万歳会長の突然の辞任劇は「TPP反対封じ」工作!? TPA法案提出、安倍総理の米議会演説の裏にある日米両政府の思惑を、山田正彦元農水相が岩上安身のインタビューで暴露! 2015.4.17

記事公開日:2015.4.18地域: テキスト 動画 独自
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(IWJ・佐々木隼也)

特集 TPP問題

  米国で2015年4月16日、ついにTPA(大統領貿易促進権限)法案(※)が超党派により議会に提出された。日本のメディアは、「これでTPP交渉に弾み」などと煽っている。しかし、17日に岩上安身が緊急インタビューを行なった山田正彦元農水相は、「ある自民党幹部は『TPAは通る』と豪語しているが、実際はかなり難しい」と語る。

 米国内では、かつてNAFTA(北米自由貿易協定)や米韓FTAなどで、製造業が安い賃金の海外へ移ってしまい、多くの労働者が職を失った。この教訓の恐怖から、労働組合が強硬にTPP反対を掲げ、米民主党に激しいロビイングを行なっているという。

(※)TPA法案とは、大統領が外国と妥結した通商協定について議会の修正を認めず、採決のみを求めることができる権限で、これによりオバマ大統領に交渉権限が与えられる。

 しかしこのTPA法案提出や、それによる日米閣僚会合の開催、29日に予定されている安倍総理の米上下院合同演説、そして9日の歳章・JA全中会長の電撃辞任で、「TPPをめぐる動きが加速している」と警鐘を鳴らす。

 あるJA幹部から聞いた話によると、万歳会長が辞任を発表する2日前、万歳会長は官邸に呼ばれ、安倍総理と握手をし、「官邸と共同歩調をとる」と語ったという。突然辞任を発表しつつ、8月の後任人事選定までは会長職を留任するという奇妙な動きにより、「JAは指示系統が麻痺し、TPP反対の動きが封じられた」と指摘する山田氏。そして、TPA法案提出と安倍総理の演説も、日米の反対派封じの工作のひとつだという。

 山田氏は、「米韓FTAの時も、同じ手口で引きずり込まれた」と指摘する。

 いったい、一連のTPPをめぐる動きの裏には、どのような思惑があるのか。自民党内部の偽装TPP反対派の正体や、「歴史認識」を隠れみのにする安倍総理演説の真の注目ポイントは何か? さらに、自動車分野で米国が要求するとんでもない譲歩の内容とは何か?

 元農水大臣として農政の裏を見尽くし、現在も世界中の市民団体と連携してTPPの問題点を追い続ける山田氏に、詳細に話を聞いた。 

■ハイライト

  • 山田正彦氏(元農林水産大臣、元衆議院議員、弁護士)
  • 日時 2015年4月17日(金)20:00頃〜
  • 場所 IWJ事務所(東京・六本木)

TPA法案で「TPPに弾み」と喜ぶ自民党

岩上安身(以下、岩上)「昨日(4月16日)、山田さんからお電話をいただき、TPPをめぐり動きが急だと。ついにTPA法案が議会に提出されました」

山田正彦氏(以下、山田・敬称略)「マレーシアなど参加各国はみな、TPAが通らなければTPPは妥結できないと。米国内も含めTPAの行方を注目していました。

 そのTPAがついに米議会上院で提出された。それも異常な形で。というのは提出の前に公聴会を開いた。二院制においては上院で通過した後で下院で審議されるが、今回は下院も同時に出すのではないかと言われている。彼らは非常に焦っています。

 甘利大臣はこれまで『TPP妥結に向けては、TPA法案の議会成立が必須条件』と言ってきたのに、14日には『TPA法案が、動きが始まって見通しが見えてくる中であれば、日米二国間の閣僚協議は開催される可能性が高くなる』とトーンを変えました。

 つまり仮にTPAが通らなくても、日米二国間では合意も可能だ、と言っているのです。ある自民党幹部に聞いたところ、自民党は『TPAは通る』と言い始めたそうです。日米閣僚協議にはフロマンUSTR代表が出てくるらしい、という情報が入っています」

岩上「振り返りますが、TPAとは大統領が外国と妥結した通商協定について議会の修正を認めず、採決のみを求めることができる権限。これによりオバマ大統領に交渉権限が与えられる(強化される)というものですね」

しかしTPP反対の声が根強い米議会 ~安倍総理演説が反対派切り崩しに使われる?

