「安倍さんは、『今だけ、金だけ、自分だけ』です。こういう感性ではリーダーとして論外」──。米連邦議会での安倍首相のTPPに関する演説について、北海道がんセンター名誉院長の西尾正道氏は厳しい言葉で批判した。
2015年5月9日、東京都内のIWJ事務所で「岩上安身による北海道がんセンター名誉院長・西尾正道氏インタビュー 第三弾」が行われた。TPPで日本の医療が大きく変えられる危機感を背景に、遺伝子組み換え食品とモンサント、子宮頸がんワクチン、がん治療、放射能汚染の問題などについて話を聞いた。(前編は子宮頸がんワクチンまで)
TPPの最大のターゲットは医療だ、と指摘する西尾氏は、「TPPで医療費を高騰させ、国民を医療保険に入らせるマッチポンプだ。また、安倍政権を批判する人間を国賊呼ばわりするような風潮があるが、むしろ、安倍首相自身が国賊そのものではないでしょうか」と批判した。
そして、TPPの中心的存在であるモンサント社のGM(遺伝子組み換え)作物を使用したラットの毒性長期実験について説明し、このように結論づけた。
「遺伝子組み換えのトウモロコシを食べた雌のラットの多くに乳がんが発症、非GM作物の餌を与えたラットとは明らかな差が出た。腫瘍のサイズも2~3倍大きい。GM作物を食べ続けると、若くして腫瘍が発症することがわかった。こういう動物実験の結果は、人間も同じになるだろうと考えるべきです」
また、西尾氏は、遺伝子組み換え技術で生まれた子宮頸がんワクチンの危険性についても指摘した。
「2人死亡、2320人の副反応、1083件の重篤な副反応があることは見過ごせません。最初、複合性局所とう痛症候群を推察しましたが、考えられないような症状も多く、難病です」
岩上安身が、「副反応が続出して、日本政府は子宮頸がんワクチン接種を『積極的な接種勧奨の差し控え』に変えたが、接種自体は継続している。また、米シンクタンクのCSISが『ワクチン接種の積極的勧奨を再開せよ』と介入してきた」と憤ると、西尾氏も、「学会や婦人科医師らの間には、このワクチン接種を再び元に戻そうとする動きがある」と危惧した。
「薬屋がワクチンを売りたいだけ」と喝破する西尾氏は、子宮頸がんワクチンの有効性や持続性を疑問視し、「子宮頸がんワクチンは、ウイルスを分解して成分だけを抽出したスプリットワクチン。これはHPV16型と18型のウイルスタンパク、遺伝子操作で作り出したウイルス様粒子を抗原に使う。そこに何か新しい成分が生まれて、それが影響する可能性は否定できない」と言う。
そして、「このワクチンには、アジュバントという毒性の強いリン酸化リピッドAと、アルミニウム成分の免疫増強剤を添加している。それが、副反応に絡んでいる可能性もある」と指摘した。
- 日時 2015年5月9日(金)15:00〜
- 場所 IWJ事務所(東京都港区)
日本の国益が損なわれる不平等条約=TPP
岩上安身(以下、岩上)「西尾先生には、最初、内部被曝についてインタビューをさせてもらった。2度目は、TPPでの医療費高騰の問題を聞いた。3回目の今回は、遺伝子組み換え食品とモンサント、子宮頸がんワクチン、がん治療、いまだに放出され続ける放射能による汚染の問題などについて語っていただきます」
岩上「まず、遺伝子組み換えの代名詞とも言えるモンサントという企業のことを、われわれは理解する必要があると思います。先日、安倍首相は米連邦議会演説で、TPPについて立派な言葉を並べながら、とんでもない話をしました。知的財産権、過酷な労働、環境への負荷など、ウソばかり言っています」
*以下、外務省ホームページ『米国連邦議会上下両院合同会議における安倍総理大臣演説「希望の同盟へ」』より引用
こうして米国が、次いで日本が育てたものは、繁栄です。そして繁栄こそは、平和の苗床です。
日本と米国がリードし、生い立ちの異なるアジア太平洋諸国に、いかなる国の恣意的な思惑にも左右されない、フェアで、ダイナミックで、持続可能な市場をつくりあげなければなりません。
太平洋の市場では、知的財産がフリーライドされてはなりません。過酷な労働や、環境への負荷も見逃すわけにはいかない。
許さずしてこそ、自由、民主主義、法の支配、私たちが奉じる共通の価値を、世界に広め、根づかせていくことができます。
その営為こそが、TPPにほかなりません。
しかもTPPには、単なる経済的利益を超えた、長期的な、安全保障上の大きな意義があることを、忘れてはなりません。
経済規模で、世界の4割、貿易量で、世界の3分の1を占める一円に、私達の子や、孫のために、永続的な「平和と繁栄の地域」をつくりあげていかなければなりません。
日米間の交渉は、出口がすぐそこに見えています。米国と、日本のリーダーシップで、TPPを一緒に成し遂げましょう。
