米国に”依存し過ぎている”日本の現実~ウクライナ危機、辺野古新基地建設、北方領土、TPP…クリミアを電撃訪問した鳩山由紀夫元総理に岩上安身が聞く~岩上安身によるインタビュー 第519回 ゲスト 鳩山由紀夫氏 2015.3.23

記事公開日:2015.3.24取材地: テキスト動画独自
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(IWJ・平山茂樹)

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 2015年3月10日から14日にかけて、クリミアを訪問した鳩山由紀夫元総理。日本政府や大手メディアは今回の訪問をこぞって批判しているが、鳩山氏の訪問の背景には、ユーロマイダンでの騒乱以降、ウクライナの混乱を煽り、ロシアのプーチン大統領を一方的に「悪魔化」してきた米国と、それに盲目的に追従する日本政府に対する不信感が存在した。

 総理現職時、対米自立路線を模索し、普天間飛行場の沖縄県外への移設を掲げながら、官僚の裏切りによって頓挫した経緯を持つ鳩山氏。3月23日に岩上安身のインタビューでは、ウクライナ問題を皮切りに、辺野古での新基地建設問題や、TPP、北方領土問題など、安倍政権の従米路線を批判した。

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■全編動画

  • 日時 2015年3月23日(月) 18:00〜

なぜ、クリミアを訪問したのか

岩上安身(以下、岩上)「私の復帰第一回目のインタビューで、本日は大変ビッグなゲストをお招きしました。鳩山由紀夫元総理です」

鳩山由紀夫氏(以下、鳩山・敬称略)「よろしくお願いいたします。今日は何でも聞いてください」

岩上「今回、クリミアを訪問されましたが、やはり現地に行きたいという思いが強かったのでしょうか」

鳩山「ウクライナの新政権として、米国の意向に沿ったものができて、ロシア排除の動きが出てきました。それとは一緒にできないということで、クリミアの住民投票が行われました。

 私が総理の時に一番やりたかったのが、北方領土の問題です。祖父の鳩山一郎の時に、米国が茶々を入れて、二島返還でうまくまとまるところが、四島返還でなければ駄目だ、ということになってしまった。現在に至っても、日ソ共同宣言から何も動いていません。

 安倍総理とプーチン大統領の関係は良好なものでした。しかし、昨年のクリミア併合を契機に、日露の関係が悪化しました。露土戦争以降、クリミアはロシア固有の領土だと言えます。クリミアのロシア人からすれば、ずっとロシアに戻りたいなという気持があったのだと思います。

 日本は米国にならい、ロシアに経済制裁をしました。そのことにより、北方領土の問題が宙に浮くことになってしまいました。安倍総理とプーチン大統領の関係は良好だっただけに、非常にもったいないな、と思います」

岩上「ユーロマイダンでの騒乱後にキエフで新政権が誕生した後、ロシア語を使うな、ということになりました。そういう中で、クリミアにはセヴァストーポリという軍港があることから、ロシアにとっては譲れる場所ではありませんでした」

鳩山「領土問題については、歴史的な経緯というものが重要です。クリミアには、元々ロシア人が住んでいて、キエフ政権によって彼らの人権が蹂躙されようとしていました。そこで住民投票ということになりました。私は、彼らの行為は尊敬すべきものだと思います」

岩上「クリミアでは、ウクライナ軍将兵も全く戦いませんでした」

鳩山「クリミアでは大変、民主主義が尊重されています。住民投票の結果誕生した政権は、ロシア語だけでなく、クリミア・タタール語も公用語としました。キエフとやっていることが真逆です」

