「JCO臨界事故では、被曝が1ミリシーベルト以上で検診を受けられる。一方、福島県民には『年間20ミリシーベルト以下は安全』という基幹政策。同じ国民として、1ミリシーベルトをきちんと守ってもらいたい」と、崎山比早子氏は訴えた。
福島第一原発事故被災者の健康管理の現状と課題を把握し、医学的な見地から専門的に検討するための「東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う住民の健康管理のあり方に関する専門家会議」が、3月26日、霞ヶ関のイイノカンファレンスセンターにて開催された。
環境省が主催し、第4回目となる今会合では、元国会事故調査委員で高木学校所属の崎山比早子氏と鹿児島大学の秋葉澄伯教授が出席し、専門家としての立場から意見を述べた。この会合では、まず被曝線量に係る評価を行い、その後、回を重ねながら、健康影響に係る評価し、最終的には健康管理のあり方について、まとめていく予定だ。
- 被ばく線量把握・評価に関すること
- 健康管理に関すること
- 医療に関する施策のあり方に関すること
もっと、茨城北部のデータがほしい
まず、第1回から第3回専門家会議での確認事項について議論が行われ、会議で使われるデータに関連する発言が相次いだ。甲状腺被曝に関連して、伴信彦委員は「福島原発の南側地域で、沈着に関してヨウ素とセシウムの比が高いというデータがある。食品のモニタリングでも、高い値は茨城で出ている。茨城北部の評価はどうなっているのか」と問いかけた。
事務局は「茨城県北部のデータは非常に限られていて、十分ではないかもしれないが、参考資料に大気拡散シミュレーションからの推計マップを載せている。他のデータがあることを指摘していただければ、用意したい」と回答した。伴委員は「東海村の施設で細かく測ったデータがあるはず。特に、茨城北部のデータを丁寧に見る必要がある」と指摘した。
現在の数字だけでわかったような評価をすべきではない
外部被曝に関して、春日文子委員から「福島の県民健康管理調査・基本調査の回収率は、必ずしも良くない。県では、簡易調査により回収率の向上を図っているところである。したがって、現在の集計結果だけで、わかったような評価をするのではなく、これからも行動調査を続けていく必要がある」と述べた。
石川広己委員は「これまで被曝線量に関して議論してきたことは、確かなものとして出していい。しかし、この議論は、細かくやればやるほど続くし、行動調査もまだ全部終わっていない。私たちが推測した以外の値を持っている人が、存在する可能性がある。バラつきはまだまだあることを認めた上で、現状における健康支援をどうしていくのかを議論するべき」と主張した。
東電から利益供与のある人がメンバーになるのは異常
崎山比早子氏は、国会事故調の福島第一原発事故原因調査報告を基に発言した。「調査によって明らかになったことは、電気事業者を監督すべき立場にあった規制当局が、その任務を果たしておらず、事業者は歴代の規制当局に、規制を緩めるよう強く圧力をかけていたこと。これが成功して安全対策がとられず、脆弱性を抱えたまま3.11を迎えたことから、この事故は人災といえる。関係者に共通していたのは、およそ原子力を扱う者に許されない無知と慢心であり、国民の安全を最優先とせず、組織の利益を最優先とする思いこみであった」と厳しく指摘した。
「被害にあった住民は、先の見えない避難所生活が続いている。その原因は、規制当局の住民の健康と安全を守る意思の欠如と対策の遅れ、被害住民の生活基盤回復の対応の遅れ、住民視点ではない情報公開にあると結論した。この状況は、報告書提出後、1年半以上経った今も変わっていない」と続けた。
さらに、「この原発事故を起こした東電は、何の責任も取らず、その東電から利益供与されている専門家が、事故の被害者の健康管理のあり方などを決める審議会のメンバーになっているのは異常な状態である。これは、正していただきたい」と断じた。
福島県外も、甲状腺以外も、すべての可能性を考慮せよ