山田「『TPAは通る』と、日本では言われているのですが、米国では難しい。米民主党を中心に反対の声が根強く、32名ほど切り崩さないと通らないと言われているが、まだ12名ほどしか賛成に回っていない。さらに共和党でもティーパーティー運動の人たちは反対しています。

 そこで、このタイミングで安倍総理が米上院下院の合同演説で、TPP推進(日本の譲歩)を掲げることで、この米民主党切り崩しに使われるのではないかと。米国と日本のTPP推進派が手を握り合って、TPA法案可決で協力しているのではないか、と言われています。

 というのも、米韓FTAで同じことがあったのです。李明博前大統領は、2011年10月13日に米議会で演説した。連動して、米国内の合意法案が可決されました」

岩上「その後、2012年3月15日に発効となりましたね」

TPPのロビー活動に4000億円! 製薬業界が目指す医療費価格暴騰

山田「米韓FTAでは韓国の医薬品の審議会を独立させて、米国の製薬会社がそこに入った。価格の釣り上げが行われる。TPP交渉でも、米国の製薬業界はロビー活動に4000億円使われたと言われている。日本にもロビイストが来ています。

 日本では国民皆保険の適用対象となっていない新薬が、『TPP待ち』となっています。TPPが来たら自由診療の対象にしようと。医薬品価格の高騰、ある人は月に100万円を新薬に投じている。ある人は米国で脳梗塞で倒れ、一晩入院して薬を飲んで、312万円請求されました。

 人口400万人のニュージーランドでは、国民の75%が反対しています。農業大国で、農業輸出拡大につながるはずなのに、先日は1万4000人のデモが起きた。それはTPPによる医薬品価格高騰の問題があるから。米国の破産の6割が医療費です。

 米国は手術や医療器具にまで特許料を取れるようにしようとしている。医療費は膨大な額に跳ね上がります」

「TPPで産業が壊滅する!」強硬にTPP反対を掲げる米労働組合

岩上「TPA法案にはTAA(自由貿易などでの労働者の職が失われた時の支援対策プログラム)というものが盛り込まれました」

山田「米国では労働組合がTPP絶対反対なんです。それはNAFTAで米国の労働者の職が大量に失われたから。

 TPPでは、NAFTAの時のように(※)生産拠点が安い賃金のアジアに流出してしまうのではないか、残っている生産拠点も移ってしまうのではないかと懸念し、かなり強力に民主党にロビイングしているのです。

 バイデン副大統領は、そうした人たちの所得補助のために『TAAとセットでないとTPAは通さない』と言っています。民主党はTAAとの並行協議を強く主張しているので、簡単にはTPAも通らない。

 共和党のティーパーティー運動の人たちも、ISD条項は国の主権が損なわれる、と反対しています。日本の企業から訴えられることはない、とふんでいるらしいが、ヨーロッパの企業から訴えられるのはないか、と。共和党内でまだ60名ほどが反対しています。

 だからこそ、安倍総理の演説が切り崩しに使われる。またロリ・ワラックさんが心配していたのが、デュポンなどの多国籍企業の献金。彼らの献金は青天井で、その凄まじいロビイングで切り崩されてしまうのではないか、と懸念されていました」

岩上「PARC事務局長の内田聖子さんも、同様の分析をされています。TPPで賃金の安いマレーシアなどに産業が流出するおそれがある以上、労働組合の強硬姿勢は変わらず民主党の切り崩しは難しいだろう、と」

TPPとAIIB、選択を迫られる日本 ~アジア各国は対米追従から脱却めざす

岩上「マレーシアをはじめアジア各国は今、AIIBに参加しています。ヨーロッパ諸国も入り、イスラエルさえも。TPPとAIIBは関係しています。日本だけが対米追従一本で良いのかという問題に直面しています」

山田「マレーシアのマハティールさんもTPP反対なんです。

 マレーシアはTPPのメリットとデメリットをはっきり国民に示し、可決されなければTPPに調印しない、と言っています。この手続が7月くらいまでかかると言われています。ベトナムもTPPに背を向けました。

 TPAも通るか通らないか分からない状況。しかし自民党は『TPAは通る』と言い張って、日米協議を進めようとしています。しかしマレーシアもベトナムもTPPに消極的なので、残るのは日本と米国(の協議結果)だけということになってしまいます」

※ここで視聴者からの質問:「TPPに入ったらISD条項でTAAも改変させられませんか?」

山田「あり得るかもしれませんね。米国は本当に勝手なのですが、TPP協定が妥結されても、同時に『履行法』を通し、各州のルールをTPPより上位にしてしまうのです。

 米韓FTAでも、そのルール(損をする部分)は米国内には適用されず、韓国のみ適用された。それによって韓国はいまだにどんどん自国の法律を書きかえさせられているのです(※)。しかし米国の法律は変えません」

万歳会長の電撃辞任は官邸による「TPP反対封じ込め」工作!?