ウクライナで暗躍する極右グループと、それを背後で操る米国のネオコン

岩上「こうしたことを、日本のメディアや欧米のメディアは全く伝えませんね」

鳩山「ユーロマイダンの騒乱が大きくなる時、米国のネオコンが対立を煽っていました。実際に行動していたのは、米国のネオコンが操るネオナチたちでした」

岩上「一番ひどかったのが、極右グループによる『オデッサの虐殺』という事件です。ウクライナにいるロシア系住民が虐殺されました。しかしキエフ政権は、極右のグループを罰しませんでした。それどころか、彼らはウクライナの治安グループに入っています。

 今回の鳩山さんのクリミア訪問に関する論説を調べてみました。産経新聞から東京新聞まで、取材もなしに鳩山さんを批判していました。ところが台湾の新聞が、『鳩山氏は安倍総理の痛いところを突いた』と書きました」

鳩山「私は別に、クリミアだけを味方にしようとしているわけではありません。私は今度はキエフに行きたいと思っているんです。世界の平和に向けて、自分としてお手伝いできることがあればと思ってやっているのです」

プーチン大統領の「核兵器を準備していた」発言をどう捉えるか

岩上「プーチン大統領が、クリミア併合時に『核兵器を準備していた』と発言しました。しかし、この発言の背景を考えなければいけないのではないでしょうか。NATOは東方拡大を続け、MD(ミサイル防衛)をロシア国境付近に配備するのではとの懸念がありました。

 米国は、ウォルフォウィッツ・ドクトリンとして、相互確証破壊戦略(MAD)を無効化しようとしていたのではないでしょうか。プーチンの今回の発言の背景には、そうした米国の戦略があるのではないでしょうか」

鳩山「私は、プーチン大統領にはこういうことを言ってほしくなかったと思っています。しかし、攻めているのは米国のほうではないか、という見方もある。米国の軍産複合体は、ロシアを仮想敵国にして、冷戦体制を復活させようとしているのではないでしょうか。

 ネムツォフ氏が暗殺されたのも、マレーシア航空機が撃墜されたことも、あたかもプーチン大統領のせいであるかのように報じられています。こうした『プーチン悪者論』は作られたものです。支持率が80%を超える大統領が、暗殺するはずがない」

岩上「米国のヌーランド国務次官補について。彼女がキエフ政権の動向を差配していると言われます。夫はPNACの創設者であるロバート・ケーガンです。さらに、マケイン上院議員もユーロマイダンに現れ、スボヴォダの党首と演台に立ちました。

 さらにこのマケインは、エルサレムで安倍総理と会談し、TPPと辺野古について、念押しをしました。日本とウクライナは、米国に対して従属状態の『半国家』と言えるのではないでしょうか」

鳩山「うーん、それは寂しいなあ」

米国に依存しすぎている日本

<ここから特別公開中>

鳩山「日本が米国に依存しすぎている、というのは事実です。矢部宏治さんもご著書の中で指摘していますが、日本の官僚は日本の総理大臣ではなく、日米合同委員会に忠誠を尽くすわけです。私も、そのことに早くから気づいていればよかったと思います」

岩上「鳩山さんは政治家のご一族ですけど、日本のこうした統治のシステムについてご存知なかったのですか」

鳩山「祖父も父も、私に政治の話はしませんでした。自民党の中にいて、『これは間違っているな』と思い、さきがけの結成に参加しました」

岩上「現在の安倍政権のキーパーソンである兼原信克氏(外務省出身)と高見沢将林氏(防衛省出身)という2人がいます。ウィキリークスによれば、鳩山政権時に高見沢氏がキャンベル国務次官補に『柔軟さを見せるべきでない』と助言したと」

鳩山「私はこの方を覚えています。普天間の問題を解決するために、官邸で秘密の会議を行ったわけです。しかし、それがすぐに翌日の新聞にリークされてしまった。私は彼らに裏切られたわけです。『このやろう!』と思いましたが」

