集団的自衛権とともに安保法体系に呑み込まれる日本〜岩上安身による『検証・法治国家崩壊』著者・吉田敏浩氏インタビュー 2014.7.24

記事公開日:2014.7.25取材地: テキスト動画独自
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(IWJ・藤澤要)

 1959年に出された一つの最高裁判決が、その後の日本の歩みを決定づけた。しかも、その歩みは、一国の憲法の外部に、もう一つの法体系があるという異常な状態の中でなされてきた。

 『検証・法治国家崩壊』(創元社・2014年)は、駐留米軍基地に絡んだ日本での裁判に米国が関与し、その判決内容に決定的な影響を及ぼした経緯を、米国公文書の徹底調査により解明した労作である。この判決——砂川判決——により、日本には、一つの憲法に基づいた法体系が存在するにもかかわらず、日米安全保障条約に基づくもう一つの法体系が構築されていくことになる。

 その結果日本はどうなったか、またこれからどうなるのか。7月24日、著者の一人でジャーナリストの吉田敏浩氏に、岩上安身が聞いた。

■イントロ

砂川判決~公正さを失った司法の最高機関

 1955年3月、在日米軍飛行場の滑走路拡張が決定された。ジェット爆撃機の離発着を念頭に置いてのものだった。56年から57年にかけ、「駐留軍用地特措法」に基づいて、強制的な土地収用が進む中、拡張の対象とされた立川飛行場が立地した東京都砂川町では、農民や労働組合を中心とした反対運動が開始された。

 1957年7月8日、当局による強制測量に抗議するデモ隊と、警察との衝突が発生。この最中に、デモ隊の数人が米軍基地内に数メートル立ち入ったとして、「日米安全保障条約に基づく刑事特別法(刑特法)」違反で起訴された。

 東京地方裁判所で行われた第一審では、駐留米軍基地の存在は日本国憲法9条に違反するという判決が、伊達秋雄裁判長から言い渡された。「駐留米軍が違憲である以上、米軍基地への立ち入りを禁止する刑特法も違憲だという判決でした」。

 ところが、検察は、高裁への控訴を飛び越して、すぐさま最高裁判所への跳躍上告という、異例の動きに出る。結果、1959年12月の最高裁判決では、田中耕太郎裁判長により、「米軍駐留は違憲ではない」こと及び「日米安全保障条約のような高度な政治性をもつ条約について、違憲であるかの法的判断を下すことができない」ことを骨子とする判決が出された。

 特に後者の、最高裁が違憲かどうかの判断を回避し、司法の独立を事実上放棄した判断は、「統治行為論」と呼ばれるようになり、戦後日本の「国のかたち」をなす重要な柱として定着していってしまう。

マッカーサーの『伊達判決』を覆す政治工作

 吉田氏は、最高裁において、原判決から180度方向性の異なる判決が下された経緯には、米国による干渉があったと強調。近年の調査により明らかとなった事実を以下のように解説した。

 「駐日大使ダグラス・マッカーサー2世は、『伊達判決』が確定してしまえば、日本に駐留し訓練や海外への紛争に出撃するという、駐留米軍活動の根幹が揺らいでしまうことをすぐに察知しました。また、当時進められていた安保改定交渉の障害にもなるとみなします。

 そこで、高等裁判所を飛び越して、最高裁で『伊達判決』を覆すべく、密かに政府中枢に接触し、政治工作を行います。

 以上のことを共著者の新原昭治さんが、米国に保存されている秘密公電を調査し、明らかにしました。

 また、同じく共著者の末浪靖司さんが発見した文書によれば、マッカーサー大使と田中耕太郎・最高裁判所長官は、裁判期間中に接触を持っていたことが分かっています。田中長官は、裁判官同士の評議の内容をマッカーサー大使にもらし、裁判の見通しを告げていました」。

「安保法体系」と「憲法法体系」、日本は2つの法体系がある国だった!

 最高裁での「田中判決」は、「権威ある判例」として、その後の日本の歩みを決定づけた。これは、米国による内政干渉と主権侵害が、そのまま日本で「制度化」されてしまい、今日まで保たれてきたことを意味する。

 「憲法に違反するような、法律、政令、条例などは、本来ありえないはずですね」と吉田氏は語る。

 「ところが、日米地位協定では、米軍基地の排他的管理権が米国側にあります。つまり、基地をどのように使うかを決定する権限は米国にあり、日本政府はそれを規制できないことになっています。

 地位協定に基づき、安保特例法、特別法が20以上あります。たとえば、日本の航空法での最低安全高度、速度、騒音基準などが規制としてありますが、米軍機の飛行に関しては航空法に基づく規制は免除されているのです。

 このように、米軍の特権を保証した地位協定と、それに基づく特例法の体系を指して、憲法学者の長谷川正安氏は、『安保法体系』と呼びました」。

安保法体系に呑み込まれる国

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“集団的自衛権とともに安保法体系に呑み込まれる日本〜岩上安身による『検証・法治国家崩壊』著者・吉田敏浩氏インタビュー” への 3 件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見より) より:

    憲法より上位にある日米地位協定。これが未だ続く戦後史の正体。占領は終わっていないのだ。

  2. @elcondorpaさん(ツイッターのご意見より) より:

    安保法体系から憲法法体系の国にするための方法は・・

  3. 山下 由佳 より:

    世界人民法廷、国際人民法法廷で 日本が、福島原発事故を起こした構造と、事故収束できないでいる構造的暴力を捌いていただく必要がありますね。 アメリカ西海岸から、住民が避難移住しているとのことです。 原子力賠償条約に加盟していない日本は、10年以内に経済破綻、 新しい国家が誕生することになるでしょう。 その時、自分と家族、仲間が生き残れる道は、自然の懐にある価値を握っていること。 だから、エコビジレッジ運動なんですけどね。 食糧自給を確立させましょう。
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    http://twilog.org/costarica0012

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