2014/03/07 「メディアは嘘のリークに騙されないで」 PC遠隔操作事件の片山祐輔被告と佐藤博史弁護士に岩上安身が緊急生インタビュー  

記事公開日:2014.3.7
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特集 PC遠隔操作事件

 直接的な証拠が提示されないまま、1年間も留置所・拘置所生活を余儀なくされていた、PC遠隔操作事件の片山祐輔被告が2014年3月5日、保釈された。翌々日の3月7日、片山氏は佐藤博史弁護士とともに、岩上安身の緊急単独インタビューに応えた。裁判中の「被告」が生中継のぶっつけ本番のインタビューに出演するという異例。「何もやましいことは無いので、求められた取材には応じようと割り切っている」と語った片山氏は、逮捕当日の様子や理不尽な取り調べの模様、警察・検察側が出してきた「証拠」の矛盾を指摘し、自らの身の潔白をあらためて表明した。

 インタビューにはITジャーナリストの三上洋氏も同席し、片山氏に質問するなど、中身の濃い4時間のロングインタビューとなった。片山氏もやや緊張しながらも、落ち着いた様子で一つ一つ丁寧に応答した。

■イントロ

  • 日時 2014年3月7日(金)16:00~

「拘置所の中では心配ばかりしていた」家族への思い

 当初、片山氏の保釈は4日に、高裁から許可が降りていた。しかしこれに不服として東京高検が異例の特別抗告。一転して高裁は保釈の執行停止を認めた。一方の最高裁は、この高検の特別抗告を退け、保釈を認めた。検察の手続きのミスが発覚したことから、高裁もこれ以上勾留しないことを決め、5日夜に正式に保釈された。

■保釈会見の模様

 保釈保証金1000万円は、片山氏の母親が用意した。片山氏は、「老後の蓄えから苦労して集めたということを聞いて、何もなければ戻ってくるお金だが、とにかく母にはとても感謝している」と、思いを口にした。

 「父は5年前に亡くなった。自分が母を支えなければとずっと思っていた。結婚しても母と暮らそうと。保釈されて、『祐輔、大丈夫?』と声をかけてくれた母は声に張りがなくなっていた。外見的にも肉体的にも一番ダメージを受けたのは母だろう」。

 母への思いとは裏腹に、片山氏は逮捕されて保釈されるまで約1年もの間、家族とは接見禁止の状態に置かれた。片山氏はこの措置について、「苦痛以外の何ものでもなかった。これまでこんなに家族と会わないことはなかった。母の健康、弟の仕事への影響など心配ばかりだった」と振り返った。
 

突然の逮捕

 2013年2月10日に、自宅に押しかけた警察によって逮捕されるまで、片山氏は自分が捜査線上に浮かんでいるとは夢にも思わなかったという。

 逮捕当日の様子について、片山氏はこう振り返った。

 「ある日、何十人もの捜査員が押しかけてきた。捜査のリーダーのキャリア官僚のような人が、自分を見つけるなり第一声、『会いたかったよ』と言ってきた」。

 まさに突然の出来事だったという片山氏。家宅捜索の際は母親は別室に、片山氏は居間に隔離され、2時間後に何の前触れもなく逮捕状を読み上げられたという。

 片山氏は、「家宅捜索までは分かる。しかし、大勢のマスコミを引き連れて、逮捕状まで持ってきた。家宅捜索後に押収した物を分析し、自分を任意で取り調べをすれば、証拠に多くの矛盾があることが分かったはずだ。そういうプロセスを一切無視して逮捕された」と、当時の警察の捜査手法に対し怒りを滲ませた。

 逮捕され、手錠をはめられ外に出ると、一斉にストロボを浴びせられた。捜査員は片山氏に対し「我々がリークしたのではない。マスコミも警察と同じようなことをしてるんだよ」と誤魔化したというが、片山氏は「明らかにリークですよね」と振り返る。

 その後も、この事件では警察・検察から「片山氏が犯人だという証拠」なるものが幾度となくマスコミにリークされ、新聞・テレビがそれを大々的に報じる、ということが繰り返された。しかし、その証拠が虚偽であったり、事実無根、矛盾を含むものだと次々判明しても、大手メディアは訂正報道をほとんど行わなかった。

片山氏の「取り調べ拒否」報道の真相

 連日にわたる取り調べでは、当初はほとんど違和感を感じなかったという。しかし、その後佐藤弁護士と取り調べについて振り返っている時に、身上調書に問題があったことが分かったという。

 真犯人の自作したプログラム「iesys.exe(アイシスドットエグゼ)」は「C#」というプログラム言語で書かれている。しかし、片山氏は「C#」を使えないという。一度だけ、「C#」のサンプルのプログラムを持っていたので、少し改変して知り合いに渡したことがあるのみだ。

 身上調書を取られる際、捜査員から「C#は使えるのか?」という問いに、「テスト工程だけなら」と答えてしまったところ、それが「経験した言語」とされてしまったという。前述の知り合いは警察の聴取に対し、「片山氏は私の目の前でC#をスラスラと書き始めた。彼がC#を書けないのは信じられない」と言ったと、警察の調書には書かれている。片山氏は「事実でない事が含まれている調書だ」と指摘した。結局、片山氏のPCからは、「C#」で書かれたものや、その痕跡は見つかっていない。