今こそ、東アジア諸国と対話を行うべきとき

岩上「現在、集団的自衛権行使容認に向けた議論が進んでいますが、どのように見ていますか」

鳩山「テロとの戦いというと、何でも正当化される風潮があります。しかし、テロとの戦いを国単位でやっても、決して解決はしません」

鳩山「集団的自衛権行使容認で日本もテロとの戦いに入っていくということになると、日本もテロの標的になります。亀井静香氏は、日本国内にテロリストが入るのを水際で止めることは400%無理だ、と言いました」

岩上「昨年は第一次世界大戦から100年でした。今のウクライナの状況は、第一次世界大戦と重ねあわせることができるのではないか。欧露間のパイプラインは、ベルリン―バグダッド鉄道に見立てることができます。ユーラシアがランドパワーとして融和しています。

 米国の戦略家は、融和するランドパワーに対し、シーパワーとして介入しようとしているのではないでしょうか。しかし、中国とロシアは、ガスの取引の決裁で、ドルを外すと言っています。非ドル化の新しい世界秩序が立ち上がろうとしているのではないか」

鳩山「中国でAPECが開かれた際、中国の機関で講演しました。その時に言われたのは、日本もAIIB(アジア開発投資銀行)に入らないか、ということでした。将来、日中韓で通貨バスケットを作るですとか、金融改革をするという選択肢もあるのではないか。

 日本人が米国の頭から解放されて、自分の頭で考えようということになれば、領土問題は解決すると思うんです。ロシアとの信頼関係をいかに築くか。その意味で、サハリンからパイプラインを引くとか、そういった選択肢もあるはずです。

 昨年秋にモスクワに行った際、『日本はなぜ制裁に加わるのか、韓国も制裁に加わっていないのに。日本はもっと大人だと思っていた』と外務大臣に言われました。3.11以降、日本は韓国以上にエネルギーを必要とする国です」

岩上「原発について、この4年間様々な議論がありました。突き当たるのは、政府には核兵器の保有の思惑がある、ということです。小沢一郎氏も私のインタビューの中で明言されました。鳩山さんは、自主防衛が持論だと思いますが、核についてはいかがですか」

鳩山「中西輝政氏のような核兵器保有論者が、安倍政権のブレーンになりました。私は米国からの自立を主張していますが、核は持つべきではないと思っています。軍事力ではなく、『友愛』のある対話でもって、結論を導き出そうとすることが重要なのではないか」

岩上「北方領土の問題について、ダレスの恫喝というものがあったわけですね。二島返還なら、沖縄を返さないぞ、と。日本が周辺国と融和できない状態が続いているわけですが、その起源がこのダレスの恫喝ではないでしょうか」

鳩山「東西冷戦構造が始まるなかで、日本とロシアが領土問題で解決しては大変だと、米国は思ったんですね。日本側に無理筋な要求をさせて、交渉を壊したわけです」

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  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    米国に”依存し過ぎている”日本の現実~ウクライナ危機、辺野古新基地建設、TPP…クリミアを電撃訪問した鳩山由紀夫元総理に岩上安身が聞く(動画) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/240251 … @iwakamiyasumi
    これぞ平和的外交というものだ。鳩山さんの政界復帰を望みます。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/580310224570978304

  2. テレキャス より:

    鳩山由紀夫・元総理のクリミア電撃訪問をまともな論調で伝えた日本のマスコミは皆無だった(東京新聞でさえ)。
    それは司会の岩上氏が言うように、メディアがそれだけ欧米に洗脳されているということと、記者の取材不足、勉強不足ということだし、少しでもこれを見て世界情勢を勉強して欲しいもんだ。

    そして、岩上さん、お帰りなさい。
    無理なさらない程度にぼちぼちとこれからも貴重なインタビューをお願いします(^^♪

  3. 清沢満之 より:

    2015/08/19 【全編字幕付き!】「積極的平和」の生みの親・ガルトゥング博士に岩上安身が単独インタビュー!「安倍総理は言葉を乱用している」 〜博士の提言する日本の平和的安保政策とは?
    http://iwj.co.jp/wj/open/archives/258667

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