「放射性物質の恐ろしさは、蓄積する恐ろしさだ」──。
2014年2月16日、愛媛県八幡浜市の八幡浜市民会館で、前福島県双葉町長・井戸川克隆氏の講演会が行われた。井戸川氏は「福島原発事故は自然災害だから想定外と言うが、東電は津波の計算をして危険性を認識していた」と述べ、「何から何まで嘘をついてやっているのが、原子力発電所である」と語った。
(IWJテキストスタッフ 花山/奥松)
「放射性物質の恐ろしさは、蓄積する恐ろしさだ」──。
2014年2月16日、愛媛県八幡浜市の八幡浜市民会館で、前福島県双葉町長・井戸川克隆氏の講演会が行われた。井戸川氏は「福島原発事故は自然災害だから想定外と言うが、東電は津波の計算をして危険性を認識していた」と述べ、「何から何まで嘘をついてやっているのが、原子力発電所である」と語った。
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井戸川氏は冒頭、「原発は、放射能を出すものである。あるいは、プルトニウムを作る装置。これは、以前から理解していた。しかし、放射能を出さない、いわゆる『止める・閉じ込める・冷やす』は、絶対に守られる大原則とのもとに了解していた。今回、ものの見事に、その前提条件を壊した。壊したのは電力会社であり、国である。これを放置するわけにはいかない。原発は、危険である」と指摘した。
全国原子力発電所所在市町村協議会の副会長として、自身が、原発と共生する道を選んできたことにも触れ、「原発を、全面的に肯定していたわけではない。全原協では、絶えず事故防止対策を要望事項の筆頭に上げている。事故のないことを前提条件にしてきたことを、理解していただきたい。そういう中でも、正しい情報が出されなければ、正しい議論はできない。この事故を経験して、本当に正しい情報が出されていなかった、と痛感した」と述べた。
井戸川氏は、再稼働に関して、「議会で決められる項目に『再稼働』は入っていない。町長の権限でもない。地方自治法の決裁事項として、『再稼働』というものはない。それを、『市町村長が合意したから』と言っているが、政府が都合の良い解釈をしているだけで、地方自治法上は、違法だ。再稼働を決められるのは、住んでる人たちだけである」とした。
さらに、再稼働シナリオが進むことに触れて、「国は、津波で壊れてしまう原発に合格を与えてきた責任を知らん振りして、原発の再稼働シナリオを作っている。しかし、これまでに再稼働問題について、住民との意見交換会はあったでしょうか」と問いかけ、民主主義社会における行政手続が欠落していることに警戒感を示した。
福島事故での失敗について、井戸川氏は「東京電力は、日本一のガリバー企業で、日本政府がついてるから、何があっても大丈夫だと思い込んでいた」と述べ、「しかし、事故が起きてみたら、逃げるのだ。『放射能は自分のものではない』と主張する。だから、再稼働前には、電力会社の責任確認が必要である。第1次責任者は電力会社、第2次責任者は監督責任のある国だということを、住民が主体となって、契約することが必要である」と続けた。
井戸川氏は、原発を再稼働する前にやることとして、まず、「福島に学ぶこと」を挙げ、次のように語った。「国からの避難指示は、3月12日午前5時54分に出された。それ以外は、何もない。だから、避難指示は、私なりに解釈した。放射能からの避難は、放射能がないところまで避難すべきである。そこで、町民の健康を守ることを優先して、避難先に埼玉を選んだ。ところが、福島県内でこの行動に出たのは、私以外にはいない」。
続いて、「交渉団体の設立を急ぐこと」と述べた。「事故が起きてしまうと、賠償などの交渉団体を作らせないように分断される。だから、事故に遭う前に作っておいた方がいい」と提案した。そして、福島のようにならないために、「契約すること」を強調した。
「原発事業者には、再稼働前に、いかなる免責も与えないこと。自然災害の場合には不可抗力だからいい、などということは、絶対に駄目である。それから、放射能を自然界に出させないこと。事故で避難するのは、原発であること。立地を、放射能のゴミ置き場にしないこと。これらについて、契約しておく。再稼働の了解者には責任があるので、事故の全損害の賠償を、住民と契約するべきだ」と述べ、「これらは可能であり、皆さんがやらないだけ」と指摘した。
現在、進められている「帰還計画」について、井戸川氏は「福島の基準が20ミリシーベルト/年で作られ、福島県民がそこに戻れば、今後は(原発事故があった場合)、20ミリシーベルト/年の基準で帰還しなければならないことになる。今、前例が作られようとしている。今、起こっていることは、すべての国民の問題である」と危機感を表明した。
さらに、「福島には『救済計画』はなく、救済をせずに『復興』に舵を切ってしまった。これは、問題を先送りしただけで、県民はやがて後悔するだろう。完全な救済をせずに、復興と言っても駄目だ」と主張。
「放射性物質の恐ろしさは、測った時ではなく、蓄積の恐ろしさである。放射能からの避難が中途半端であることから、再稼働の条件として、『仮の街』を200キロメートル以上離れたところに作らせる必要がある」との考えを示した。
この声が愛媛県民に届いてほしい。