【大義なき解散総選挙】隠された争点――消費税以上に国民生活を直撃するTPP、「農家は潰していい」が安倍政権の本音?~山田正彦元農水相が警鐘 2014.11.19

記事公開日:2014.12.4取材地: テキスト動画
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(IWJ・細井正治)

特集 TPP問題

 2012年末、「TPP断固反対」を掲げて、再び政権に返り咲いた自民党。しかし、安倍政権は政権を奪還した途端に公約を反故にした。

 さらに、現職の西川公也農水相が過去、山田正彦元農水相に対して「今の農家は潰していい。これからの農業は家族ではなく、株式会社がやればいい」と発言したという。

 「TPP交渉差止・違憲訴訟について~TPPを止めなければ日本が滅びる」と題した日本政策学校の講義が11月19日(水)19時から、TKP市ヶ谷カンファレンスセンターで行われ、かねてからTPPの危険性を訴える山田氏が、TPPにおける自民党・安倍政権の「転身」ぶりを批判した。

■ハイライト

  • 講師 山田正彦氏(元農林水産大臣、弁護士)
  • 日時 2014年11月19日(水) 19:00〜
  • 場所 TKP市ヶ谷カンファレンスセンター(東京都千代田区)

「党利党略」の解散総選挙

山田正彦元農水大臣(以下、山田・敬称略)「今回の解散こそ、まさに『党利党略』です。これから不況も深刻になる。メディアの潮目も内閣改造、小渕元経産大臣たちの『政治とカネ』問題あたりから、変わった。自民党のスキャンダルなどの問題が噴出してくる。株価も、公的年金130兆円で買い支えるといっても、限度がある。

 大半の人の賃金は上がらない。だから消費が落ち込み、輸出も伸びず、大企業以外はみんな迷惑している。残り任期2年ありますが、1年半ぐらいで選挙があり、それまでに野党がまとまれば、また総入れ替えになり、もう一度世の中をよくできるかなと思っていました。

 自民党は今回、『これぞ秘策だ』というつもりで解散に打って出たのでしょう。しかし案外、策に溺れた結果になるのではないか。選挙は本当に結果をみるまでわからない。公示まで、小沢さんの『生活の党』も『民主党』も、精力的に候補者調整をしています」

雇用、医療、保険、教育、福祉から司法まで、「主権」自体が失われる

山田「前回、自民党は『TPP、絶対反対。嘘つかない』と掲げて大勝しました。私の地元の農家もみんな、それを信じていた。ところが間もなく安倍総理が訪米し、あっさりと交渉に参加を表明した。日本でも少しは報道されたが、米国での発表とは大違いです。

 もともと、『日米年次要望書』で辺野古移設や郵政民営化などが要求されていたものが、民主党政権になって、鳩山内閣が断ったんです。ところが菅内閣で『日米経済調和対話』そして、安倍政権になって、TPP交渉と並行しての日米協議を『協定』として結ばされるようになったのです。

 そこで出てきたのが『戦略特区』です。いままでの特区は、地方が自発的に要望、先導し、国家が特に『分権』する形だったのですが、今度のは安倍政権の主導で、日米並行協議での米国側の要求を実践するためのものなのです。中でも一番問題だと思うのが雇用特区です。

 米国国民の78%がTPP反対なのも、雇用問題への心配からです。20年前、NAFTAの時は、逆に『自由貿易で、雇用が増える』と6割が賛成し、翌年、デントコーン(いわゆる飼料用トウモロコシ)800トンをメキシコに輸出しました。レーガン政権以来、『食糧はミサイル同様外交上の武器』という国策で生産、輸出補助金も毎年1兆円にものぼりました。

 それでメキシコ農家のうち350万戸が潰れたり、出稼ぎしたりで、今度は米国人も職を奪われたり、賃金も半減しました。借金に追われ、仕事を掛け持ちしている世帯が増え、『1%の国際企業のために99%が犠牲になった』というオキュパイ運動が、今でもワシントンの公園などで続いています。

 安倍政権は『正社員でも賃金3ヶ月分で解雇できる』と主張し、さらに中国や東南アジアなどから外国人労働者を入れる案を推進中です。

 もう1つ大きいのが『医療特区』です。保険診療でできない自由診療、『混合診療』の全面解禁。新薬の分だけ自己負担するならまだしも、例えば歯のインプラントが、いつまで経っても保険適用外で何十万円もかかるように、自由診療を拡大し、保険診療をせばめていくつもりです。

