「復興の名の下に、福島の子どもたちは健康被害に曝されている」 〜井戸川克隆氏(前双葉町長)講演会&原発賠償裁判・京都原告団を支援する会 結成集会 2013.10.20

記事公開日:2013.10.20取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ 富山/奥松)

 「どうして事故が起きたのか? 責任はどこにあるのか? 多くの方々に関心を持っていただきたい」──。

 2013年10月20日(火)、京都市南区の京都テルサで、「政府・東電に加害責任あり! 避難の権利・幸せに生きる権利を!」と題して、前双葉町長の井戸川克隆氏の講演会と、原発賠償裁判・京都原告団を支援する会の結成集会が行われた。

 井戸川氏は、事故から現在に至る自身の体験を語り、「福島の事故を、世界は反省材料にしてほしい」と述べた。原発賠償裁判・京都原告団の萩原ゆきみ氏は「国民の多くが真実を知らないが故に、非人道的なことがまかり通っている」と、避難者の現状を訴えた。

■全編動画 1/2井戸川氏講演

■全編動画 2/2集会

国と東電は事故の責任を国民に転嫁しようとしている

 前双葉町長の井戸川克隆氏は、3.11を経験し、その後、現在に至るまでの体験を語る中で、「今、一番心配なのは、福島県に住んでいる人々の健康、被曝の影響である」と述べた。また、放射能を「無主物」とし、事故の責任を国民に転嫁しようとする国と東電の姿勢や、被災者を救済せず、放置したまま原子力政策を推進する国の僕(しもべ)となっている県の首長たちの姿勢を疑問視し、「彼らは、事故処理費用を安く済ませることしか頭にないのだろう」と批判した。

「放射能の放出、国民は騒がない」と学習した規制委員会

 「世界は、福島県での事故を反省材料にしてほしい」と話す井戸川氏は、県民の命よりも金儲けが優先され、復興という名の下に、福島の子どもたちが健康被害に曝されている実態を語った。続いて、原子力規制委員会の原発に対する新基準に関して、ベントによる放射能の管理放出を問題視した。「今回の原発事故で、規制委員会は、放射能を外部に放出しても国民は騒がないことを学んでしまった。放射能を外部放出しないこと。これを厳守させるよう、われわれは訴えなければならない」と述べた。

 講演の最後に「地球資源は独裁者や企業のものでなく、人類の共有財産である」と語った井戸川氏は、資本主義の見直しの必要性を説き、「皆さんは傍観者ではない。一人ひとりが置かれている立場を遠慮せずに主張していかないと、原子力を推進する者たちに負けてしまう」と訴えかけた。

原発賠償裁判の意義

 続いて、原発賠償裁判・京都原告団を支援する会の結成集会が行われた。事務局の奥森氏は、国に対して原発事故の損害賠償を求める活動の経緯を語り、「原子力損害賠償法自体が、原子力事業推進のためのものである」と実態を解説した。

 また、裁判の意義については、東電と国の加害責任の追及を挙げ、「現在、国と東電に対して4億2750万円の損害賠償を求めて提訴している。国も東電も加害責任を負おうとしないが、国際的な基準や考え方から大きく逸脱している両者の対応は、許されるべきものでない」と述べた。

避難者の訴え「私たちを孤立させないで」

 京都原告団の共同代表で、福島県郡山市から京都に避難した萩原ゆきみ氏は、原発事故によって家を失い、家族がバラバラになり、地域が分断されていった苦しみを語った。自身の体験を振り返る中で、萩原氏は「わが家を含め、どれほど多くの人々が精神的、経済的に苦しんでいるか計り知れない。事故後、さまざまな地域の市議会議員、国会議員と話す機会があったが、日本の未来を本当に考えている人は、ごくわずかであった。国民に真実を知らせず、被災者と避難者にきちんとした支援を行わず、自分たちが加害者であることも認めない、国と東電の姿勢は許せない」と述べた。

 また、この裁判の意義が、被災者を見捨てずに共に歩んでいくことで、すべての国民の未来を守ることにつながる点を強調。「被災地の人々が、声を上げられるような環境作りを目指す」と説明した。

 最後に、「国民の多くが真実を知らないが故に、非人道的なことが、まかり通ってしまう現状がある。どうか、私たちを孤立させないで。国民一人ひとりが自身の問題として応援してほしい。それを通して、この国の民を一緒に守ってもらいたい」と話した。

「過去」として流し去ってはいけない問題

 弁護団の中村弁護士は「避難者は事実上、マイノリティである。毎日のニュースによって、過去がどんどん流されてしまうが、この問題は流してはいけない」と述べた。「そのためには、支援する人たちが、原発事故の被害を風化させないように意識することが必要だ。写真展や、勉強会などを通じて、彼らを支援してほしい」と述べた。

 最後に、奥森氏が「この原発事故によって、多くの被災者、避難者が生まれてしまった。彼らが幸せに生きていけることを真ん中に据えて、活動していきたい」と語った。

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