 こうした「トリッキーな取り調べ」を防ごうと、佐藤弁護士はきちんと録音・録画をしないと取り調べに応じないよう、片山氏にアドバイスした。「録音・録画をすれば黙秘権を行使しない」と異例なまでの譲歩を行ったが、警察は応じなかったという。

 これを大手メディアは、その経緯も「録音・録画がない限りは」という部分も黙殺して、ただ「片山さんが取り調べを拒否」、という報道を行った。

「罪を認めるか認めないか、どちらが得か考えてみな」

 片山氏が「一番キツい取り調べだった」と振り返るのが、自ら「特捜部出身」と自己紹介をしてきた水庫(くら)検事の詰問と揺さぶりだ。

 水庫検事は、「証拠の評価からすると、君は有罪だ。やっているけれど認めないか、やっていないから認めないか、いくつか選択肢はあるが、君はどうするのが得か考えてみな」と、直接的な揺さぶりをいくつもかけられたという。

 また、「無実というなら、無実を証明できるようなものを教えてよ」と言われたので、片山氏が「自分の周りの人間に聞けば自分が『C#』を使えないことが証明できる」と答えたところ、水庫検事は「隠れて勉強したんだろ」とまで言ってきたという。

江ノ島の「防犯カメラ映像」の疑問

 警察・検察側が証拠として出してきているものに、江ノ島の防犯カメラの映像がある。真犯人は江ノ島で猫の首輪にmicroSDカードを仕込み、その猫を記念撮影し送りつけている。江ノ島の防犯カメラの映像には、片山氏が猫に接触する姿が映っており、捜査当局はこれが決定的な証拠だ、とマスコミにリークまでしている。しかし、片山氏と佐藤弁護士は、この「証拠」とされる映像に、いくつもの疑問点があると説明した。

 防犯カメラは前年(2012年)12月に設置された、解像度の良い最新型でかなりの鮮明さがあるという。にも関わらず、検察が証拠として出してきたのは鮮明さが1/6になったDVDだった。片山氏側は、鮮明な元データを出して欲しいと要求しているが、なんと検察側は「手持ち証拠には存在しない」と出してこないのだという。もし鮮明な映像を観れば、片山氏が問題の猫に首輪を付けたか否か、写真を撮ったか否かなど、重要な「証拠」がよりはっきりする可能性がある。

 疑問はまだまだある。カメラ映像の片山氏は白い毛糸の手袋をしており、猫に接触したシーンで手袋を取った様子は見られないという。手袋をはめたままスマートフォンで写真を撮るのは、かなりの困難を要する。また、映像の片山氏は常に「左手」で「スマートフォン」を操作しているが、検察は、再現実験の際に「右手」を使い「デジカメ」で猫の写真を撮影している。 

「雲取山で片山氏が埋めた証拠はないが…」 検察から飛び出した仰天主張

 犯人がUSBメモリを山頂に埋めたという雲取山についても、多くの疑問があるという。先述の水庫検事は、「犯人も君も、雲取山なんてマイナーな山に行ってるなんて偶然だね」と追及してきたという。しかし「登山が趣味」という片山氏は、「雲取山は東京都最高峰であり、登山に興味がある人なら誰でも知っている山だ」と語り、水庫検事の知識不足を批判した。

 さらに片山氏は、「2012年12月1日に雲取山へ行ったのは事実だが、山頂付近では常に他の登山客が3人以上はおり、誰かが常に景色をカメラで撮っているような状況で、かつ見晴らしの良い、木陰でもなんでもない場所で、スコップで穴を掘って何かを埋めるのは到底無理です」と語った。

 検察側も、USBメモリが埋められたのは12月1日「頃」としており、片山氏が埋めたということを断定できずにいる。佐藤弁護士がこの点を追及すると検察は、「片山氏が埋めた証拠はない」と認めたという。すると検察は、「片山氏が『情報を知らない第三者』に埋めさせた可能性がある」と主張してきたという。佐藤弁護士は呆れながら、「『情報を知る第三者』は『共犯者』だが、『情報を知らない第三者』なら『一般人』。普通名乗り出るでしょう。片山さんが犯人だという前提の、無理のあるストーリーだ」と喝破した。

検察の強硬な態度の裏に、日米のサイバーセキュリティ構想の影

 もう一つ、この事件の捜査には不可解な点がある。それが、米国FBIが提供してきたという「証拠」だ。最後の切り札として検察が出してきたFBI情報だが、蓋を開けてみたら、それは「遠隔操作ウィルスがファイル共有サービス『Dropbox』内に見つかった」というものだった。もちろん、片山氏とは何の関係もなく、検察もその後、「片山さんが犯人であることの立証のためのものではない」と認めている。

 しかし大手メディアは、「FBIの協力により、片山氏の職場で作成されたことを示す痕跡が残っていた」と虚偽の内容を繰り返し報じた。

(記事構成:佐々木隼也)

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