2013年5月30日(木)午後、大阪市庁と大阪府庁で、震災がれきの広域処理に関する公金支出の差し止めを求める、住民監査請求が行われた。震災がれきの広域処理の必要性を示す情報の開示が、いつまでもなされないことに、下地真樹氏ら請求人の怒りは高まるばかりであった。請求手続き終了後に開かれた記者会見では、これまでの自治体の不誠実な対応が明らかにされた。
(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)
2013年5月30日(木)午後、大阪市庁と大阪府庁で、震災がれきの広域処理に関する公金支出の差し止めを求める、住民監査請求が行われた。震災がれきの広域処理の必要性を示す情報の開示が、いつまでもなされないことに、下地真樹氏ら請求人の怒りは高まるばかりであった。請求手続き終了後に開かれた記者会見では、これまでの自治体の不誠実な対応が明らかにされた。
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・1/3(13:24~ 21分間) 大阪市庁での監査請求の模様
※大阪市庁では庁舎管理規則の都合により、一部音声のみとなっております。何卒ご了承ください。
・2/3(13:52~ 36分間)
・3/3(14:52~ 1時間32分) 冒頭~大阪府庁での監査請求の模様、37分28秒~記者会見
下地氏ら請求人は、今年の1月18日と3月28日にも、大阪府と大阪市に対し、震災がれきの広域処理に関する違法もしくは不当な公金支出の差し止めを求める住民監査請求を行っている。しかし、審査によりいずれも却下されており、これを不服とした請求人は、今回、外部監査人による監査の請求に踏み切った。
14時過ぎ、下地氏ら請求人の代表者グループは、まず、大阪市庁の行政委員会事務局を訪れた。2人の担当者と対座した下地氏は、「広域がれき処理問題に関する監査を請求する。今日で3回目だ」と切り出した。請求人は、岩手県が抱える震災がれきの総量が、本当に広域処理(=大阪にも処理してもらう)が必要となるほどのものなのかを、大阪府・大阪市が把握していない点を問題視している。
下地氏は「大阪市の監査人は、見当違いの回答しかよこさない」と不満を口にし、「いい加減にしてほしい。今回は監査請求を、外部の人にお願いする。大阪市の監査委員は、十分な仕事をしていない。監査委員に支払われる手当に対し、監査請求をしたいぐらいだ。最低でも、岩手県から、がれきの総量がきちんと記された情報を入手するぐらいのことはやってほしい」と畳み掛けた。
監査請求に必要な書類一式を担当者に手渡したあと、下地氏は「(わざわざ輸送コストをかけて)大阪まで、がれきを運んでくる必要が本当にあるのかを知るために、岩手県が抱える震災がれきの総量を明らかにしてほしいというのは、大阪市民として極めてまっとうな要求だ。その要求が通らないというのは、もはや、この事務局や住民監査請求の制度自体に問題がある、と言わざるを得ない」と厳しい口調で詰め寄った。
次に訪れた大阪府庁では、個室ではなく、事務スペースの中にある応接椅子に座ってのやり取りとなった。3回目の監査請求を行う理由などについては、下地氏が市庁での請求と同様に述べた。必要な事務手続きが手短に終わると、帰り際に請求人の女性市民が、「今度こそ、よろしくお願いします」と、軟らかい口調で訴えた。
その後、大阪府庁内にある大阪府政記者クラブで、記者会見が開かれた。下地氏は「住民監査請求という制度自体が、形骸化しているように思う。われわれが請求しても、監査委員の手抜きがひどいと感じた」と批判した上で、行政訴訟に踏み切らなかった理由を、こう語った。「役所の自己解決能力に期待している。行政に対し、市民が不満を抱いた場合、法的な紛争を経て解決しなければならないというのは、われわれ市民にとっても辛いことだ」。
そして、下地氏は「市民有志による調査結果を報告する」と述べ、調査を担当した松下勝則氏にマイクを譲った。
松下氏は、岩手県への情報開示請求について話した。「広域処理が必要なほど、岩手県にがれきがあるのかを確かめるため、情報開示請求をした。まず、わかったのは、応用地質という民間企業が、岩手県から委託を受けて、がれきの調査を行っているということだ」。そこで、松下氏らは岩手県に対し、応用地質が調査したデータの開示請求を、今年に1月に行った。しかし、岩手県は、何ら通知をしてこなかったという。松下氏は「通常は、15日以内に開示決定通知がなされるが、通知があったのは3月に入ってからのこと。調査データは開示されず、『広域化必要量の一覧表』という資料が届いたのだが、肝心のがれきの量は、黒く塗りつぶされていた」と憤った。
この会見に同席した青木泰氏は、「私自身、(別件で行政に対し)情報開示請求を何度も行っているが、市町村名や数値が黒塗りされたものを見るのは初めて。ここまで隠すぐらいなら、いっそ、こんな文書は存在しない、という対応をするほうが自然ではないか、と思うほどだ」と話した。
また、松下氏は「届いた資料の中、岩手県が黒塗りし忘れた部分を基に、隠されている数値を明らかにした」と語り、時期や数値について説明した。これを聞いた青木氏は、「環境省が公式に発表した数値と、だいぶ差がある。広域処理の必要性は、やはり疑わしい」と話し、「市民により、ここまで疑問が提示された以上、大阪府と大阪市は、この問題から逃げないでほしい。すぐに岩手県に問い合わせて、確たるデータの開示を要求すべきだ」と強調した。