「復興資金を流用する仕掛けを作った、環境省の罪は重い」震災がれきの全国広域化問題 〜青木泰さん講演会 2013.6.24

記事公開日:2013.6.24取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)

 2013年6月24日(月)18時45分より、大阪市中央区のエルおおさかで、「青木泰さん講演会」が開かれた。青木泰氏は「震災がれき広域処理で、環境省が進めてきたことは、復興のためのがれき処理でなく、自治体に予算を使わせることだった」と指摘した。

■全編動画(18:57~ 2時間4分)

  • 内容「震災がれきの全国広域化問題 〜岩手の行政対応と環境省の国会答弁から見えてきた現状と課題」
  • 出席者
    青木泰氏(環境ジャーナリスト)
    下地真樹氏(阪南大学経済学部経済学科准教授)
    松下勝則氏(震災復興プロジェクト近畿)
  • 日時 2013年6月24日(月)18:45~
  • 場所 エルおおさか(大阪府大阪市)
  • 詳細

 青木泰氏は、今、問題になっている、がれきの広域処理政策の責任追及と、被災地のがれきによる二次被曝の防止について話した。「4月26日から、富山県高岡市が、がれきの本格焼却に入った。なぜ、今頃なのか。環境省が、復興資金の流用化問題の発覚により、『今後は厳密に、がれきを受け入れたところだけに交付金を支給する』と発表したからである。これを逆読みすると、高岡市は、先に復興資金から18億円を受け取ってしまった。だから、がれきを受け入れないとつじつまが合わなくなる、ということである。大阪では、堺市で86億円もの交付金を受け取っている。そのため、大阪府として、がれきを受け入れないといけない。こうした中で、環境省の描いたストーリーが、だんだん見えてきた」。

 続けて、「当初は、『がれきを受け入れなければ、被災地の復興は始まらない』として進められてきたわけだが、もう、そんなことはどこかに行ってしまった。松下勝則氏が、堺市に取材を続けて気づいたということだが、環境省は堺市に対して、『復興枠で補助金を使ってくれ』としつこく迫った、という。その時、環境省は『がれきを受け入れるために検討してくれ』とは、ひと言も言っていない。環境省の関心事は、あり余ったお金を使ってくれ、ということでしかなかった。これは本当に許せない」と断じた。

 青木氏は「復興資金の流用化問題では、耐震工事をしたり、原子力の研究をしたり、いろいろな話があった。役人にもいろいろな人間がいて、裁量権を持った人間が適当なことやることはある。だが、省庁としてきちんと方針を立てて、復興資金を流用する仕掛けを作ったのは環境省だけ。そういう意味では、環境省の罪は重い」と指摘した。

 次に、青木氏は「環境省が、がれき処理の広域化を進める中で、『環境省が引き受ける』と言っていた高濃度の汚染廃棄物を、福島県東白河郡の鮫川村で、民間業者に委託して焼却しようとしている」と語り、これを新たな問題として取り上げた。

 「鮫川村での廃棄物焼却計画は、世界で初めての暴挙。現地を見に行ったが、施設は鮫川村の山の頂上部分にある。なぜ山の頂上で焼却するのかというと、焼却したものがどこかに蓄積するとまずいからだ。山の上だと、全方向にばらまくことができる。そして、焼却施設を水源地に作っている。なぜ水源地か。焼却すると汚染物の洗浄などで、必ず水が必要になるから。しかし、水源地なので、当然、周辺の田畑に水を送る用水路になっている。こういうところに、高濃度の放射性廃棄物の焼却施設を作ろうとしているのだ」と憤った。
 さらに、青木氏は「もっとひどい話が塙町である。鮫川村の隣だが、塙町のやはり山頂、やはり水源地で計画されているのは、バイオマス発電施設。バイオマス発電とは、日本の森林をもう一度再生していくために、間伐材などを利用する発電方法。基本的には資源再生のための良い方法ではあるが、塙町では、産業廃棄物として排出されるがれき、製材のくず、森林除染によって出た間伐材、この3種類を燃やす。森林除染で集めたものを、なぜ燃やすのか。本来、除染で出たものは、そのままにしておくしかない」と、塙町木質バイオマス発電事業についても批判。

 「予算を使い切れないからといって、田舎の山の上に大きな焼却炉を建て、除染したものを燃やすなど、とんでもない。以前、中国政府が鉄道事故を隠すため、検証もせずに現場に土砂をかぶせた。馬鹿なことをしたと世界から笑われたが、環境省は、それと同じことをしようとしている。がれきの問題から、環境汚染の戦いは、まだまだ続いていく」。

 また、青木氏は環境法の改悪問題に関して、「従来の環境法の中では、放射性物質及び汚染物は除外規定。だから、がれき処理が全国広域化する時に、法体制を整備せずに汚染物を全国にばらまいた。取り締まらなければならない自治体の長が、どうやって取り締まれるのか。このように本質的な裏付けがない状態なので、早く法整備を、と言い続けて、ようやく環境法の中で、放射性物質及びその汚染物を位置づける動きになってきた。ところが最後の最後で、監視をする権限を、都道府県知事から移して、環境省が持つことになった。汚染廃棄物、がれきの処理、除染を、環境省は何兆円もの事業として進めようとしている。巨額の事業をやろうとしているものが、同時に監視も行い、規制をかけることができるのか。それは無理である」と指摘した。

 質疑応答で、「環境省の役人は、がれき広域処理を理由に、権限の維持、自分たちの成績のために予算を無理矢理使い切ろうとしている。こういうことを役人がした場合に、市民がおかしいと訴えることは難しいのか」との質問があった。青木氏とともに、がれき広域処理問題に取り組む下地真樹氏は、「行政の行為として、判断のプロセスや裁量権がある。裁量権の乱用であることを立証するのは、とても難しい。これまでの案件が少ないので、どのあたりが職権乱用になるのかということも、枠組みができていない。もうひとつの問題は、裁判所も行政にかなり近い考え方をする、ということだ。行政側が裁量権を超えて乱用域に入っている、と判断するのは相当重く、こういうことに対して裁判所は消極的である。しかし、今回の件は相当ひどい」と答えた。

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