(再掲載)核燃料再処理工場のある六ヶ所村で「想定される地震はマグニチュード8クラス」!? 浜岡原発も危険すぎる!! ~岩上安身によるインタビュー 第889回 ゲスト 変動地形学研究者・渡辺満久東洋大教授 2018.7.17

記事公開日:2018.7.19取材地: テキスト動画独自
このエントリーをはてなブックマークに追加

(文:栗原廉)

※全編映像は会員登録するとご覧いただけます。 サポート会員の方は無期限で、一般会員の方は記事公開後の2ヶ月間、全編コンテンツがご覧いただけます。
ご登録はこちらから
※2018年9月30日、テキストを追加しました。

 大阪北部地震、西日本豪雨と、日本では2018年に入ってから人命を左右する自然災害が頻発している。私たちは普段、生活している周囲の地形が一瞬の内に変わってしまう様子を見ることはほとんどない。しかし、西日本豪雨と同じようなことが東京の下町で発生したら、どのようなことが起きるのだろうか。また、地震や洪水による地表の変化は、稼働中の原発に影響を与えないのだろうか。

 こうした疑問に答えるべく、変動地形学を専門とする東洋大学の渡辺満久教授に、岩上安身がインタビューをおこなった。渡辺氏は、災害発生地や原発周囲での発掘調査にもとづいた豊富な事例を挙げて、自然災害や原発事故をめぐる行政の責任を、忖度なく指摘している。

 マグニチュード7クラスの地震を引き起こす活断層については、すでに9割が特定されている一方、マグニチュード6クラスになる活断層は調査できないこともあり、それゆえ日本中どこでも発生しうる、と渡辺氏は言う。

▲変動地形学研究者・渡辺満久東洋大教授(2018年7月17日、IWJ撮影)

 しかし、自然災害や原発事故のリスクについて、行政は甘い見通しを立てることが少なくない。具体的には、災害リスクが明らかになって土地の価格が下がるのを嫌がる地元の不動産業者や、活断層が見つかることで反原発運動に拍車がかかるのを恐れる原発利権への忖度によって、リスクを十分に検討することなく、住宅開発や原発稼働が闇雲に進められてしまう実態があるのだ。

 繰り返し全国各地で発生する自然災害や、将来起こるかもしれない原発事故のリスクと、私たちはどのように付き合っていくべきなのか。こうした疑問への大きな手掛かりとなるべく、IWJではインタビューの一部始終をサマリーと共にお届けする。

 なお、IWJでは過去、大飯原発再稼働や六ヶ所村の再処理工場について、渡辺氏に取材している。本インタビューでは、大阪北部地震と西日本豪雨を主とした内容になっているが、その他のトピックについて詳しく確認したい読者の皆様は、以下の記事も合わせてご一読いただきたい。

■ハイライト

  • 日時 2018年7月17日(火) 14:30~
  • 場所 IWJ事務所(東京都港区)

変動地形学から見る自然災害 ~マグニチュード6クラスの地震は日本中どこでも発生する!

 インタビューの冒頭、渡辺氏は変動地形学と地震学の違いについて、簡単に整理した。地震学では、地球物理やプレートテクトニクス(*)など、マクロ視点で地震などの現象をとらえるのに対して、渡辺氏の専門とする変動地形学では、地表で実際に起きていることに注意を払うという。

*プレートテクトニクス
地球の表面が何枚かの硬い岩盤(プレート)で構成されており、そのプレートの動きによって山脈や海溝がつくられたり、地震や火山活動などが発生していると考える学説。プレート理論とも呼ばれる。

 地形の変化は100年に一度の頻度で起きる、自分はそのように学んだ、と振り返った渡辺氏は、「最近ではすごい頻度で地形の変化を引き起こすような、甚大な自然災害が発生している印象がある」と続けた。

 大飯原発の再稼働の調査で、施設直下に活断層があることを指摘した渡辺氏だが、活断層の探索について限界があることも、インタビューの冒頭で強調した。

 地震発生で、家具の倒壊などを引き起こすマグニチュード7(以下、M7)クラスの震源となり得る活断層の探索では、9割のマッピングが完了しているという。一方、M6クラスの活断層については調査されていない、あるいは調査ができない。そのため、「M6クラスの地震であれば、(日本国内の)どこででも起きうる」と渡辺氏は述べた。

大阪北部地震は例外的な事象ではない! 実は関東よりもはるかに数多くの活断層が走る関西! 大阪中心部にも活断層が! しかし、松井府知事は「問題ない」と一顧だにせず!?

 巨大地震を引き起こす活断層は、東京などの首都圏では比較的少なく、近畿地方に集中していると渡辺氏は指摘する。地震といえば関東、関西は1995年の阪神淡路大震災を例外として、頻繁には起こらないというイメージがあるのだが、意外なことに、東京で震源となり得るのは、綾瀬川、三浦半島、立川の3ヵ所のみ。対して近畿では、大阪市の中心部にも活断層が走っているというのだ。

 渡辺氏の指摘によると、京都、大阪、神戸を結ぶ日本で二番目に巨大な都市圏の下には、多くの活断層が確認できるという。中でも有馬ー高槻構造線、上町活断層、生駒活断層は、将来、M7クラスの地震を起こす可能性があると言われている。

 2018年6月18日に発生した大阪北部地震はM6.1、震度6を観測し、1923年からの観測史上初の直下型地震であった。波動が1秒以下という極端周期であったため、家屋の倒壊こそ発生しなかったが、小学生の子どもがブロック塀の下敷きとなり、犠牲となってしまった。

