阪南大学 下地真樹先生・環境ジャーナリスト 青木泰氏による瓦礫広域処理問題学習会 2013.2.25

記事公開日:2013.2.25取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/奥松)

 2013年2月25日(月)18時より、岩手県盛岡市のいわて県民情報交流センター、アイーナで、「阪南大学 下地真樹先生・環境ジャーナリスト 青木泰氏による瓦礫広域処理問題学習会」が行われた。青木氏は、環境省が行ってきた瓦礫の広域処理について、その経緯や真相、住民監査請求について報告した。下地氏は「岩手も放射能に汚染されている。損害賠償や補償を請求するべきだ」と話し、大阪での住民監査請求について、具体的な方法などを説明した。

※電波不良のため、一部見づらい場面がございます。何卒ご了承ください。

■全編動画

  • ゲスト
    青木泰氏(環境ジャーナリスト)、下地真樹氏(阪南大学経済学部准教授)
  • 日時 2013年2月25日(月)18:00~
  • 場所 いわて県民情報交流センター(岩手県盛岡市)

 青木氏は「瓦礫の全国広域化とは何だったのか。被災3県(福島、宮城、岩手)から2250万トンの震災瓦礫が発生し、その2割の400万トンを、全国の市町村の焼却施設で処分するというのが、最初のストーリーだった。ちなみに、阪神淡路大震災では、2000万トンの瓦礫が発生したが、地元で2年間で処理をしている」と話した。続けて、「今回、宮城と岩手の瓦礫が全国広域化の対象になった。福島の瓦礫は放射能汚染が懸念されて、広域処理から除外された。しかし、2013年1月、宮城県が、今年の3月で瓦礫処理は収束する、と発表した。当初は16都府県に瓦礫を持っていく予定だったが、実際に運び入れたのは、東京、北九州、茨城だけ。岩手県の瓦礫については、昨年12月に埼玉県が収束を発表。静岡県も収束した」と説明した。

 青木氏は「焼却場では、放射性物質は取り扱えない規則になっている。しかし環境省は、汚染地域でも燃やされているからいいだろう、焼却炉にはバグフィルターがついているから安全だ、と言う。だが、瓦礫の中には、アスベスト汚染の可能性があるものもあった」と話した。さらに、「福島原発の発災時、放射能汚染水が海洋投棄された。国際法では、船や航空機からの有害物、汚染物質などの海洋投棄は罰則規定に当てはまるが、陸上からの廃棄は規定外だ、と政府は言う。国内法で規制されていることだから、汚染水も国内法で取り締まれると思ったら、放射性汚染物は、すべての法規から外されていた」と語った。

 「政府は、有識者会議の、災害廃棄物安全評価検討委員会を設立したが、会議は非公開で、5回目以降は議事録も残さなくなった。原子力安全委員会の6月3日の通達で、不燃物の汚染安全基準を、100ベクレル/キロ以下から8000ベクレル/キロに引き上げた。放射性廃棄物は焼却禁止だったのに、バグフィルターを付ければ燃やしていいことになった。これら一連の行いは、官僚たちの国家乗っ取りに近い。彼らは、なぜ、そんなことをする必要があるのか、というと、政府は第1次、第3次補正予算にて、瓦礫処理予算1兆円を計上した。しかし、宮城県は、すでに建設ゼネコンに瓦礫処分を業務委託していた。広域処理に出す瓦礫がないにもかかわらず、予算を計上していたのだ。われわれは、それに対して、監査請求、記者会見、訴訟などを行ってきたので、今は収束に向かっている。宮城県は、建設会社への業務委託と広域処理分がだぶって、二重発注になっている。前代未聞のスキャンダルだ」と憤った。

 続いて、下地氏が「最初は、瓦礫処理に危険は感じていなかった。しかし、住民の懸念を聞いたり、大阪府などの検討会議を通して、一気に不安が高まった。地方自治体の回答は、環境省の数字を丸飲みだ。自分たちは、震災瓦礫問題と内部被曝問題を合わせてリスクを訴える」と、話した。その上で、「岩手もかなり汚染された。1平方メートルあたり3000ベクレルの数値が発表されている。(岩手の人たちにも)被曝の補償を求め、国や東電の責任を問う権利は十分ある。たとえば、汚染された薪を燃やすことを、止めなければならない。これだけでも、たいへんな損害になる」と聴衆に語りかけた。

 そして、「薄めた基準を周知させていく環境省は、われわれに放射能との共存と、がまんを強要しているに近い。『なぜ、こんなことを受け入れなければならないのか』と、エゴイストになることを避けてはいけない」と話し、理不尽なことに対しては声を上げていくべき、とした。

 次に、下地氏は、住民監査請求について説明した。「住民監査とは、行政による不適切な公金支出を、住民がチェックする権利である。今回は、瓦礫処理を停止させる手段として使った。環境省は、瓦礫18万トン分の輸送費の予算を決めた。瓦礫を受け入れる大阪市が、運送費を業者に立て替えて払う。大阪市は、その金額を岩手県に請求する。岩手県は、それを国に請求する、という流れだ。この予算管理には、瓦礫の総量と内訳を適切に推定していることが前提。しかし、環境省の算定がずさんなので、広域処理が実際に必要かどうか、はっきりしない。それが確認できていないとすると、公金支出は不適切である、ということになる。環境省の発表した数値から見ても、広域処理の必要性は、とても怪しい」と話した。

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