 つまり日本の医療の基本、保険診療自体が崩れ壊される。さらにTPPでは、薬や機械・器具だけでなく『処方・手術法』などもすべてパテントだと言っています」

変節した安倍政権、農水大臣まで「農家は潰していい」

山田「日本でも『国保は廃止しない、国民皆保険は守る』と言っていますが、米国のアフラックなどの民間医療保険と公平を期すため、4、5倍の負担になってしまうでしょう。2年前、韓米FTAを結んだ韓国をみれば明らかです。

 米国ではタミフル1本7万円、盲腸の手術に1回350万円、歯の治療でも、日本でやった方が航空代などを入れても安いというほどです。救急病院に運ばれても、保険会社がOKしないと診療されません。今、日本の医療費はGDP比で米国の半分で、良質な医療が行われています。

 教育も本当はビジネスではないでしょう。しかし、オバマ政権の4年間で公立学校4000校が閉鎖し、教職員30万人が解雇され、民間委託になりました。食糧も『遺伝子組み換え』作物です。

 これまでトウモロコシや大豆は家畜のエサだから遺伝子組み換えを認めるが、小麦は認めない、と米国高官も言っていたのに、実際には行われたんです。

 この前、よみうりテレビで自民党の西川公也農水大臣と会った時、『TPPで農家は潰れる』と言ったら『農家は潰していい、企業がやればいい』と言っていました。

 すでに農家を潰し、企業が買いやすい法制に変え始めている。選挙になってどうするか。安倍さんは『所得が倍増する農業、収量が4倍に増える農業をやる』と言っている。これは『遺伝子組み換え』で、インドやアフリカ、南米などで米国がやってきた『モンサント』農法です。ヨーロッパでは作らせないし、ヒトには食べさせない。しかし米国は、遺伝子組み換えの非表示を要求しています。

 TPP第18回の交渉会議で『成分表示』もやめろ、と。これで怖いのが成長ホルモンです。牛乳、肉は2割も増すが、40年の寿命を2年に縮め、さらにヘタリ牛も続出。それらもTPP後は無表示で、国民には知らされず、選べない形で日本に雪崩れ込んでくるわけです」

「異常な協定TPP」―RCEP、FTAAPとは? 自由貿易とは、どう違う?

山田「政府が規制しようとすれば、ISD条項で裁判を起こされる。実際、カナダは医薬品認可問題で訴えられました。今、韓国で裁判官160人が大法院に申し立てしているのは、『三権分立』『司法の独立』。司法主権自体が失われる、という問題です。

 米韓FTA前に農協組織も金融、共済、営農が分離させられ、やっていけなくなり、どんどん解体されていっています。たった2年で地産地消の学校給食をやめざるをえなくなった。今や畜産業の7割が廃業。締結後の今も180本の法律が変えられつつある。

 『コメだけは守った』といいますが、来年(2015年)から関税化し、それもゼロにしていく。米国、オーストラリアに依存することを決めたわけですが、こうなるともう独立国とは言えません。TPPでも締結後、4年間にわたって『保秘義務』が課され、何が決まったのかも知らされないことになっています。

 だからこそ、大飯原発の運転差し止め訴訟は憲法13条の『人格権』に依拠していますが、TPPでも何とかやりたい、と思ったのです」

「推進派は、最後に安全保障を言う」

(…会員ページにつづく)

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  1. あのねあのね より:

     1970年代に急に大豆不足になって豆腐が一気に値上がりしたことがある。アメリカ合衆国からの輸入に90%超頼っていた為だ。もし米も米国からの輸入に頼ったら、米もこういう状態になるだろう。その時に安い炭水化物が輸入できるとは限らない。あの時の大豆不足の恐怖は忘れられません。
     航跡の写真を見ると、民主党時代の尖閣事件について山田先生がおっしゃることが正しいということがわかります。週刊新潮の2010年11月の号に航跡が乗っている写真がありますが、直進する中国漁船に対し巡視船が中国漁船の左斜め前から鋭角的に進入し進路を妨害し中国漁船の進路上で転回しています。航跡が写真として載っているので、記事の内容とは裏腹に日本側が仕掛けたことがバレてしまっている。メジャーな“政府系”週刊誌にあの写真を載せて、日本側が完全な被害者のような文章を載せたことで世界中に日本政府の“方針”さらけ出してしまい恥をかいた形となった。
     週刊新潮と週刊文春の2010年9月30日号の写真を見ると、同じ写真を違うトリミングで記事の冒頭に載せており、同一提供先から提供された写真と情報を元に記事を書いたことがわかる。このときの写真で最初にわかるのは船体の大きさの違いで、あまりにも大きさが違うことから日本側の主張のインチキさが一発でわかる結果となっている。
     ヨットマンであり、海上での衝突が小型の船にとってはシビアな問題であることについてよく知っている石原慎太郎氏が何故あのような主張をするのかは全く理解できない。

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