2013年3月27日(水)19時から、大阪市中央区のエル・おおさかで「講演会『岩手県の状況から見た大阪のガレキ受け入れ問題』と『(再)住民監査請求について』」が行われた。がれき広域処理の概略、自治体のがれき処理の手続きの仕組み、住民監査請求の主旨、大阪府・市への監査請求の内容、岩手県のがれきを受け入れる大阪、富山、秋田県の実状などを、青木泰氏がレクチャーした。また、大阪府・市に対する「震災がれきの広域処理に関する違法な公金支出の差し止めを求める監査請求」が却下されたことについて、下地真樹氏が説明し、再度の住民監査請求を呼びかけた。
- 講師 青木泰氏(環境ジャーナリスト)、下地真樹氏(住民監査請求原告代表・阪南大学準教授)
- 日時 2013年3月27日(水)19:00~
- 場所 エル・おおさか(大阪府大阪市)
- 詳細
まず青木氏が登壇し、がれき広域処理の受け入れに対する住民監査請求について、「埼玉県の、岩手県野田村のがれき処理は中止になった。静岡では、静岡新聞1月22日に、平成24年度末でがれき処理収束とスクープも出た。岩手県発のがれきは、大阪、富山、秋田でも問題になっていて、住民監査請求を提出している。自分たちは、大阪のがれき広域処理のため、岩手県宮古市藤原ふ頭に調査に行き、木くずを取り出す処理作業を見せてもらった。その際、6名の視察に対して、6名の随行者が立ち会ったが、がれきに関していろいろと質問しても、答えは『環境省に聞いてくれ』というもので、呆れた」。
青木氏は続けて「埼玉県は去年の9月に、岩手県野田村のがれきを、2年で2万トン受け入れると発表した。しかし、12月25日には中止になった。なぜなら1000トンしかがれきがなかったからだ。その理由を尋ねると、『容積からの計算を間違えた。木くずの混入量が2.5%だった』という回答だった。調査をしたのは、資本金161億円の応用地質という地質調査会社だが、プロとしてあり得ない間違いだ。だから、埼玉県がその調査に支払った税金を返せ、というのが監査請求をする理由だ。岩手県には、情報開示請求で、応用地質との業務委託契約書の開示を申し立てたが、開示しようとしない。明らかに情報開示条例違反だ」と語った。
次に青木氏は、各自治体の監査請求への対応などについて、「富山県では、森雅志富山市長が、試験焼却のがれき搬入を阻止した住民を告訴した。それに対し住民側は、がれき広域化に正当性があるのか、と3月4日に、富山県、市に対して住民監査請求を行った。すると地元紙が大きく報道した。それに議会も影響を受け、対応が変わり、富山県議・市議団代表5名が、岩手県の達増拓也知事にがれき問題を確かめにいった。秋田県に対しても住民監査請求が行われた。秋田県の大仙市、秋田市、横手市では、がれき焼却をすでに実施しているにもかかわらず、秋田県は『平成25年度の契約については調整中』と回答した。翌々日から新年度なのに、がれきの数量も把握していなかった」と説明した。
続けて、「高岡市が、がれき広域処理を受け入れている理由は、補助金が出るからだ。大阪府も、堺市に補助金を受けて焼却場を作る。補助金を利用する自治体は、東京の三多摩地区も同様だ。また、1月には、大阪府に対して1200名が、大阪市に対して約400名が、監査請求を提出した。しかし、50日間も待たせた挙げ句、『がれき広域化の問題は、大阪府、大阪市の問題ではないので、検討する必要はない』との回答があった」と述べた。
また、「住民監査請求は、住民以外の人間や、政策や安全性の不備などに対しては適用外。行政の財務・業務契約関連しか申し立てができない制度である。また法律上、行政は、監査請求に不備があったら補正した上で再提出、もしくは適正な監査請求をして却下された場合の再提出も保証され、自治体は、それを受け付けなければいけない、と決まっている」と、監査請求の制度の説明をした。
次に「本来は、廃棄物処理法により、市町村から出た一般廃棄物は、当該自治体が、必ず分別処理をしなければならないことになっている。しかし、今回、問題になっているがれき広域化とは、被災自治体内で処理が追いつかない、木くずなどの可燃物がれきのみを、他県に回すという主旨で、環境省が中心になって進めてきた特措法であり、分別をした後、受け入れ側の自治体と焼却の契約をし、運送、焼却、環境保全などにかかった費用を、あとから国に補填してもらう仕組みである」とがれき広域化の大きな流れを説明した。また、調査・測定会社の発表した数値のいい加減さ、今後の活動方針や希望などを語り、講演を終えた。
最後に、下地氏が「監査請求でがれき焼却が止まるのか、という疑問があるようだが、訴えることで、今回の監査委員のでたらめぶりや不当性を公にすることは可能だ。また自分は、監査請求の効力は発揮できると期待する。今回、監査請求を却下した大阪の監査委員は、監査制度を使わせないためのゲートキーパーになっている。これは自らを否定した、業務放棄である。彼らは責任を問われるべきだ。マスコミも被災地予算の使い道に対する疑念を報道し始めている。ゆえにこれからも、住民の抗議の強力な手段として、監査請求は行っていきたい」などと述べ、集会は終了した。