【IWJジャーナル号外】ウクライナ紛争初期の最大のミステリー「ブチャ事件」の真相(その1)ロシアの国際市民団体が、「ブチャの犠牲者」の中に多くの戦闘員が含まれていると指摘! 2026.10.11

記事公開日:2026.10.11 テキスト
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(文:IWJ編集部)

 IWJ代表の岩上安身です。

 ロシアの国際市民団体「ウクライナのネオナチによる犯罪についての国際市民法廷」が9月17日、「ゲッぺルスの後継者達:ブチャでの出来事の捏造と、キエフ政権による血まみれの演出劇」という報告書を公開しました。

 報告書の英語版PDF(21全ページ)は、ロシア外務省のサイトよりダウンロード可能です。「ウクライナのネオナチによる犯罪についての国際市民法廷」は市民団体の扱いですが、ロシア外務省もその報告書を公式に支持していると推察されます。

 同報告書は、ウクライナのキエフ州ブチャ市に建設された犠牲者の追悼碑に刻まれた人々の氏名を検証し、民間人だけではなく多くの戦闘員が含まれていることを指摘しています。

 同報告書の趣旨は、ロシア軍が2022年の2月末から3月にかけてブチャを占拠していた期間に、多くの民間人を即決処刑・殺害し、遺体を遺棄したとされる「ブチャの虐殺」事件に対して、真相を究明するものです。

※Report «Heirs of Goebbels: Falsification of the Events in Bucha and Bloody Staged Performances of the Kiev Regime»(MFA Russia、2026年9月17日)
https://mid.ru/en/foreign_policy/reports/2142212/

 ウクライナ紛争はすでに4年半を超えて継続し、エスカレーションし続けています。「ブチャの虐殺」は、ロシアを「廃墟化」し、ウクライナ紛争の長期化を決定づけた事件でもありました。

 2022年当時を振り返ります。

 2022年2月24日、ロシア軍が電撃的にウクライナに侵攻しました。

 2月28日、ベラルーシ国内で、ロシアとウクライナの第1回和平交渉が開かれました。当時のロシアとウクライナは、ウクライナ紛争を早期に終結する方向性であったと思われます。

 3月2日、国連総会で、ウクライナに侵攻したロシアを非難し、ロシア軍の即時かつ無条件の撤退を求める決議が、141ヶ国の賛成(反対5、棄権35)を得て、採択されました。

※General Assembly Overwhelmingly Adopts Resolution Demanding Russian Federation Immediately End Illegal Use of Force in Ukraine, Withdraw All Troops(United Nations, 2022年3月2日)
https://press.un.org/en/2022/ga12407.doc.htm

 翌日3月3日と3月7日には、ベラルーシ国内で、ロシアとウクライナの第2回、第3回の和平交渉が開かれました。

 3月10日には、ロシアとウクライナ外相会談(第4回)が、仲介国トルコのアンタルヤで開催され、続いて3月14日から16日にかけて、オンラインで継続されました。3月21日にも、ビデオ会議で行われた第5回交渉が行われました。

 3月29日には、トルコのイスタンブールで、再び対面の交渉が行われ、「ウクライナの安全保障に関する条約の主要条項(イスタンブール共同声明)」の草案が作成されました。

 同草案は、ウクライナが安全保障の保証と引き換えに、恒久的な中立地位を守ることを認める内容でしたが、領土問題など意見の相違を残し、プーチン大統領とゼレンスキー大統領の首脳会談に持ち越されました。

※Ukraine offers neutrality in exchange for NATO-style security guarantees at Russia talks(Reuters, 2022年3月29日)
https://www.reuters.com/world/europe/ukraine-offers-neutrality-exchange-nato-style-security-guarantees-russia-talks-2022-03-29/

