「すべてが『実害』」 前双葉町長・井戸川克隆氏、石原環境相の「風評被害」発言を批判~岩上安身による前双葉町長・井戸川克隆氏インタビュー 2014.5.12

記事公開日:2014.5.12地域: テキスト 動画 独自
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(IWJ・ぎぎまき)

特集 3.11|特集 百人百話

 「石原環境大臣に、なぜ鼻血が出るのか立証して欲しい」ーー。

 週刊誌「ビッグコミックスピリッツ」に掲載された漫画「美味しんぼ」で、鼻血や体調不良について言及する発言が描かれた井戸川克隆前福島県双葉町長に5月12日、岩上安身がインタビューを行なった。井戸川氏は、石原伸晃環境大臣が、鼻血と福島原発事故による被曝の因果関係を事実上否定したことに対して、強い口調で反論。「私の人権を否定している」と批判した。

■イントロ

石原環境大臣に抗議声明!?

 石原大臣は5月9日の閣議後の記者会見で、「専門家からは福島第一原発の事故による被曝と鼻血との因果関係はないと評価が出ている。風評被害を引き起こすようなことがあってはならないと思う」と発言している。

 しかし、自民党は野党だった2012年、山谷えり子議員や森雅子議員などが、国会の場で、実際に鼻血が出るという被災者の声を取り上げ、当時の民主党政権の健康管理に関する対応を追及していた。

 井戸川氏は、こうした事実を踏まえていない石原大臣の発言を問題視。「政治家たるものは、関連性、連続性の中で責任を負っていかなければいけない。その都度、回答が変わっていくのはおかしい」と批判した。「今後、石原大臣に抗議する意志はあるか」と岩上安身が聞くと、「ここまで言えば、石原大臣にも伝わって、何らかの対応を取っていただけるのではないか」と、石原大臣に向けた抗議声明とも取れるコメントを投げかけた。

 今でも日々、鼻血が出ているという井戸川氏だが、石原大臣の発言をうけて、自身のFacebookでティッシュが真っ赤に染まった写真を掲載している。鼻血を風評被害だとするバッシングに対しても、「(鼻血が)嘘だという意見について苦々しく思っていた。他人がとやかく否定したり、外部の人間がとやかく言ったりしてはいけない。実体験した人に直接話しをきいてそれから評価して欲しい」と真っ向から批判した。

 なお、「美味しんぼ」の鼻血を巡る表現について井戸川氏は、「ちゃんと書いていると思う」と評価している。

福島県民は東京の被害者にされている

 井戸川氏は、チェルノブイリの場合、年間の放射線量が5ミリシーベルトを超える地域の住民を強制避難させたことに言及し、年間20ミリシーベルト以下であれば「居住可能」とされている日本政府の対応を「人権無視」だと非難した。

 「(放射能と)騒ぐと地価が下がる。土地が売れない。その差額はまさに実害です。商売ができないというのも、健康被害も実害。しかし、すべての実害を認めると、賠償ができない。原発も売れない。再稼働もできないでしょう。私たちは東京の犠牲者にされている、一方的に植民地の状態にされているんです」

 井戸川氏は、続ける。

 「今は良くても、積み重なっていくと、とんでもないことになる。安全だと言って作ったものを売って、将来、それを信じて食べていた人から訴えられたらどうしますか。原発から20-30km圏内の人だけが請求できるという、まやかしに乗ってはいけない。それは、加害者が勝手に決めていることです。私は、福島県民を痛めつけたいとか、冒涜したいわけではないんです」

 井戸川氏は、向かうべき加害者に非難が行く代わりに、住民同士が対立させられている背景に、「風評被害キャンペーン」の成功があると指摘。安全だと言われ続けてきた原発が事故を起こし、これまで存在していなかった放射能に晒されている今、すべての実害に対し、堂々と、賠償を請求すべきだと呼びかけた。

削除された報告書の文言

 井戸川氏はこれまでの講演会などの中で、政府の地震調査委員会が、東日本大震災直前の2011年2月に作成した報告書の問題を訴え続けている。政府は当初、報告書に、東北地方の津波について「いつ起きてもおかしくない」と警戒を促す記述を盛り込むことを検討しながら、委員の議論のすえ見送っていた。

 報告書は、震災の8日前、文科省と東京電力による非公式の会合の場で提出され、東電の要求によりさらに表現を弱めた文面が作成されたが、結局外部に公表されることはなかった。

 井戸川氏はこの問題について、「とんでもないこと」と強く批判。「これが公開されていれば、津波で死なずにすんだ方がいたはずです。政府は税金を取っているのですから、国民を守る義務があるはずです。だから私は、このことをずっと訴えているんです」と語った。

現双葉町長と公開対談も

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4件のコメント “「すべてが『実害』」 前双葉町長・井戸川克隆氏、石原環境相の「風評被害」発言を批判~岩上安身による前双葉町長・井戸川克隆氏インタビュー

  1. 前双葉町長のおっしゃるとおりです。
    風評被害を訴える、訴えた方は将来責任が取れるのでしょうか?
    被害にあって将来苦しむのは福島県民です。

  2. 国・政府や県をきちんと批判する井戸川さんには敬意を表したい。

    環境省と福島県は鼻血による風評被害を訴えているが、それより遥かに大きな「風評被害」があるので、ここではそれに触れたい。
    現在、多くの外国(米国、EU、中国、東南アジア、中東諸国・・・)が東日本の食品の輸入を規制している。輸入停止や日本政府の検査・産地証明書などの措置をとっているのだ。(注1) こうした規制による農水産物の損失は計り知れない。なぜ、福島その他の県はこれを「風評被害」として抗議しないのか。

    マスコミは一切この問題に触れない。触れれば、今度は国内で東日本の食品が売れなくなるからだ。
    以前、日本のマスコミは、韓国による東日本の農水産物の輸入規制を報じたが、このときも米国その他の多くの国も同様な規制措置をとっていたにもかかわらず、韓国の規制のみを報道した。

    「美味しんぼ」のような国内の小さなメディアには国と県、マスコミは一斉に非難するが、外国には反論しないし報道も行わない。
    同様なことは、農水産物の放射能調査結果についても言える。東日本の農産物と川魚、太平洋の多くの魚が汚染されているにもかかわらず、そして各都道府県や水産庁が数値を公表しているにもかかわらず、マスコミは一切報道しない。(注2)
    こうして日本国民は東日本の食品は安全だと信じ込んでしまうのだ。

    極め付きは、福島原発から毎日、大気中に2億4千万ベクレルの放射性物質が放出されていて、東電の廣瀬社長も国会で証言している(昨年の10月)にもかかわらず、マスコミは全く報道しないことだ。

    (注1)農水産庁「諸外国・地域の規制措置」http://www.maff.go.jp/j/press/kokusai/yusyutu/pdf/110513-01.pdf

    (注2)水産庁「水産物の放射性物質調査結果http://www.jfa.maff.go.jp/j/sigen/housyaseibussitutyousakekka/pdf/110930_result_jp.pdf

  3. 「美味しんぼ」休載は以前から決まっていた。確信犯と言われても
    仕方が無い。騒ぎを起こして「とんずら」したように見える。
    こういうやり方は信頼を失う。

  4. 当事者の声に耳を傾けよう、被害者同士で揉めてる場合じゃないよ。

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