西尾正道氏(以下、西尾・敬称略)「……呆れますね。価値観の共有と言っても、安倍さんの価値観は『今だけ、金だけ、自分だけ』です。こういう感性ではリーダーとして論外だ」
岩上「TPPは非常に不平等な条約で、日本の国益が損なわれる。しかし、安倍首相は、それを意に介していません。日本の国益に関心のない人なのです。そして、モンサントという企業は、このTPPを推進する大きな役割を担っている」
西尾「モンサントはTPPの中心的存在です。食べ物を、世界中の食品を握るということは、人間の原点を牛耳るということです」
枯葉剤、成長ホルモン剤、PCB──公害の塊を売るモンサント
岩上「モンサントは、広島、長崎に落とされた原爆製造のマンハッタン計画に関与していた。PCB製造開始(1929年)、枯葉剤製造(1962年)、牛成長ホルモン販売開始(1993年)。そして、除草剤に耐性のある遺伝子組み換え作物を生産し始める。
1994年、遺伝子組み換えトマトの初商品化。モンサントの主力商品は売り上げ世界一の除草剤のラウンドアップで、それに対応する遺伝子組み換え作物の世界シェアは90%。本社所在地は米ミズーリ州セントルイスです。
モンサントは、枯葉剤、人工甘味料、成長ホルモン剤、PCBなど、公害の塊を作っています。ベトナム戦争では10年間にわたり、高濃度ダイオキシン366キロを含む枯葉剤を7200万リットルも散布した。これは化学兵器であり殺戮兵器です。それを一般市民相手に使った。
その結果、ベトちゃんドクちゃんのような先天異常の子どもは、サイゴンで1000人中26人、集中散布地域のタイニンでは1000人中64人に上ります。ベトナムは今でもアメリカに抗議して賠償を要求しているが、アメリカはまったく応じません。20世紀の悲劇は継続中なんです」
西尾「シリアが毒ガス兵器を使ったことを、アメリカが非難する資格はないでしょう」
TPP日米事前協議でアフラックに配慮した麻生副総理
岩上「モンサントは、2010年10月20日、住友化学(トップが米倉弘昌前経団連会長)と提携しました。当時は、民主党の菅政権がTPP交渉への参加表明をした。自民党はTPP反対が公約だったが、安倍政権になり、手のひらを返します。まさしく公約違反。そして今、TPPへの地ならしとして、GM(遺伝子組み換え)作物はどんどん認可されている。TPPに参加すると、遺伝子組み換え食品の表示もできなくなります。
また、アフラックのチャールズ・レイク日本会長(元USTR)も暗躍していますね。2012年11月9日、日米財界人会議では『可能な限り早急にTPP交渉に参加することを強く支持』と共同声明を出しています。翌2013年4月12日、麻生副総理が、TPP日米事前協議で合意しました。
自動車分野では日本は関税ゼロにし、アメリカは日本車に対する関税を元に戻せるスナップバック条項付きの不平等条約を交わしています。かたや農業分野で豚肉は持ち越しになり、メディアはここだけを盛んに報じている。
ここで重要なのが、麻生副総理がアフラックに配慮し、かんぽ生命の新商品(がん保険含む)を認可しないと表明したことです。そして、全国の郵便局窓口でアフラックの保険を売る。これは占領支配と変わらない」
西尾「つまり、日本人が払う生命保険料がアメリカに流れる。せめて、日本の生命保険会社にも同様に売らせないとアンフェアだ。TPPの最大のターゲットは医療。医療費を高騰させ、国民に医療保険に入らせるマッチポンプなのです。今、安倍政権を批判する人間に対して、国賊呼ばわりするような風潮があるが、むしろ、安倍首相自身が国賊そのものですよ」
岩上「麻生副総理は2013年4月12日の記者会見で、かんぽ生命新商品の認可凍結について聞かれ、『たまたま、(日米事前協議の合意と)日が重なっただけ。TPPと関係ない』と答えた。しかし、米国USTRへは『TPPへ向けて(かんぽの新商品は)認可しない』と報告している。麻生大臣は、日米事前協議でアメリカに配慮したことを隠していたんです」
食品は書類審査だけ。毒性はまったくチェックできない
岩上「では、映画『モンサントの不自然な食べ物』に登場するジル=エリック・セラリーニ教授(フランス・カーン大学)の毒性長期実験についてお尋ねします」
「動物実験ではGM作物を食べ続けると若くして腫瘍が発症。人間も同じになるだろう」 ~岩上安身による北海道がんセンター名誉院長・西尾正道氏インタビュー 第三弾・前編 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/244874 … @iwakamiyasumi
GM作物も除草剤も毒性は同じ。
https://twitter.com/55kurosuke/status/601711577281114112