 ロシアとウクライナの和平交渉が最終盤に差しかかっていた4月2日、「ブチャの虐殺」が発覚しました。

 『AFP』の取材チームは、4月2日にブチャ市に入り、ひとつの道路(ヤブルンスカ通り)で、路上に遺棄されていた「少なくとも20人の遺体を確認」したと報じました。

 ブチャ市のアナトリー・フェドルク市長は『AFP』の電話取材に対し、街中には遺体が散乱しており、これまでに280人が集団墓地に埋葬されたと説明しました。

 フェドルク市長は「全員が後頭部を撃たれ殺されていた」、犠牲者には男性や女性、14歳の少年も含まれていたと語ったと、『AFP』は報じています。

※ウクライナ「キエフ州全域を解放」 280人の遺体埋葬(AFPBB、2026年4月3日)
https://www.afpbb.com/articles/-/3398497

 『AFP』は、4月2日にブチャでの大量殺戮に関するニュースを世界で最初に報じたのは、自社であったとのプレス・リリースを出しています。

※KRAMATORSK, BUCHA: AFP SETS THE AGENDA ON BREAKING NEWS IN UKRAINE(AFP、)
https://www.afp.com/sites/default/files/afpcommunique/202204/pdf/prafpukrainecoveren.pdf

 ブチャ市において、ロシア軍が数多くの民間人を虐殺した、との報道は、全世界に瞬く間に広がりました。この事件とその報道によって、早期の和平は急速にしぼんでいきました。

 ロシアは4月3日、「ブチャの虐殺」は、「ウクライナ側による捏造」だと主張し、国連安全保障理事会の開催を要請しました。

 同時に、ロシア国防省は、一連の和平交渉の進展を受けて、ロシア軍部隊が3月30日にブチャ市から完全撤退した、と発表しました。

 「我々は特に、ロシアとウクライナがトルコで対面での交渉を行った翌日の3月30日に、すべてのロシア軍部隊がブチャから撤退したことを強調したい」

※(Interfax, 2022年4月3日)
https://m.interfax.ru/832891

 ロシアは「ブチャの虐殺」を単独の議題として4月4日に扱うことを求めましたが、安全保障理事会の議長国であった英国は、4月5日のウクライナ情勢に関する会合とあわせて扱うことを決めました。

 4月5日の安全保障理事会では、ゼレンスキー大統領がオンラインで演説しました。国連の報告書には、ゼレンスキー大統領の演説が記録されています。

 「ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はビデオ会議を通じて、第二次世界大戦以来最悪の戦争犯罪が自国で行われていると述べた。

 (ゼレンスキー大統領は)ロシア軍の行為をIS(イスラム国)の行為になぞらえ、ロシア軍はウクライナの都市を意図的に破壊し、大規模な飢餓を引き起こし、敵対行為から逃れようとする民間人の列を射殺し、避難所を爆破し、一時的に占領した地域で民間人の大多数が殺害されるような状況を作り出している、と述べた。(中略)

 (ゼレンスキー大統領は)安保理は、ロシア連邦を侵略者であり、戦争の元凶として機関から除名し、ロシアが自らの戦争に関する決定を阻止できないようにするか、あるいは対話以外に何もできないのであれば『安保理自体を解散する』かのどちらかしかないと述べた。

 『ウクライナには平和が必要だ。ヨーロッパには平和が必要だ。世界には平和が必要だ』と彼は主張した」。

※Describing Relentless Russian Attacks against His Country, Ukraine President Challenges Security Council to Act for Peace or Disband United Nations(United Nations, 2022年4月5日)
https://press.un.org/en/2022/sc14854.doc.htm

 安保理の2日後となる4月7日、国連総会の緊急特別会合で、ロシアの人権理事会における加盟資格を停止する決議が、賛成93、反対24、棄権58で採択されました。

※General Assembly Adopts Text to Suspend Russian Federation from Human Rights Council, Continuing Emergency Special Session on Humanitarian Crisis in Ukraine(United Nations, 2022年4月7日)
https://press.un.org/en/2022/ga12414.doc.htm

 4月9日、和平つぶしのキーパーソンである英国のボリス・ジョンソン首相(当時)がキエフを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談しました。

(…会員ページにつづく)

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