2022年4月25日にロシア国営テレビ『チャンネル・ワン』の番組『ビッグゲーム』で放送されたセルゲイ・ラブロフ外相へのインタビューを、ロシア外務省が、テキストにしてホームページに掲載した。
このインタビューの中で、ラブロフ外相は、「第三次世界大戦」「核戦争」の危機について、バイデン政権との間で行われてきた戦略兵器削減条約の延長に関する話し合いを、米国側が放棄したと述べ、米国の単独覇権主義と、米国だけは自分達の「ルール」のもと、「何をしても許される」という「例外的な国家」観をもっていることを批判している。
さらに、国連安保理常任理事国5か国からロシアを排除しようとする動きに対し、ロシア側の反論と批判を展開し、ウクライナとの和平交渉の場での、ウクライナ側の不誠実な対応を明らかにしている。
ラブロフ外相の、こうした主張は、西側では、当然ロシア側のプロパガンダと受けとめられ、耳を傾けようともしないことが容易に予想できるが、その主張には、歴史的な奥行きと視野の広さがあり、新たな知見も得られる。耳を傾ける「価値」も「意味」も十分にある。
ロシアを「敵方」とみなすならばなおのこと、そのロジックを知らなくてはならない。
「彼を知り、己を知れば、百戦危うからず」とは、「孫子・謀攻編」に出てくる有名な格言である。「敵(ロシア・中国他)について何も知らず、味方(米国・ウクライナ・NATO他)についても「幻想」しか知らず、己(日本)についてはもっと知らず」では、戦争をするとかしないとか、勝ち負け以前に、生き残ることすらできない。
日本のマスメディアが、そろいもそろってウクライナ寄り、反ロシアの方向に「情報操作」を行っているということは、皆さまご存じの通りだが、誰を騙しているかといえば、いうまでもなく、彼らは自分自身と我々日本国民を騙しているのである。
自国のメディアに目隠しをされていては、戦うことも逃げることも生き残ることもできない。
また、なぜ日本のマスメディアは、米国の戦略や国益のために横並びで動くのか、そこも不可解過ぎる。
IWJは、「敵」を知り、「味方」と「己」を知るためにも、ロシアの「知将」ともいうべきベテランの外相、ラブロフ氏のインタビューテキストを、独自に仮訳し、4回に分けて、お届けしている。今回はその第2回である。
第1回は、下記で御覧いただける。会員の方はアーカイブにて御覧いただきたい。会員登録がまだの方は、急ぎ会員登録をお願いしたい。
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この第2回では、ラブロフ外相が米国やNATOに対して大きな不信感を抱いていることが伝わってくる。
ラブロフ外相は、NATOがウクライナに武器を提供し「火に油を注ぐ」ことで「紛争を長引かせ、ロシアがますます苦しむように、ウクライナ人に最後の一兵までロシアと戦うことを強要しようとしている」と批判している。
興味深いことだが、これは、レーガン政権の外交アドバイザリーを務めた保守の論客・ダグ・バンドゥ氏の論文「ワシントンはウクライナ人が最後の1人となるまでロシアと戦う」というタイトルと同じ言葉づかいの批判である。IWJは、このダグ・バンドゥ氏の論文を仮訳しているので、ぜひ御覧いただきたい。
西側がウクライナに武器を送り込んでいるのは、紛争以前からだ。ラブロフ外相は、ロシア嫌いの米欧が、ドンバス地域での紛争のためにウクライナに武器を送り込み、ウクライナをNATOに加盟させようとしていることが、ロシアにとって直接の脅威であり、「争点」だと指摘している。
侵攻前、ロシアは「政治的・軍事的なブロックを拡大することなく、すべての国の安全保障を一括して提供する方法」として、条約案を提案したが、米国とNATOはこれを拒否した。
ラブロフ外相は、NATO拡大の目的を「米国の指揮下にある領土を搾取」し、「一極集中の世界を強化し、永続させようとすること」だと批判している。
そして、自国の利益が脅かされていると判断すると、国際法や国連憲章を考慮することなく、自分達に都合の良い独善的なルールで民間人を爆撃する米国の「例外的な国家」観こそが問題だと非難しているのである。
詳しくは、記事本編を御覧いただきたい。
また、米国の持つ「例外主義」について、岩上安身は2022年4月4日、ジャーナリストの大野和基氏へのインタビューの中で説明している。ぜひ、こちらも御覧いただきたい。
また、ラブロフ外相が語っているウクライナ侵攻前の情勢については、理解を深めるために、ぜひ岩上安身による孫崎享氏インタビューもあわせて御覧いただきたい。
- 「米国の方が現状変更」!「東の『台湾有事』危機と西の『ウクライナ有事』危機が同時に迫る!(続編)」~岩上安身によるインタビュー 第1067回 ゲスト 元外務省国際情報局長 孫崎享氏 2022.1.31
- ウクライナ東部独立は悪? 東の「台湾有事」危機と西の「ウクライナ有事」危機が同時に迫る!(第3回)~岩上安身によるインタビュー 第1068回 ゲスト 元外務省国際情報局長 孫崎享氏 2022.2.18