2012年3月27日(火)、参議院議員会館で、「大飯原発3・4号機の再稼働を止めよう!3・27政府交渉」が行われた。
美浜の会やフクロウの会、FoE Japan、グリーン・アクションらは、今回のような原発再稼働問題のほか、年間被曝量20ミリシーベルト問題などでも、過去に幾度となく対政府交渉を重ねてきた。また、社民党の福島みずほ党首も、そういった交渉には常に顔を出している。これらメンバーたちが、今回の対政府交渉においても、政府役人から重要な発言を引き出した。一番の焦点となったのは、制御棒の挿入時間が「2.16秒」から「1.88秒」へ切り下げられたことだ。
- 政府側出席者
資源エネルギー庁 原子力立地・核燃料サイクル産業課係長
原子力安全・保安院 耐震安全審査室、上席安全審査官 御田俊一郎
原子力安全・保安院 原子力安全技術基盤課 企画班長 田口達也
原子力安全委員会 管理環境課 課長補佐 栗原潔
原子力安全委員会 審査指針課 安全調査官 柏村博之
原子力安全委員会 規制調査課 規制調査官 猪俣勝己
- 交渉団体
美浜・高浜・大飯原発に反対する大阪の会(美浜の会)
福島老朽原発を考える会(フクロウの会)
国際環境NGO FoE Japan(地球の友ジャパン)
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
グリーン・アクション
制御棒とは、原子炉の出力をコントロールする棒状の物体で、核反応の速度を遅くしたり、速くしたりするものだ。地震が起きた際などの緊急時に全挿入することで、核反応分裂を0にすることができる。
若狭湾にある2つの断層の連動による揺れの試算は700ガル*で、大飯原発3・4号機の場合、制御棒挿入値は2.16秒。これは2010年に数回の審議を経て、原子力安全・保安院と原子力安全委員会が確認した数値だ。しかし、原子力安全委員会による「ストレステストの検討会」(2012年3月13日実施)で配布された資料には、数字が「1.88秒」に切り下がっていた。このことを市民側が質問すると、保安院の田口氏は「審査過程で関西電力から新しい数値が示されたので、参考資料としてそれを掲載した」と答えた。
ガルは、加速度の単位で、1ガルは、1秒に1センチメートル毎秒(cm/s)の加速度の大きさと定義されている。
関西電力は、2つの断層の連動を考慮した揺れや津波で、ストレステストの一次評価を実施している。しかし、最近の専門家会議で「熊川断層」という第3の断層も考慮すべきだとの指摘を受け、3連動の試算を評価した結果、地震の揺れの大きさがそれまでの700ガルから760ガルに増した。揺れが大きくなれば、地震による遅れが生じ、制御棒の挿入時間もそれに比例する。760ガルの場合、今までの2.16秒では許容値を超えてしまい、原発の運転ができなくなる。市民側は「それを避けるために意図的に数値を変更したのではないか」と疑い、数値の削除と釈明を求めた。これに対し、保安院は「検討する」と述べ、回答を待つこととなった。
そのほかに、原発再稼働に関して、「地元の定義はどこなのか」という質問が続いたが、資源エネルギー庁の担当者は、「政治判断」という言葉を繰り返すばかりだった。原子力安全委員会についても同様で、ストレステスト評価については、「保安院のプロセスを確認したのみ。1次と2次を合わせなければ、総合的な安全評価は出せない」と説明したが、再稼働についてはあくまでも政治判断だと述べた。こうした市民らによる重要な追求が続き、原発再稼働反対のデモも連日行われている中、近く野田首相、枝野経産大臣ら4閣僚による会合が開かれ、再稼働に対する政治判断が下される予定だ。