大阪府堺市が、がれき受け入れを「表明すらしていない」のに、環境省と大阪府が一方的に復興予算(がれきの広域化の補助金)86億円を支給した疑い、いわゆる「手をあげていないのに交付金」問題について、環境省と大阪府による復興予算の意図的な流用の疑いが出ている。6月11日、みどりの風・平山誠議員が、参議院の環境委員会で、石原伸晃環境大臣にこの件について質問した。その後、環境ジャーナリストの青木泰氏ら調査チームとともに、会計検査院に調査を要請。午後2時15分より、参議院議員会館で緊急記者会見を行った。
(IWJ・佐々木隼也)
大阪府堺市が、がれき受け入れを「表明すらしていない」のに、環境省と大阪府が一方的に復興予算(がれきの広域化の補助金)86億円を支給した疑い、いわゆる「手をあげていないのに交付金」問題について、環境省と大阪府による復興予算の意図的な流用の疑いが出ている。6月11日、みどりの風・平山誠議員が、参議院の環境委員会で、石原伸晃環境大臣にこの件について質問した。その後、環境ジャーナリストの青木泰氏ら調査チームとともに、会計検査院に調査を要請。午後2時15分より、参議院議員会館で緊急記者会見を行った。
■ハイライト
堺市ががれきを処理しないにも関わらず、復興予算を受け取ることについて、今年3月から大手メディアを中心に「堺市に批判400件 がれき未処理で86億円」(毎日新聞)などと批判的な報道が相次ぎ、風当たりが強まっている。しかし、今回有志の調査チームが、堺市と環境省とのメールのやり取りを、情報開示請求で明らかにしたところ、実態は全く別の様相を呈していた。
■開示された堺市と環境省のメールのやり取り
開示されたメールのやり取りによると、堺市はもともと新規のごみ処理施設の建設事業について、従来の交付金(循環型社会形成推進交付金の通常枠)(※)での交付金申請を行なっていた。しかし、2012年2月から環境省は堺市に対して再三にわたり、(がれき受け入れを念頭においた)、いわゆる「復興予算」(復旧・復興枠)に切り替えるよう要請している。これに対し。がれき受け入れをするつもりのない堺市は、何度も「従来の交付金でお願いします」と回答している。
(※)「循環型社会形成推進交付金」は、ごみ処理施設の建設の際に、市長村から申請があれば事業費の1/2から1/3が国から交付される仕組み。一般的な交付金で5~6年前から運用されている。
しかし2012年4月6日、突然、環境省から「復興予算」の内示がされている。この決定に対して堺市は5月に「震災復興財源を適用しないよう貴省にお願いしてあります」と要請を行うものの、環境省はそれを認めず。堺市の「東日本大震災復興事業枠から(従来の交付金へ)の変更は出来ないのか」という質問に対し、「不可能である」と回答している。さらに堺市に対して「交付申請するのに、(がれきの)受け入れ表明はしなくて良い」とまで言っているのだ。
この開示された資料に基づき、みどりの風・平山誠参議院議員が6月11日、石原伸晃環境大臣に国会で質問した。「手もあげていない、表明もしていない堺市に、なぜ86億円という巨額の復興予算が交付されたのか?」という平山議員の問いに、石原大臣は「その問題はマスコミから聞いて知っている。前政権の時に、がれき受け入れを表明したら(交付金を)支払うと言っていたので、今回、がれきが処理できなくても、交付したのは当たり前のこと。堺市についても、申し込みはなくても、当時がれき処理をしてくれると言ったのだから、今回支払っても悪くはないでしょう」などと答弁したという。
これに対し平山議員は、「前政権でも今政権でも、環境省は存在し、交付金を管理する部も課もあるわけだから、現大臣が調査するべきなのではないか?」と問うも、石原大臣から「すぐ調査します」という回答はなかったという。
6月11日の参議院 環境委員会での平山議員と石原環境相の主なやり取り
平山氏「このほとんどがゴミ焼却施設の建設費。これは国民が25年間必死になって納めていくお金。それを、ただ知っていますというだけでいいのか? 堺市に関しては金額が大きいので調べてみた。堺市は当初、清掃工場の建設改修事業の交付金を循環型社会形成推進交付金の通常枠で申請していた。それに対し環境相は大阪府を通じて、通常枠から復興復旧枠に移行するようにH24年の1月から2月にかけ、3回に渡って文書で要請している。このことは御存知ですか?」
石原氏「承知している」
平山氏「これは問題じゃないですか? 手を上げたわけでもないのに、環境省の方から復興費を使ってくれと。おかしくないですか? 堺市が災害物受け入れの書類が必要なのでは?と問い合わせたところ、環境相は今回は必要ないと回答している。もし、受け入れない場合には国への報告は必要なのでは?という質問に対しては、現在は求めていないとの回答。これは振り込め詐欺ならぬ“振り込む詐欺”ともいえるような状況。犯罪ではないのか?」
石原氏「前政権をかばうわけではないが、広域処理をしたいがなかなか参加してくれる団体がいないということで、このような判断したのではないかと推察する。我々は仮に今後、このようなことが起これば、このようなことはないよいうにする」
平山氏「前政権といっているがH25年になってからも、同様のやりとりがある」
石原氏「H25年度の話をされたが、それはH24年度のリメイクをしたに過ぎず、前政権が約束したことを、政権交代になって返済しろと言えば、行政訴訟もおこるのではないかと思う」
平山氏「なんども言うが、堺市の場合は手を上げていない。どこのだれが政権をとっていても、環境相がやっていること。今大臣なのだから、過去を調べる必要がある」
石原氏「受け入れの見通しを立てて交付するというのが当たり前。当時、震災が起こったすぐ後の混乱状態の中で、誰もやらないなかで起こった事例。このケースは市の中で問題を巡って、賛成派と反対派が様々な政治闘争を繰り広げているということも報道で拝見したことがある」
平山氏「このことは大臣が報道で知るべきことではない。ちゃんと下から報告を受け、調査すべきもの」
平山議員は最後に、巨額の交付金を支払った事実はあるわけなので、それをきっちり調査して、参議院の環境委員会の場でその結果を発表するよう要請し、質問を終えた。その後、この復興予算流用問題について、会計検査院に対し、調査を要請した。
その後に行われた緊急記者会見で平山議員は、「国会議員としては調べていかなくてはならない、国としても調べるよう要請していかなければならない」と語った。
また、平山議員と共に会計検査院に対して調査要請を行った、環境ジャーナリストの青木泰氏は「堺市への交付金支給は平成25年、石原大臣下であり、現政権で支払われているもの。支給の際に、『補助金適正化法』に基いて、しっかり精査した上で支払っているはずなので、前政権の責任にするのは問題がある」と指摘した。
さらに青木氏は、この堺市と環境省とのメールのやり取りが、すべて大阪府を通して行われていることに着目。「通常、自治体が交付申請していないものを、国が勝手に手続きを進めることはありえない。しかし、今回はありえないことが起こった」と語り、「これは疑いの段階だが、大阪府が堺市にかわって『架空申請』したり、環境省が申請を偽造するなどの『虚偽文書の記載』などがあったのではないか」と分析した。
今回調査チームは環境省に対しても、堺市とのメールのやり取りについて情報開示請求を行った。しかし、環境省は「やり取りは担当者のPCに保存されており、その担当者が配置転換してしまったため、開示できない」と回答したという。