「中間報告で除染基準を変更しようという主旨はない。誤報だ」 除染基準の緩和について環境省が釈明!? 2014.8.18

記事公開日:2014.8.18取材地: テキスト動画
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(IWJ・原佑介)

 環境省が福島市など4市と除染の目安について再検討し、8月1日、中間報告をまとめた。この報告では、これまで重視してきた空間線量ではなく、個人の被曝線量に重点を置いて、除染を進めるなどと取りまとめられている。

 政府や自治体は、これまで、空間線量に基づいた除染計画を立て、長期的目標として、追加被曝線量「年間1ミリシーベルト以下」を掲げてきた。「毎時0.23マイクロシーベルト以下」である。しかし、今回の中間報告は、空間線量ではなく個人線量の平均をみて、「毎時0.3~0.6マイクロシーベルトで、年間1ミリシーベルト以下になる」という結論を導き出したものだ。

 これに対し、空間線量が思うように下がらないから基準を緩和したのではないか、との批判の声も上がっている。

 「放射能被ばくと健康管理のあり方に関する市民・専門家委員会」は8月18日、環境省、復興庁などに対して「除染目標の見直しに関する要請書」を提出し、中間報告の内容に疑問を呈した。

■ハイライト

  • 場所 環境省(東京都千代田区)

最低でも「0.23マイクロシーベルト」の堅持を

 市民側は、次の3点を要請した。

 「政府の除染対策地域の指定基準、除染目標として、少なくとも、空間線量で『0.23マイクロシーベルト』を堅持すること」

 「『0.23マイクロシーベルト』が、除染によって達成できないのであれば、自主避難者への支援、移住の支援、保養推進、保養計画への援助、検診の充実などの取り組みを実施すること」

 「『場の線量』と『個の線量』の二重の防護の考え方を堅持し、ガラスバッチによる個人線量重視の被曝防護に考えを変えないこと」

「中間報告で除染基準を変更しようという主旨はない。誤報だ」

 環境省は市民の要求に対し、真っ先に「一部新聞報道でそういう記述があるが、中間報告で除染基準を変更しようという主旨はない。誤解されている」と弁明。例えば、7月31日付の毎日新聞が、次のように報じていたが、こうした報道は誤りだという。

 「環境省は、東京電力福島第1原発事故による追加被ばく線量を年間1ミリシーベルト以下に抑えるための除染の目安を見直すことを決めた。これまで掲げてきた推計の空間線量『毎時0.23マイクロシーベルト』に代わり、実測値に即した『毎時0.3〜0.6マイクロシーベルト』とする」

 今回の中間報告は、2014年4月から4市と環境省が勉強会をし、そこで得た知見を整理してまとめたものであって、除染基準を見直そうと示したものではない、と環境省は説明を続ける。

 「『0.3〜0.6マイクロシーベルト』の地域の空間線量率では、追加被曝線量が『年間1ミリシーベルトに近かった』という知見を示した、ということで、新たな除染基準として示したわけではない」とし、基準を「毎時0.3~0.6マイクロシーベルト」へ緩和する考えはない、と明言。報道に対し、「特に福島県内のマスコミの方に正しく理解していただく取り組みをしていきたい」と話した。

「個の管理」か、「場の管理」か。

 復興庁は、「除染効果が現れない場合、避難支援などを充実させるべきだ」という市民の2つ目の要請に対し、「政府は、子ども被災者支援法などに基づく基本方針の中で、被災者生活方針のための施策を取りまとめている。そこで、政府は、支援を必要とする方々への施策を取りまとめてきた」と返答。

 「除染によって『毎時0.23マイクロシーベルト』が達成困難なら(避難させる)、ということではなく、健康不安に対する対策はとっている、という認識」だと話した。

 3つ目の「『場の線量』と『個の線量』の二重の防護の考え方を堅持」の要請について環境省は、「個の線量だけを重視しようと示したものではない」とし、「『場の線量』は重要だが、それぞれ汚染状況は違う。個人の被曝量を考える上で、『場の線量』だけに頼ると、誤った数値をもとに過剰に被曝する可能性もある」と説明した。

 これに対し、市民委員会は「放射線に関わらず、安全防護の考え方は、まず『リスクのある場所に入らない、近づかない』というのが第一段階。どうしても入る必要があるなら、その人の被曝量を管理する、という二段構えになっている。『場の管理』にだけにこだわると、『個の管理』を間違えてしまうという並列の考え方ではない。取り違えないでほしい」と指摘。『場の管理』があった上で、はじめて『個の管理』が存在すると説いた。

 これに対して環境省は、「住民の方も地元に残りたいという意向もあるだろうから、なかなか簡単には『線量が高いからここを出て行ってください』というわけにはいかない。そのための対策をどう考えるかと言ったら、その場の線量を重視することと、個の線量を重視していく、その両方の考え方が必要だと思う」と反論した。

「被爆のリスクを認めさせるしかない」

(…会員ページにつづく)

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