 「マスメディアでは報道されないが、実はブロック塀の倒壊については、過去にも事例がある」と渡辺氏は語る。1978年に宮城県で発生した地震では、丘陵地の宅地で今回と同じような塀の倒壊が起きていたというのだ。

 大阪北部地震では、出勤難民や帰宅困難者が続出するという都市型被害が目立った。また、断水の発生もあったが、これについては水道民営化(※)との関連が、今後も懸念される。ボリビアなど他国の事例を見れば、水道事業が民営化された後は、老朽化した設備が放置される一方で、利潤追求のために水道料金が値上げされるということも起こりうるからだ。

(※)大阪における水道民営化の問題については、以下の記事をご覧いただきたい。

 土木学会は、大阪北部地震の発生後、これに続く大型地震の発生について警戒を呼びかけている。しかし、松井一郎大阪府知事は取材で、「対策はすでに十分とっているので、まったく問題ない」という旨のコメントをしている。専門家の判断に反して、追加の対策は必要ないと行政が言いきれるのは、なぜだろう? 松井知事は、その「自信」の根拠を会見で示していない。

▲松井一郎大阪府知事(2018年6月25日、IWJ撮影)

 今回の大阪北部地震について、渡辺氏は週刊ポストの取材に対して、「活断層が震源の可能性がある」と応じている。これに対して政府の地震調査委員会は、渡辺氏とは異なる見解を発表している。「周辺の3活断層が動いた証拠はなく、代わりに未発見の断層が南北に2つ見つかった」というのが、同委員会の発表である。

 この発表は、「南海トラフ地震の前兆ではないか」という人々の不安を抑え込む効果も狙っているようだが、新たに震源となる活断層が見つかったとなると、もっと危険である、ということなのではないだろうか?そうした懸念については渡辺氏も同意し、以下のように述べた。

 「(委員会では)3活断層が動いた証拠がないと結論付けているが、どうしてそのように断言できるのか、わからない。2016年の熊本地震でも、二度目に震度7を記録している。心配はするべきではないか」

原発は被害想定に含まれない!? ~南海トラフ地震についての土木学会の発表をめぐって

 南海トラフ地震をめぐっては、土木学会が想像するのも困難なほどの甚大な被害を予想し、その被害の大きさを試算している。地震発生による直接被害額170兆円、その後20年間の経済へのマイナス影響は1240兆円で、合計1410兆円と試算されている。土木学会の大石久和会長は、「今のまま大災害が起きたら想像もつかないような事態が起こる。日本が東アジアにおける小国、最貧国の1つになりかねない」と警告している。

 土木学会では南海トラフ地震の他にも、首都直下型地震や都市圏への高潮被害について、被害予想と対策費用の試算を出している。

 しかし、これらの試算にはひとつ大きな問題がある。地震によって原発事故が起きた場合の被害想定がなされていないのだ。意図的に外したと勘繰られても仕方のない「黙殺」ぶりである。渡辺氏は、自らの経験も振り返りつつ、原子力業界が地震のリスクを長年にわたって軽視してきた実態を明らかにした。

 変動地形学の研究者が、1980年代に原発周辺地域を分析した所、11ヵ所で地下に活断層が見つかった。しかし、土木学会の原子力土木委員会は、この報告に対して繰り返し厳しい批判で応じた。最終的には、原子力土木委員会も活断層があることを認めることになるが、渡辺氏によれば、原子力土木委員会は長年にわたるこの一連の経緯について、何ら総括をしていないという。

 また、原発については司法の姿勢も問題となる。青森県で建設中の大間原発では、施設直下に活断層が見つかったことから、対岸に位置する北海道函館市と函館市民がそれぞれ建設差し止めの訴訟を起こした。初審で、専門家として証言を求められた渡辺氏は、これに応じたという。

 だが、裁判所が出した判断は「行政側で原子力委員会の判断がないため、司法でも判断はできない」というものだった。司法の判断放棄により、実質的に敗訴となった函館市側は控訴し、訴訟は今も続いている。

完成に400年かかるスーパー堤防。その前に洪水や高潮が起きたら? 求められる日頃からの災害への備え

 南海トラフ地震、首都圏直下型地震、三大湾の巨大高潮という、甚大な被害が予想される災害に対して、土木学会ではスーパー堤防の建設を提唱している。これは堤防近辺に盛り土をした上で、土地開発を行うという計画だ。

 だが、400年をかけて完成するという、このスーパー堤防については懸念も残る。非常に長期に及ぶ建設期間の途中で災害が発生してしまった場合は、どうなるのか。この計画には、本当に完成に至るという実現性はあるのだろうか?

(…サポート会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入より御覧になれます。

サポート会員 新規会員登録単品購入 550円 (会員以外)単品購入 55円 (一般会員) (一般会員の方は、ページ内「単品購入 55円」をもう一度クリック)

関連記事

「(再掲載)核燃料再処理工場のある六ヶ所村で「想定される地震はマグニチュード8クラス」!? 浜岡原発も危険すぎる!! ~岩上安身によるインタビュー 第889回 ゲスト 変動地形学研究者・渡辺満久東洋大教授」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    核燃料再処理工場のある六ヶ所村で「想定される地震はマグニチュード8クラス」!? 浜岡原発も危険すぎる!! 岩上安身による 渡辺満久教授インタビュー https://iwj.co.jp/wj/open/archives/427608 … @iwakamiyasumi
    「想定外」などという言い訳が通用しない破局的事故。日本、いや、世界を終わらせないためにも聞いてほしい。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/1022066204444319744

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です