちに「統一協会と縁を切れ」と指示したことは評価したいと述べた。
信者たちは、このような政治家の発言に影響を受けやすく、たとえば、安倍氏が統一教会の教祖に「敬意を表します」などと言えば、信者たちは「やっぱりそうか! 地上天国実現のために、もっと献金しなきゃいけない」と考えて、被害が拡大してしまう。今回の岸田総理の「縁を切れ」発言は、多少なりとも信者たちを覚醒させ、新たな勧誘や新たな献金の抑止になる、と山口弁護士は言う。
岩上安身が、「それなら、安倍元総理の国葬など、やってはいけないですね」と聞くと、山口弁護士は、「国葬は、統一教会にとってかなりプラスになる。霊界にいる安倍晋三先生を国をあげて賛美した、ということになれば、ひいては統一教会を賛美したという風に、内部的には宣伝に使われる。それが心配だ」と話した。
なお、安倍元総理の「国葬」は、岸田内閣の閣議決定のみで国会による承認を求めることもないまま、9月27日に東京の日本武道館で行われた。参列者は4183人、献花に訪れた人は約2万3000人であった。
自民党が公開した統一教会と関わった議員リストの中には、岸田総理自身の名前はない。しかし、統一教会問題を追及しているジャーナリストの鈴木エイト氏は、8月9日、岸田総理が統一教会幹部の光永一也氏と並んで、にこやかに写っている写真(撮影日など詳細は公開されていない)をツイッターで公開した。鈴木エイト氏によると、光永氏は広島区三原教会の教会長などを歴任している。
これについて山口弁護士は、「こういう人物だと知らないまま、写真を撮ってしまった可能性もあるとは思うが、撮影の経緯を明らかにしてほしい」と述べた。この写真もまた、使いようによっては、教団にとって権力との結びつきをアピールする格好の材料になるからだ。
『朝日新聞』が8月下旬に実施した調査では、与野党含めて旧統一教会や関連団体との接点を認めた議員は447人(国会議員150人、都道府県議290人、知事7人)いる。
岩上安身が、「都道府県議や市区町村議員まで、統一教会汚染は全国津々浦々まで広がっている」と話すと、山口弁護士は、「本当に恐ろしい。統一教会の第一の目標は『教祖が王様の国を作る』こと。それこそが『天一国』という統一教会の目指す国家だ。議員は日本国民のために働くはずなのに、どっちを見て政治をやっているのか。統一教会は正体を隠して候補者などにアプローチするので、立候補する先生方は気をつけていただきたい」と警鐘を鳴らした。
- 「安倍元総理銃撃事件を山上容疑者の私憤による凶行だと片付ければ、その問題提起が一切無駄になる」!~岩上安身によるインタビュー 第1087回 ゲスト 『となりのカルト』著者 榊あまね氏 2022.8.5
- 「文鮮明の生まれたメシアの国である韓国を蹂躙した罪をつぐなうのは日本人、特に日本女性が負うべき罪」~岩上安身によるインタビュー第1088回 ゲスト 『となりのカルト』著者 榊あまね氏 2022.8.9
*本文中の「統一教会」は、現在の世界平和統一家庭連合を指しています。教義の本質も、活動実態にも大きな変化はないため、IWJでは「統一教会」との呼称を用いることとします。