岩上「TPP反対の急先鋒だったJAの万歳会長が、4月9日の定例会見で任期途中で辞任することを突然発表しました。同じく専務理事も5月で退任と。この辞任劇は謎が多すぎます」

山田「2日前の4月7日に官邸で安倍総理と会っているんですね。

 私が聞いた話では、万歳さんは安倍総理と会った時になんと、TPPや農協改革について一切文句も注文も発しなかったと聞いています。安倍さんと握手をし、『官邸と共同歩調をとる』と言ったそうです。

 ある農協幹部は『あれは戦後の昭和天皇とマッカーサーの握手と同じだ』と言っていました。辞任については、副会長も幹部も誰も一切聞かされていなかった。ただ、辞任すると言っても8月の後任決定まで会長職を留任します。つまり、この辞任と留任で指示系統が機能しなくなる。

 4月23日にJAは大きなTPP阻止大会を予定していましたが、これが消されました。各a地方農政連にも連絡がいっていたのに。つまり、万歳さんが辞任して、後任を決めずに8月まで留任することによりJAは機能停止状態になり、反対運動が麻痺させられてしまったのです。

 農民はTPP反対の声をあげたくてもあげられなくなった。実は米韓FTAでも同じことをやられました。韓国も農協改革で反対運動が封じ込められました。それまでは女性の農協職員が焼身自殺し、反対運動で死者が出るほど韓国の抵抗は凄まじかったのに」

農業の大規模化、株式会社化では他の参加国に太刀打ちできない ~「所得倍増」の甘言は「デュポンやモンサントの手口」

山田「ちなみに私が農水相の時には、全中会長とは一切会わなかった。農協ではなく農家に直接、戸別所得補償をやったから。翌年に農家の所得は17%アップしました。それ以前は補償は農協を通していたので、この所得補償には農協も反対でした。だから以前は農協は敵でした。

 その所得補償も止められ、米価も下げられた。コメ農家はどんどん辞めていくでしょう。TPPは秘密交渉で、締結後も非公開なので、『聖域であるコメや砂糖は大丈夫だろう』と思うのは間違い。韓国もコメは守ったと豪語していたが、結局20年で関税ゼロとなった。

 農業の大規模集約化で太刀打ちできるんだ、という声があるが、日本の農地の7割は中山間地。政府は4ヘクタール以上にしか所得補償しないなどと言い始めていますが、米国やオーストラリアは数百、数千ヘクタールがザラ。太刀打ちできるわけがない。

 農水大臣の時に講堂に幹部を集め、『大規模化して失敗して4億円の借金をしたのが私だ。だからこれからは大規模化、株式会社化をやめてヨーロッパ型にする』と宣言し、戸別所得補償を進めた。しかし今の政府は小さな農家を潰し大規模化、株式会社化をしようとしていますね。

 政府は大規模化や株式会社化によって『所得を倍増させる』と言っていますが、これはデュポンやモンサントがよく使う手です。遺伝子組み換えを普及させる時に、収量が4倍になるよと。確かに最初は収量が4倍になるが、抗体ができるなどして、やがて減っていくのです。

 そんななか、JAが倒れた。先日、高浜原発が司法の力で差し止められましたね。TPP差し止め訴訟もいよいよ5月中に提起できそうです。原告は1000人超え、弁護士も150人を超えました。賛同人も3000人を超えました(※)」

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2件のコメント “万歳会長の突然の辞任劇は「TPP反対封じ」工作!? TPA法案提出、安倍総理の米議会演説の裏にある日米両政府の思惑を、山田正彦元農水相が岩上安身のインタビューで暴露!

  1. JAの会長職はどのようにすれば解かれるのでしょうか。ある幹部JAがTPP反対であれば,解任権を利用して万歳会長を辞職させることもできるはずと考えるのですが。教えて頂ければ幸いです。

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